March 22, 2008

ゴマダラチョウの活動再開

Goma032108昨日、仕事を終えて帰ろうとして、大急ぎで出口のドアを開けようとした途端、灰色のドアに薄汚れたゴミが目に飛び込んできた。来客や職員が頻繁に開閉するドアなので、ティッシュペーパーでゴミを拭き取ろうと思った。ところが、そのゴミは動き出したのだ。「あれ?」と思ってよく見ると、それはなんとゴマダラチョウの幼虫ではないか!昨日は殺人的忙しさで、疲弊しきっていたが、ゴマダラチョウの幼虫と気付いた瞬間、疲れは吹っ飛んで、すっかり浮かれた気分になった。数日前には、職場のロッカー室のブラインドにボロボロの越冬ルリタテハが止まっているのを見つけたり、中庭のアラカシにウラギンシジミが止まっているのを見つけた。虫をやっていて本当によかったと思う瞬間である。

ティッシュペーパーでそっと包んだゴマダラチョウは体長20mmほどの灰褐色の幼虫態だが、よく動くところを見ると、既に休眠から覚醒しているようだ。一体何処で越冬していたのかはわからない。少なくとも側にはエノキはない。かなり離れた処に何本かエノキがあるが、まだ芽吹き始めたばかりである。とりあえず、自宅へ持ち帰り、エノキの小枝を入れたケースの中で飼育することに。幼虫はエノキの枝には寄らず、ケースの縁に掴って静止したままである。新芽を摂食している形跡は今のところ無い。いつから摂食を開始するのだろう?楽しみだ。

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December 16, 2007

クロスジフユエダシャクの交尾

121507_2昨日の昼頃、いつものフィールドへ虫散歩に出かけた。土曜日の午後ということもあって、自然観察を楽しむ人達でいっぱいだと思っていた。ところが、現地に着くと人の姿はごく僅か。寒い上に小雨がぱらつき始めたためらしい。こんな日はフユシャクの活動も不活発。薄暗いこともあって樹皮に張り付く♀の姿を見つけるのは至難の業である。まあ、必死に探しても、そう簡単には見つかるまい。いつもなら樹幹に目を寄せて樹皮の窪みという窪みを辿るのだが、悪天候の日は少し離れたところから樹木やその周辺全体を見ることにした。数少ないながら、枯葉の上をクロスジフユエダシャクの♂が飛ぶ姿を認める。きっと、これらの♂は土中から羽化したばかりの♀を待ち受けているのだろう。

121507121507aその後、クロスジフユエダシャク♂成虫が低空飛行する姿は見られたが、♀の姿はさっぱり見つからない。無論、時期的には♀は出現しているはず。樹幹のどこかにいると思われるが、巧みに隠れているせいか探し出せない。♀の翅は退化していて飛翔できない。しかし、飛翔できない分、脚が発達。動きは極めてすばやい。接近する人の気配をいち早く察知して身を隠してしまうのだろう。

悪天候を口実に早めに引き上げることに。「今日は坊主かな」と思いながら帰る途中、とあるコナラの樹に目が行く。樹幹の下方に何か引っかかっている。どうせ枯葉なのだろうが、念のために確認したところ、それはクロスジフユエダシャクの♂。枯葉の間に潜んでいる方がずっと安全なはずの♂がわざわざ目立つ樹幹に静止する。と、いうことは・・・ じっと目を凝らすと、♂の翅の下方から♀の前翅が僅かに見えるではないか。またもや交尾中のクロスジフユエダシャクだ。一旦あきらめていただけに喜びも大きい。

写真:交尾中のPachyerannis obliquaria (Motschulsky, 1861) クロスジフユエダシャク 2007年12月15日 名古屋市守山区で撮影

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December 12, 2007

クロスジフユエダシャク隠れ術

AA2そろそろクロスジフユエダシャクの出現期ではないかと思い、先日いつものフィールドである名古屋市北部の雑木林を訪れた。ちょうど昼頃で晴天。午前11時頃から午後1時頃はクロスジフユエダシャクの飛翔帯である。現地へ着くと、♂成虫が枯葉の上を乱舞している。一歩枯葉に踏み入れると足元から飛び立ち、少し離れた枯葉の上に止まる。近づくと、枯葉の裏にそっと隠れる。隠れ方はかなり芸術的。触角は見えるが、体は枯葉の裏に潜めているので撮影しにくい。クロスジフユエダシャクの♂の変幻自在な葉隠れの術に騙されるのは愉しい。そして、偶然ではあるが、それを見破るのはもっと愉しい。
写真:クロスジフユエダシャク Pachyerannis obliquaria (Motschulsky, 1861). ♂ 2007年12月10日 名古屋市守山区で撮影

Dこれだけの数の♂成虫が飛翔しているのだから、♀成虫も数少ないとはいえ、既に出現しているはずである。ぜひとも♀成虫を見つけたいと思い、食樹とされるコナラ、アベマキ、カシワ、クリの樹幹を探すが、なかなか見つからない。あきらめかけた頃、とあるコナラの樹幹の下の方で♂成虫を見つける。これまで、枯葉の表裏では多く見かけた♂であるが、樹幹で見るのは珍しい。デジカメで2-3回撮影するうちに、止まり方が何やらおかしいことに気付く。人が接近する気配に微動だりともしない。前翅の片側がまるで羽化不全個体でもあるかのようにへこんでいる。どうも変だと思い、目を寄せると、♂の翅の下には♀成虫が・・・・交尾中だったのだ。あわてて♂に合わせていたピントを♀に。興奮で震ながらシャッターを押すが、手振れしてうまく撮れない。♂がうまく撮れると、♀がボケ。♀がばっちりだと♂がピンボケ。そのうちに、♀が♂から離れ、ものすごい勢いで樹を登り始める。♀は翅が退化して飛翔できない代わりに、肢が発達していて動きが素早い。また、触れるとピョンと飛び跳ねる能力も極めて高い。人の気配を感知すると、樹皮裏や窪みに素早く隠れるので見つけにくい。人の目につくときは、よほど個体数が多い時か、寒くて身動きが取れない時なのだろう。
写真:交尾中のクロスジフユエダシャク 2007年12月10日 名古屋市守山区で撮影

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December 10, 2007

昼神温泉で見た冬の蛾

Photo_2先日、ぶらっと家族で昼神温泉へ。天気予報では、この日は曇りのち雨ということだったが、朝から雨。今回の旅はゆっくり湯に浸かり骨休めをすることだったので、遅めに出発。昼神温泉には午後2時過ぎに到着。温泉の入口の神社脇で藁で編んだ素敵な「湯屋守様」が出迎えてくれた。昼神温泉はすっかり冬支度である。後で知ったことだが、どの旅館の玄関にもこの湯屋守様が飾られていた。私達は先ず十字屋コーヒー店へ。店へ入ろうとすると、目の前のサクラの樹幹に何か止まっている。晩秋の蛾として知られるナカオビアキナミシャクだ。小雨の中、デジカメを操作するが、水に濡れてうまく作動しない。あきらめてひとまず店内へ。
写真:湯屋守様  2007年12月3日  長野県阿智村で撮影

店は空いていて、窓際の席に座ることができる。ここのオーナーは野鳥好きなのだろうか。周りの樹木に餌台が置いてあるので、野鳥が頻繁に訪れる。温泉で点てたという「いで湯コーヒー」を飲みながら、愛らしい野鳥の姿を追ううちに雨が上がってきた。タオルに包んであった濡れデジカメも乾いてきて、やっとシャッターチャンス。周囲も少し明るくなり、なんとかナカオビアキナミシャクの姿をカメラに収めることに成功。やれやれ。

Photoころで本種はいわゆる「フユシャクガ」のグループには属さない。フユシャクガの定義について、中島(1998)は、次の4点を挙げている。1)年1回発生で成虫は晩秋から早春に出現する。2)冬期に生殖行動を行い産卵する。3)雌の翅は欠けるか縮小して飛翔できない。4)口吻は短縮して、食餌しない場合が多い。ナカオビアキナミシャクは1)と2)は満たしているが、3)、4)が当てはまらないので、チャエダシャクと同様にフユシャクガのグループからは外されている。食草はリョウブで、名古屋市やその周辺地域でも普通に見られる。今年は暖冬のせいか、南アルプスの冠雪も僅か。蛾の方もナカオビアキナミシャクが圧倒的に多く、本来のフユシャクガで採集できたのはシロオビフユシャク1頭だけ。昼神温泉はこのほど新しい源泉を掘り上げたせいか、湯量も豊富で湯温も高くて楽しかった。定例の朝市では味噌、漬物、りんご、ジャム、きのこ、米などを買った。品質が良く、また行きたいと思った。

写真:Nothoporinia mediolineata (Prout, 1914) ナカオビアキナミシャク成虫 2007年12月3日 長野県阿智村撮影

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November 10, 2007

晩秋のちょい散歩

PhotoPhoto_2久しぶりの休み。朝から曇ったり、降ったりの天気だったが、散歩もかねて近場の雑木林へ。歩き出して早々に、ふとサクラの樹幹に目をやると、樹皮の一部が色濃く浮き出ているではないか!「うっ、あれは?」と目を凝らすと、やはり蛾であった。晩秋に出現するオオトビモンシャチホコ Phalerodonta manleyi manleyi (Leech, [1889]) の成虫。灯火に飛来した本種を見ることはよくある。しかし、自然に樹幹に静止する個体を見かけるのは嬉しい。夢中になって写真撮影。

ところが何枚か撮影した後、蛾の尾端に何やら黒い塊が固着していることに気付いた。不審に思って目を近づける。それは、なんとヨコヅナサシガメの幼虫であった。ヨコヅナサシガメ幼虫は、オオトビモンシャチホコの成虫の腹部に吸汁管を差し入れているようだった。しかし、まだ吸汁寸前だったようで、採集したオオトビモンシャチホコの成虫個体は普通に動き、腹部にもへこみなどは見られなかった。オオトビモンシャチホコの成虫は樹皮そっくりの模様をしており、樹皮に静止すると、まさしく隠蔽擬態そのもの。樹皮状の模様は鳥の目を逃れるのに有効的とされる。しかし、隠蔽擬態を最も効果的たらしめる背景の樹幹も実は危険がいっぱい。越冬サシガメ類にとっては格好の好餌となる。自分の体の何倍も大きいオオトビモンシャチホコをたった一頭で襲うヨコヅナサシガメ幼虫。いつも樹皮の割れ目の間で集団越冬するヨコヅナサシガメ幼虫を見る度に、一体何を摂食して生育するのか疑問に思っていた。冬季にカマキリ類の卵鞘を捕食したり、フユシャクやミツバチなどの小型昆虫を捕獲して餌とすることを見てきたが、自分の体長よりずっと大型の昆虫も襲撃しようとする現場を見たのは今日が初めて。あれだけの大所帯をどうやって養っているのか、これまで不思議であった。「大物狩り」の現場に立ち会って、ようやく納得がいった。

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November 06, 2007

晩秋の幼虫

Photo虫の姿が少なくなる晩秋から厳冬期、なぜか私は俄然元気になる。大半の虫屋がフィールドから足が遠のく冬季、私にとってはようやく待ちに待った出番となる。本格的な冬シーズンに備えて、昨日は近場のフィールドを回ってみた。まず出会ったのは、リンゴケンモン Triaena intermedia (Warren, 1909) の幼虫。赤く色づきはじめたサクラの葉を盛んに摂食している最中だった。見事な毛並みである。モンシロドクガの幼虫に一見似ているが、リンゴケンモンの方が背上の刺毛が長くて縮れているので、区別できる。既に体長40mm近いので、終令であろう。ケンモンの仲間は蛹化の際には木片を噛んで繭を造営するので、シャーレにはサクラの葉と共に早々と樹皮が入れてある。

Photo_2次に出会ったのはオオキノメイガ Botyodes principalis Leech, 1889 の幼虫だった。幼虫はヤナギの葉を袋状に巻いた中に潜んでいた。ちょっと見にはヤガ風に見える。成虫はノメイガとしては大きいので、幼虫の方も体長35mmと大きめである。蛹化も食餌植物の葉を巻いたケースの中で粗繭を作って行なわれる。食餌植物がヤナギ科植物ということもあってか河川敷に多産。昨年は成虫、幼虫共に矢作川の河畔林調査での常連さんでもあった。

L後はヒサカキの葉の新しい食痕を頼りにホタルガ越冬幼虫(1令)を見つけた。今の時期、ホタルガの幼虫は葉上にいることが多い。ヒサカキやサカキの葉に見られる白い点々とした古い食痕に混じって、黄緑色の新しい食痕があれば、すぐ近くにホタルガ Pidorus atratus Butler, 1877 の若令幼虫がいることが多い。但し、若令幼虫はまるで褐色のゴミみたいで、大きさも数ミリなので、見過ごしてしまいがちである。冬季は食樹の下の方で風を避け、葉を重ね合わせて潜んでいることが多くて一層見つけにくい。越冬中は汚い古葉を巧みに重ねた間に潜んでいることも多い。晴天なら、太陽にかざすと見えやすい。写真は1令幼虫で4mmに満たない。


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November 03, 2007

神神温泉で見た蛾(後編)

10月27日午後、折りしも台風の影響で大雨であったが、再度昼神温泉を訪れた。雨天なら蛾も飛来するのではないかと期待したが、土砂降りで誘蛾灯にも蛾の姿は無かった。おまけに、雨は夜半には止み、夜空には星が輝き、月は澄みきった光を投げ、空気は乾燥して気温は低くなってしまった。蛾採集には最悪のパターン。あきらめて、夜は喜久水の生貯蔵酒を飲みながらの宴会三昧。深夜、露天風呂にも入ってみたが、蛾の姿は何処にも見られなかった。

Photo翌朝、宿の自販機へウーロン茶を買いに行ったところ、網戸に蛾が止まっている。腹側からしか見えないので、種名はわからないが、ヤガであることに間違い無いようだ。戸を開けようとしたが、鍵が閉まっていて開けられない。すぐに部屋へ戻り、採集用具を持つと、表へ出てぐるっと大回りをして、やっと蛾の止まっている戸にたどり着いた。網戸に止まっていたのは、新鮮なケンモンミドリキリガだった。特に珍しい種ではない。しかし、美しい蛾なので、思わぬ儲け物であった。

Photo_2宿を出た後、十字屋という昼神温泉界隈にしては美味しいコーヒーが飲める喫茶店で、ぼんやりと時間を過ごした。すぐ帰っても良かったのだが、あまりにも良い天気だったので、国道153号を少し南へドライブした。紅葉はまだ緑色にほんの少し黄色や赤色が混じる程度の色づき始め。しかし、それもなかなか風情があり、しっくりした景色だった。途中、冠雪した南アルプスの峰が見えるところがあったので、そこで止まって遠景を楽しんだ。快晴ということもあって、車やバイクの数が多く、道路は混雑していた。

Photo_3午前11時過ぎに、蕎麦でも食べようということで、昼神温泉で有名な蕎麦処へ寄ろうとしたら、2店とも駐車スペースが無いほどの賑わいだった。やむなく、もう一軒の人気店に寄ると、そこはまだ満車ではなかった。しかし、ほどなくお客が次々と来店して、待ち組が並び始めるほどの盛況となった。蕎麦を待つうちに、小座敷の壁に大き目のシャクガが止まっていることに気付いた。早速、ケースに収める。オオネグロウスベニナミシャク Photoscotosia lucicolens (Butler, 1878)だ。これも珍しい種ではないが、阿智村産標本は持っていないので有難く頂戴する。この後、近くの月川温泉に寄ってから早めに家路へ。

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November 02, 2007

昼神温泉で見た蛾 (前編)

この秋、近場ということもあって、二度にわたって昼神温泉へ出かけた。単純硫黄温泉で、源泉からはツーンと硫黄の臭いがし、肌がツルツルになる湯であった。温泉にゆっくり浸かって疲れを癒すことが目的の旅だったので、昼神温泉界隈だけを少し周って、後は阿智川河畔を散策した。阿智川沿いの道にはサクラとハナモモが植栽されていて、夕食前に家族と一緒にのんびりと散策した。浴衣姿で連れ立って散歩する観光客の姿もあちこちで見かけ、いかにも温泉場らしい和やかな雰囲気であった。

Photo_4サクラの樹を見上げると、クスサンの姿が目に入った。恐らくメスであろう。産卵中らしく太目の腹端を樹皮にくっつけながらゆっくりと上へ登っていく。夕暮れで撮影しにくかったが、何とかカメラに収めた。次いで別のサクラに目を移すと、樹幹に黒っぽい蛾が止まっていることに気付いた。後翅は見えないが、前翅に青白い輪を描いたような模様がある。あいにくネットを宿に置いてきてしまい、採集用具が無かった。かなり敏感で、2度シャッターを押すと、もう危険を察知してパッと飛び去ってしまった。どうやら、ワモンキシタバ Catocala fulminea xarippe Butler, 1877だったようだ。鱗片も剥げてしまって、ワモンとはとても思えないほどみすぼらしいボロ個体だ。
(写真:ワモンキシタバ 2007年9月25日 長野県下伊那郡阿智村智里で撮影)

Photo_2Photo_3昼神温泉は、ハナモモの里といわれるほどハナモモが多く植栽されているが、そのハナモモの葉上には、白いシャクガが静止していた。クロミスジシロエダシャク Myrteta angelica Butler, 1881である。前翅に欠損があるのが惜しいが、観光に来て被写体の選り好みする贅沢は許されないと思って撮影した。既に夕闇が迫りかけていたが、何かいないかと思って探していると、道端に咲くコスモスの周りに何か飛んでいた。そっと近寄ると、キンウワバが盛んにコスモスで吸蜜していた。採集していないので、きちんとした同定は出来ないが、イチジクキンウワバChrysodeixis eriosoma (Doubleday, 1843) のような感じがする。
(写真:クロミスジシロエダシャクとインチジクキンウワバ? 2007年9月25日 阿智村智里で撮影)

夜になって宿の露天風呂に行くと、誘蛾灯に大型の蛾が飛来したが、高いところだったので、採集はできなかった。また、露天風呂の照明にも中型の蛾が止まっていたが、採集用具が無くて逃がしてしまった。翌朝早く、今度は採集用具を忍ばせて露天風呂に行ったところ、蛾は既に飛び去った後なのか、はたまた鳥に捕食された後だったのか、もはや影形も無かった。とはいえ、山際の露天風呂は、虫好きの私には蛾の気配が感じられる夢のある処で、すっかり気に入ってしまった。

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July 10, 2007

タケウチエダシャク幼虫危うし

飼育中のタケウチエダシャク幼虫の様子がどうもおかしい。新鮮なヤマモモの葉を与えても、少ししか食べない。そういえば、糞も心なしか乾燥気味。なにしろ、湿気やカビに極めて弱い幼虫である。中山・竹束(1993)では、袋掛け飼育で終令幼虫に至っている。清水・竹束(げんせい 74:43-45, 1999)では、容器内飼育の幼虫が、約4ヶ月で体長60mmの段階で死亡。袋掛け飼育品だけが羽化に成功している。4ヶ月も育てて死なれたのでは目も当てられない。

Takeuchi2というわけで、容器内飼育の死亡率は高い。にもかかわらず、容器内飼育を継続したのは、袋掛けでは正確な脱皮回数を観察することがむつかしいためだ。毎日、飼育容器を開け、うちわで扇いで風を通してやったり、容器の底に敷いたキッチンペーパーを取り替えたり・・・自分としては小まめに世話をしたつもりだったが、その甲斐も無く幼虫はグッタリして元気が無い。食草に寄らずに、キッチンパーパーにしがみついて静止している。卵を送って下さったSさんの顔が浮かぶ。このまま死なせては、Sさんが勤務する南アルプスの見える博物館へも気軽に遊びに行けなくなるかもしれない。生来楽天的な私もさすがに心配になってきている。

写真:タケウチエダシャク幼虫

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June 28, 2007

幼虫越冬するシロシタホタルガ

このところ真夏のような暑さ。この炎暑で、シロシタホタルガの卵が一斉に孵化した。3頭の母蛾から採卵したものだが、なんと全部孵化してしまい、幼虫の数はざっと見ても1000頭余。またたく間に、食草の葉には無数の食痕ができ、葉は透け透けになってしまった。手に余る数の幼虫に、嬉しいを通り越して、困惑してしまった。食草の調達も大変であるし、これから一年間の長丁場の飼育を考えると、気が重くなる。

Shiroshita_2今月中旬の夕方、いつもの雑木林を散策した。小雨混じりの天候であったが、蛾採集にはかえって好都合。そろそろ、シロシタホタルガの♀成虫が出現する頃である。食樹のクロミノニシゴリを見上げると、数頭の成虫の姿が目に入った。どうやら、羽化して間もないようである。木の周りをゆっくりと飛翔する♂の姿も見える。絶好のタイミングに来た、と確信する。きっと、♀成虫が食樹の周りにいるに違いないと思い、下草を探すと、すぐに新鮮な1♀が見つかった。近くで、さらに新鮮な2♀を加え、計3頭を持ち帰った。♀達は翅音も騒がしく、淡黄色の卵を連日産卵した。鮮度が良いので未交尾である恐れもあるが、そのうち1頭ぐらいは交尾済みだろうと読んだ。全卵孵化したところを見ると、3頭とも既に交尾済みであった。野外で採集する♀は、交尾済みであることが多い。しかし、シロシタホタルガは飼育下では容易に交尾しない。これまで何度も大きめの飼育箱に、羽化したばかりのシロシタホタルガの♂♀を放ってみたが、交尾行動を観察できたことは一度も無い。♀は産卵するが、卵は孵化しない。総じてホタルガ亜科の蛾類は飼育下で簡単に交尾するのに、シロシタホタルガはその例外で、飼育屋泣かせの気難しさんである。

ところで、シロシタホタルガの越冬態についてよく質問を受けるが、シロシタホタルガは幼虫越冬である。実は私も数年前までは、日本産蛾類生態図鑑(1987、講談社)の記述を鵜呑みにして、卵越冬だと思い込んでいた。しかし、春先に見る幼虫が大き過ぎ、かつ令数にばらつきがあることに疑問を持ち、昨年一年間、飼育と野外の両方から生態観察をしてみた。すると、若令幼虫で越年することがわかった。既に幼虫越冬であることを報じた文献があるのではないかと思って探してみたら、一つだけ見つかった。ただ、発行部数の少ない地方誌に掲載されたもので、ほとんど知られていない。図鑑の影響力は大きく、誤謬が流布してしまうので、ここで訂正しておきたい。なお、詳しい生活史は紙媒体にも投稿準備中である。

写真:シロシタホタルガ Neochalcosia remota (Walker, 1854) ♀

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June 24, 2007

タケウチエダシャクの幼虫

タケウチエダシャクは4月に出現するシャクガだが、全国的にも産地が限定されている珍しい種だ。幼生期は長らく未知であったが、1993年にようやく中山紘一、竹束正両氏によって解明された(げんせい 63/64:31-35)。飼育下の幼虫の食草はヤマモモであった。終令幼虫は体長75mmにも達し、一見トビモンオオエダシャクに似るが、頭頂部の1対の角状突起の切れ込みがタケウチエダシャクよりも長い。幼虫屋なら、一度は我が手で飼育したくなるような姿である。

この4月のことだが、飯田市のSさんからメールを頂いた。「タケウチエダシャクの卵があるけど、飼育してみませんか?」と。願っても無いチャンスと喜び、私は浮かれ気分で即承諾メールを返信した。しかし、その後すぐに私はひとつ重要なことを失念していたことに気づき、自分の軽率さを後悔したのである。蛾類の幼虫期間は、幼虫越冬をするものを除けば通常1-2ヶ月だ。ところが、タケウチエダシャクの幼虫期間はなんと5ヶ月余もあるのだ。しかも、タケウチエダシャクの幼虫は湿度管理や給餌がむつかしい。私は泣きたい思いであった。

Takeuchiほどなくタケウチエダシャクの黄緑色の卵が送られて来た。数百卵はあったかと思う。私は孵化した幼虫に様々な植物を与えて大胆な食草実験を行なった。幼虫の喰いつきは異常なほど悪く、大半の幼虫が1令の段階で斃死してしまった。いくらなんでもおかしい、と思っていたら、問題は飼育容器の方にあった。一年間マダラガ幼虫を飼育して、青酸配糖体が充満した容器を間違えて使用してしまったのだ。孵化幼虫がバタバタ死ぬはずである。
生き残ったのは数頭だけ。早速、Sさんには正直に報告して、自分の不注意をお詫びした。賢明なSさんは、他にも飼育の達人達に卵を託しておられた。きっと、その方々が無事飼育羽化にこぎつけてくれることだろう。これでタケウチエダシャク幼虫の飼育から解放されると思うと、内心安堵の気持ちが強かった。ところが、親切なSさんは、御自分がクヌギで飼育していた幼虫をクール宅急便で恵送して下さったのである。

結局、数を減らしたタケウチエダシャクの幼虫は既知の食草であるヤマモモで飼育するという無様な羽目に。ヤマモモの分布や、幼虫の食いつき方が良くないことから見ても、少なくとも長野県や愛知県の個体群の自然状態の食草がヤマモモである可能性は低いと思うが、2ヶ月近く幼虫飼育して、ヤマモモが飼育に適した食草であることを感じた。葉の持ちが良く、頻繁に食草を取り替える必要が無いからである。ただし、幼虫は湿度に弱いので、飼育容器の蓋を朝な夕なと開けて、容器の底に敷いたキッチンペーパーを小まめに代える必要がある。
この先、どのくらい幼虫が生きるのかわからないので、この辺で4令幼虫の写真を公開し、Sさんの御厚意に深謝したい。

写真:Biston takeuchii Matsumura, 1931 タケウチエダシャク4令幼虫(体長約45mm)

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June 15, 2007

伊吹山のウスバシロチョウ

Usubashiroまだ蝶を知り染めし頃、ウスバシロチョウは憧れの蝶であった。その姿を図鑑で見た時、白と黒のデザインの斬新さに息を呑む思いであった。是非とも、この蝶を眼前に見てみたいという思いに駆られた。その上、食草のムラサキケマンは当時の私にとって未知の植物であった。このことが、私の想像力を一層膨らませた。岐阜県の平地では5月上旬に多産するとの情報を得て、伊自良村(現 山県市)へ出かけて見た。すると、村中何処にでもウスバシロチョウは溢れかえっていた。網を振っても一向に逃げる様子も無く、ただ悠然と浮遊するがごとく飛翔していたのである。余りの多さにあきれ返ると共に、この蝶に抱いていた幻想も忽ちのうちに消え失せてしまった。

Gunnaifuroあれから早20年余。各地でウスバシロチョウに慣れ親しんだせいか、胸が鼓動するような興奮を覚えることはもはや無い。しかし、今はこの蝶の味わい深さに改めて感じ入る。透き通るような白い翅、鮮明な黒い翅脈、その対照はまさに自然の妙。たおやかな飛翔の姿も、またよろしい。4月下旬に畑の葱坊主に寄るもの、5ー6月の山麓で遊ぶものやら、はては山頂に吹きあげられるものまで、生態もまさに多様で面白い。写真は、今年6月12日、伊吹山の山頂付近で、イブキガラシで吸蜜しているところを撮影したもの。当日はほぼ晴天で、ウグイスの声が朗々と響き渡った。山道沿いには、ヒメウツギ、ヤマボウシ、エゴノキの白い花が咲き、タニウツギの桃色花も色鮮やかであった。山頂付近には、グンナイフウロ(写真)、イブキハタザオ、イブキガラシ、ヒメレンゲ、ウマノアシガタ、クサタチバナの花々が咲いていた。

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April 24, 2007

ツマキチョウとの出会い

春の蝶のなかで私が一番好きな蝶といえば、それはギフチョウでもなければ、ヒメギフチョウでもない。ツマキチョウである。ギフチョウもかっては春の野を歩いていると、ごく自然に見かける蝶だったのだろう。しかし、今や土地開発によって生息環境が狭められ、局所的な産地でしか出会えない蝶となってしまった。ところが、ツマキチョウは小粋で可憐な姿の蝶でありながら、街中でも気軽に出会える卑近な蝶だ。近所でツマキチョウが飛ぶ姿を見ると、自分が春の只中にあることを実感する。ツマキチョウは私にとって春の象徴とも云える蝶である。

Tsumaki042307さて、今年は4月12日にツマキチョウが飛んでいるところを見た。この日は天気が良すぎて、ツマキチョウは止まってくれずに、その姿を撮影することはできなかった。それ以降は、休みの日には天候が崩れてしまい、見る機会がなかった。今年はもう無理かな、とあきらめかけていた。今日は久方ぶりのお休み。風邪気味だったが、午前11時ごろ散歩に出た。アメリカハナミズキが咲き始め、白色や薄紅色の花が眩しい。コデマリの花も満開だ。花でも撮影しようと、デジカメを構えたとたん、白い蝶が風に流されるように飛んできたかと思うと、すぐ近くのケヤキの幹に止まったのだ。地味な♀だが、裏面の模様は渋く、かえって趣がある。今にも消え入らんばかりの、かそけき風情が心打つ。ちょうど曇りだったせいか、動きが悪くて、おかげで様々なアングルから写真を撮ることができた。これで、ようやく春気分。

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April 18, 2007

春の幼虫

Goma041807平地のサクラが散り果て、目も鮮やかな若葉が開き始める頃、長い越冬から目覚めた虫たちの活動も始まる。そろそろ幼虫の姿が見られるのではなかいと期待に胸を膨らませながら、いつものフィールドへ寄ってみた。すると、チャバネフユエダシャクやウスバフユシャク、ニトベエダシャク、チャエダシャクなどの常連幼虫さんが早くも体長15~20mmにまで成長していた。昨年よりも多少成長が早いような気がする。今日は天気が曇りだったので、チョウはほとんど飛んでいなかったが、代わりにゴマダラチョウの幼虫に出会った。寄主はやや薄暗い場所に生える樹高2メートルほどのエノキ。この時期のゴマダラチョウ幼虫は桃色や黒色の模様が出ていて、展葉したばかりのエノキの艶やかな葉にそっくりで実に美しい。

Shiroshita041807_1ゴマダラチョウの幼虫を見つけて上機嫌の私は、芽吹いたばかりのクロミノニシゴリでシロシタホタルガの若令幼虫(推定令数 2令)を見つけた。日当りの良い場所では、幼虫はさらに成長しており、3令幼虫の姿も見られた。まだ個体数はそれほど多くないが、これから追って数を増すものと思われる。シロシタホタルガの若令幼虫はクロミノニシゴリやサワフタギの花蕾に似た模様をしているために、少し離れるとほとんど目立たない。幼虫はほんの僅か開き始めた芽の間に潜んでいるが、吐糸で芽を封じるような手の込んだ隠れ方はせず、「見つけてちょうだい」と言わんばかりのお座なりな隠れ方をしている。体内に青酸配糖体を蓄蔵して、天敵を威嚇する防御手段を持っているための「余裕」なのだろうか?しかし、こうした防御手段も寄生性天敵には余り効果が無いようだ。野外で採集した本種幼虫から寄生蜂やヤドリバエが羽化することは珍しくないからだ。

Himeyamamayu_1満足して帰ろうとすると、途中でサクラの葉裏に静止するヒメヤママユの若令幼虫(推定令数 2令)を見つけた。ヤママユガ科の幼虫は孵化したばかりの初令幼虫は真っ黒なことが多い。ヒメヤママユの場合は2令になると、第2-3胸背に鮮やかな赤色斑が出る。令数が高くなるにつれ、幼虫の色彩や形状が変化するので、飼育の楽しい幼虫のひとつである。ところで、今年の冬には卵が産付されたウスタビガの繭を見つけた。孵化幼虫の飼育を楽しみにしていたのだが、時期になっても孵化しない。おかしいと思っていたところ、コバチが羽化してしまったのだ。今度はウスタビガの幼虫も見つけたいと思っている。

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April 12, 2007

南信州 花巡り

Photo_6春になると、花が一斉に咲きはじめ、心が浮き立つ。早春の花にはなぜか菜の花、マンサク、福寿草、キブシなど黄色のものが多い。次いで多いのが白色と薄紅色。梅、水芭蕉、桃、桜、カタクリ、ミツバツツジの花だ。カタクリの花は紅紫色が多いが、まれに白色もある。先週半ば、南信州へ花巡りの旅に出た。人出の多い満開の時期を避け、少し早めの時期(4月4-5日)を選んだ。まず最初に寄ったのが、飯田市美術博物館。ここの安富桜は風格のある桜で、特に幹や枝ぶりが素晴らしい。平日にもかかわらず、駐車場は満員。カメラ機材をかかえて桜の周りを陣取る人もあちこちに見られた。いつもは奥にある美術博物館の喫茶店が、桜のよく見える場所で臨時営業をしていた。公共の施設にしては粋な計らいである。コーヒーを飲みながら、ガラス越しに見える安富桜を堪能した。桜に酔うような気分で、しばし時を忘れてしまった。「京の桜が公家の姫君なら、飯田の桜は武家の姫君だ」と、同行の母が感嘆する。特別公開中の菱田春草や横山大観の絵はほの暗い渋い作風で、大胆な構図や配色の所謂大作ものとは些か趣きを異にしていた。春草や大観の画風のこれまで知らなかった一面を垣間見る思いがした。

Photo_7次に立ち寄ったのは、高森町大島山の瑠璃寺。南アルプスを望む丘陵に咲く枝垂れ桜は風情があった。花はまだ咲き始めであったが、花が色濃く、雅やかであった。由緒ある寺のようで、境内の松なども樹形が見事であった。4月1日にオープンしたばかりの瑠璃の里会館が敷地内にあり、軽食や喫茶も楽しめる。あいにく飯田市美術博物館でコーヒーを飲んだばかりだったので寄らずじまい。

Photo_8桜見物の後、ハーモニック・ロードという南アルプスの見える眺めの良い道を走って、蘭ミュージアム高森へ。ここへは昨年12月に行ったことがあるが、素晴らしい蘭の数々が展示されているので再訪した。大変居心地の良いところで、何度でも行きたくなる。ちょうどヒスイカズラが開花中であった。蘭の甘い香に包まれながら夢中で蘭の写真を撮影していると、叩きつけるような激しい雨音がする。温室の外はみぞれ交じりの大雨。つい先ほどまで晴れていたのが信じられない。山際のため、天候が変わりやすいのだ。

Photo_9粉雪が舞って来たので、この日の宿泊先である辰野町へ急ぐために松川ICへ。駒ヶ根付近では、雪が一段とひどくなったので、駒ケ岳SAで一休み。しかし、雪は一向に止む気配が無いため、小雪の中を再び中央道を走る。伊北ICを出る頃には雪は止んだが、空は相変わらず真っ暗。大変な花見になってしまった。辰野町荒神山のたつのパークホテルに到着したのが午後4時ごろ。夕食まで時間があったので、池の周りを散歩する。コヒガンザクラの蕾は膨らみ、ほの紅に染まっていた。当然のことながらサクラはまだ早かったが、代わりに紅梅白梅が満開で、芳しい香を放っていた。夕食前に露天風呂へ行くと、外気は冷たかったが、梅の香が漂ってきて爽快だった。
夕食は美味しく、「夜明け前」という地元小野の吟醸生酒を頼んだところ、これが芳醇で旨い酒。良い酒は悪酔いしないので、ついつい飲みすぎてしまう。辰野町小野といえば、ヒメギフチョウの産地としても知られているところ。蝶の舞う野に思いを馳せながら夢路に入る。

Photo_10翌朝は快晴。冠雪した山々がまぶしい。早速、たつの海を散歩をすると、コヒガンザクラの蕾がほころびかけている木もちらほら。通りかかった地元の方から「せっかく来てくれたのに、咲いてなくて申し訳ないねえ。後1週間はかかるねえ。」と声をかけられる。また、「みんな高遠へ行ってしまって、荒神山へは来てくれない」と、嘆いていた。辰野の桜は高遠ほど有名ではないけれども、決して負けないと私は思っているが。また、辰野の方が落ち着いていて、ゆっくりできると思った。

Photo_11朝食後、ホテルの喫茶店でコーヒーを飲みながらゆっくりと過ごす。遅めにホテルを発ち、まず信州伊那梅苑へ寄る。観光ガイドブックにも書かれているとおり、広大な梅園だが、梅はまだ咲き始めだった。ここはスピーカーで不調和な琴の音を流したり、急ごしらえの土産店を入口付近に設けたり、何とも騒がしい。とても静かに梅見を楽しめる雰囲気ではない。梅園からの眺望も今ひとつである。梅園内に置かれているオブジェ?も安っぽい。観光地化され過ぎていて、私の好みでは無かったので、早々に立ち去ることに。

Photo_17次いで経ヶ岳山麓の仲仙寺を訪れる。鎌倉時代の作とされる金剛力士像や仁王門があり、歴史のある古刹である。平日ということもあってか、辺りは静寂そのものであった。明るい斜面には可憐な福寿草の花が、湿地には水芭蕉が咲いていた。ここの水芭蕉は昔から自生していたものではなく、奥裾花自然園からもらった種苗を経ヶ岳の湧水に植栽して増やしたものとか。仲仙寺から眺める南アルプスの山並みは美しく、白銀の甲斐駒ケ岳はとりわけ印象的であった。のびやかな南アルプスの眺望は、中央アルプス側からに限る。出来ることなら、いつまでもそこに留まりたい思いだった。

Photo_13仲仙寺で寛いだ後、今度は羽広みはらしファームへ寄る。ここは家族連れで大変賑わっていた。直売所で新鮮な野菜を買う。値段は特に安いわけではなかったが、品質が大変良かった。家へ戻ってから、もっとたくさん買えばよかったと、後悔したほどである。羽広荘で軽い昼食を食べる。蕎麦の他に蜂の子を注文。クロスズメバチの幼虫、蛹、羽化寸前の蛹を上手に味つけしたもの。各ステージ独特の舌触りが味わえ、なかなか美味しかった。羽広荘から見る南アルプスの連山は最高だった。この後、ついでに高遠へ廻ってみることにした。伊那IC周辺の桜は全て開花していたので、期待がもてるような気もしたのだが、城址公園の桜はやはりまだ蕾だった。下の方の日当りの良い信州高遠美術館と絵島囲み屋敷の辺りのタカトウコヒガンザクラは既にほころびかけていた。花が小さくて色が濃いのが特徴だった。

Photo_14高遠さくらホテルで少し休憩した後、美和湖畔の国道152線を下る。途中、絵島が最初に流された長谷村非持を通る。大沢峠付近から路面が凍結しており、対向車もほとんど無い。松林の間から大仙丈ケ岳がよく見える。このルートは以前4月下旬に逆コースで走ったことがあるが、4月上旬は初めて。所々に落石がある。林床には雪が見える。標高が高いので、樹木はまだ芽吹いておらず寒々しい景色が延々と続く。心細い限りである。

Photo_15分杭峠からくねくね道を下り、途中崖崩れもあったらしく迂回路を走るなどして、大鹿村の最初の集落が見えてきた時にはさすがにほっとする。小渋湖の湖畔にはようやく桜も見られ、人里に戻って来たことを実感する。高遠~大鹿村のコースは中沢峠で駒ヶ根へ抜ける県道49号駒ヶ根長谷線もあるが、以前走った時にひどい悪路だったので、今回走らなかった。恐らく正解だったろう。夕闇迫る中、松川ICへ向かう道すがら、大洲七椙神社の桜が目に止まる。名木ではないのかもしれないが、なんとなく温かい桜で心に沁みる。桜に始まり、桜で終わる南信州の旅であった。

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November 25, 2006

街角のギフチョウ

Fence今年はいつまでも青々とした葉が繁っているように見えたが、いつの間にか木々が赤や黄色に染まり、落葉が舞う季節になっていた。今朝、色とりどりの落葉を踏みながら職場への道を急いでいた。S運輸会社の前まで来た時、トラックヤードに設置されたフェンスが目に留まった。敷地内にあった社宅の取り壊し工事用らしい。かなり年季ものの社宅だったので、さすがに建替えか、と思って通りすぎようとすると、フェンスに止まる黄色と黒色のだんだら模様の大きなチョウの姿が私の目に飛び込んできたのだ。

フェンスのギフチョウはグリーンの小さなバケツを手に持ってレンゲの花で蜜集めしている。大胆にデフォルメされているが、愛嬌のある顔をしている。鮮度の方は相当古びた擦れ個体だが、これもなかなか味がある。工事用フェンスの絵がギフチョウとは、創業者がトラック1台から事業を始め、以来ずっと岐阜県に本拠を置くS運輸らしい。思いがけず「ギフチョウ」に出会えて、すっかり足取りが軽くなってしまった。

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November 24, 2006

枯野のチョウ

KitaKitatehaHimeaka秋が深まり、矢田川河川敷は枯れ草が多くなってきた。しかし、この時期はかえってチョウを探しやすい。チョウの吸蜜植物が限られているので、僅かに残ったセイタカアワダチソウやキク、コスモスの花のある場所に行きさえすれば、花を訪れるチョウの姿を見ることができるからだ。

一昨日と昨日の2日間で見たチョウは7種。キタキチョウ、キタテハ、ヒメアカタテハ、ツマグロヒョウモン、ウラギンシジミ、ベニシジミ、ヤマトシジミである。いずれも河川敷に幼虫の食餌植物があり、毎年発生している常連さんたちである。ヒメアカタテハは古びた個体が多くなってきているが、他はまだ新鮮な個体である。このうち、ウラギンシジミとキタキチョウは成虫越冬だが、まだ暖かいので、越冬モードに入らずによく飛び回っている。TsumaguroUragin
Beni

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November 14, 2006

晩秋の虫散歩

111306111306_1秋が深まり、木の葉が色づいてくると、急に虫の姿が少なくなる。たいていの虫屋はそろそろフィールド活動をお休みにする時期だ。しかし、私はこの時期から真冬にかけて、一年で最も精力的に虫探しをする。思わぬ拾いものをすることもあり、楽しみなシーズンでもある。昨日も近くの雑木林を散策中、クヌギとコナラの葉上で、ヤマトカギバの幼虫を見つけた。カギバ科の幼虫はいずれも体を曲げて止まっていることが多く、色や形は鳥の糞や枯葉にそっくりである。ヤマトカギバ Nordstromia japonica (Moore, 1877) は平地や山地で普通に見られる蛾で、幼虫もブナ科植物の葉上でよく見る。しかし、いつ見ても、この幼虫の姿は面白い。ごきげんで帰る途中、樹幹に止まるセスジナミシャク Evecliptopera illitata illitata (Wileman, 1911)を見つける。翅の模様がお洒落である。付近には幼虫の食餌であるアケビやミツバアケビ、ゴヨウアケビが多いので、来年は幼虫を見つけたい。

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November 13, 2006

奈良の普通種

Photo_3Photo_411月10-12日、奈良へ旅に出た。日本鱗翅学会第53回大会に参加するためだ。京都へは幾度となく行くが、奈良は小学校の時行ったきりだ。私にとって初旅も同然である。名古屋からは、近鉄やJR関西線を利用する方が車窓からの景色も良いらしい。だが、せっかちな私は京都経由で新幹線と近鉄を利用。所要時間こそ短いが、およそ趣ある旅とは縁遠い。10日は職場から直行し、近鉄奈良駅に到着したのは午後7時すぎ。辺りは既に真っ暗で心細い限りだったが、どうにか上三条町のホテルへ辿り着く。上三条通りは多数の観光客が繰り出し、大変な賑わいであった。食事でもしようと、安そうな店を覘く。試みに1-2品頼んで見ると、美味しい。これはいけそうだと思っていると、なんとN氏がふらっと店に入って来るではないか。日本でシャチホコガ科幼虫と言えば、この人を置いては語れない。幼虫屋の私としては、これ以上の話相手は望むべくも無い。幼虫談義は盛り上がって、ふと気づいたら午後10時になっていた。氏の幼虫と食草の知識は広くて奥深く、どの話題も刺激的でわくわくするものだった。こうして旅の初日は幸先の良いスタートとなった。
写真:興福寺五重塔と浮見堂

11120611日は曇り時々雨。午前10時半から会議があるので、大事を取ってホテルを午前8時40分に出発する。会場の近畿大学農学部は奈良市の西方にある。最寄の近鉄富雄駅は普通、準急、急行電車しか停車しない。土日ダイヤということもあって、電車が無くて25分ほど近鉄奈良駅で待つことに。おまけに富雄駅から近畿大学行バスが出るバス停は少し離れている。やっとバスに乗り込んだら、会議に参加する知った顔の方々がにこにこ顔で迎えて下さり、ほっとする。やはり旅先で知っている人達に出会うことほど、心強いものは無い。近畿大学校門からまた歩いて、会場に到着したのは午前10時12分頃。かれこれ1時間半だ。名古屋駅~奈良駅間と同じくらいかかったわけだ。なにやら、午後1時半の大会開催前にすっかり疲れこんでしまった。
写真:チャエダシャク(高畑町)

Photo_5111206_112日の朝は早起きして、近鉄奈良駅のカフェでコーヒーを飲んでいると、ウォーキングシューズとリュック姿に地図を手にしたグループが湧くように現れては続々と発つのを目にした。そのエネルギッシュで楽しそうな様子に感動し、私も少し歩いてみたくなった。そこで、標識だけを頼りに興福寺から国立博物館、春日大社、奈良公園をバスと徒歩で廻ってから、新薬師寺あたりまで散策した。この日は奈良国立博物館で開催中の正倉院展最終日ということもあってか、奈良は朝から人で溢れかえっていた。古都散策は思いのほか爽快で、身も心も癒される思いがした。もっとも、虫の方はほとんど成果がなく、見たのはチャドクガ、チャエダシャク成虫、ナンキンキノカワガ幼虫、コカマキリなど、いずれも名古屋でも見られる普通種ばかり。奈良公園界隈の樹木はシカの皮剥ぎ防止のために樹幹に網が張られている。ところが移入植物であるナンキンハゼはシカの食害を免れて増殖したせいか、奈良には大変ナンキンハゼが多い。当然ナンキンハゼに寄生するナンキンキノカワガも多いわけである。
写真:ウスキツバメエダシャク(奈良公園)とナンキンキノカワガ終令幼虫(山ノ上町)

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November 08, 2006

ミノウスバの季節

SinicamSinicaf11月はミノウスバの季節。ミノウスバは、虫の姿が少なくなった晩秋に登場する昼蛾だ。翅は薄くて脆弱な感じだが、体躯はふさふさとした黄色の毛で覆われ、いかにも暖かそうだ。例年自宅の近くで見られる常連さんで、晩秋マサキの周りを飛ぶ姿は愛らしい。しかし、実のところ今年は果たしてミノウスバを見られるかどうか心配だった。というのも、このブログでも書いたように、幼虫が群生していた近くのマサキに大量の殺虫剤がかけられてしまったからだ。悶えながら地面に落下してゆく夥しい数の幼虫の姿は今も目に焼きついている。殺虫剤の影響で、今秋の成虫の発生は極端に少ないのではないかと予想していた。

ところが、今日くだんのマサキを調べて見ると、ミノウスバは既に発生していたのだ。オスばかりか、産卵中のメスの姿もあった。どうやら、たくましく生きながらえた幼虫達が蛹化し、無事羽化にこぎつけたようだ。個体数の増減は詳しく調べないとわからないが、ざっと見たところでは昨年並みという印象であった。殺虫剤によって幼虫個体数が減少して、限られた幼虫間での資源配分が順当に行われたせいなのか、それとも、幼虫と共にマサキに寄生するサシガメや寄生性天敵の個体数も減少したせいなのか?

写真:Pryeria sinica Moore, 1877 ミノウスバ ♂(アンテナ 両櫛毛状) ♀(アンテナ 棒状)

ミノウスバ御難

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October 24, 2006

道端のチョウ

Maha今日は仕事がお休み。昨夜はついつい夜更かし、今朝は早く目が覚めてしまい、朝食もそこそこに飛び出す。当ても無く歩いていると、ヤマトシジミが道端に咲く淡紫色のクコの花で吸蜜中だった。クコは晩秋になると真っ赤な実を一杯つけるが、花の方は小さくて控え目である。夏の頃に比べて花が少なくなってきているせいか、花ともいえないような花でも重要な吸蜜源なのであろう。チョウは吸蜜に夢中で、デジカメを近づけても逃げようともしなかった。道端の所々には食草のカタバミがあり、ヤマトシジミの飛び交う姿が愛らしかった。よく見かけるチョウだが、朝陽に照らされた淡いブルーの翅は繊細で美しかった。

Mathiasヤマトシジミの姿を追いながら歩んでいると、道端の草の上に淡茶色の枯葉のようなものが落ちていた。しかし、枯葉にしては様子がおかしいと思いつつ目を凝らすと、それは交尾中のチャバネセセリのカップルであった。下草の上にいると、淡茶色の姿は本当に目立たない。恐らく急いでいたら、チャバネセセリと気づかずに通り過ぎていたことだろう。本種の地味な色彩は、隠蔽戦略としては効果的なようだ。


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October 23, 2006

今朝は蛾日和

Krananda今朝出勤途中にツツジの植え込みの前を通り過ぎようとしたら、緑色の葉の上に白っぽい蛾が止まっている。Kran