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December 22, 2004

昆虫の糞で染めた織物

silk昆虫の糞で染色するーこんな奇想天外なことを思いつき、実際に製品化までした人がいる!この秋札幌で開かれた日本昆虫学会大会ポスター発表でのこと。その人は伊丹市昆虫館の後北峰之さん。ナナフシ類やガ類幼虫を飼育していると、幼虫の脱糞で飼育箱に赤茶色が付着し、洗剤で洗っても取れないことがある。幼虫飼育する者なら誰でも経験していることである。しかし、その糞を利用して実際に布を染め、織物にすることは恐らく誰も考えなかったに違いない。西表島のツダナナフシはヤシの実のように海を渡って漂着した、と考える後北さんらしい奇抜な発想だ。ガの幼虫で布を赤く染めたという津和野地方の言い伝えにヒントを得たとか。写真の織物は、幼虫の糞で染色した絹糸を織り上げたもの。縦糸がツダナナフシ、横糸がジャコウアゲハとオオゴマダラの幼虫の糞。後北さんがノウハウを提供し、染色と織りは京都のプロに依頼したとのことである。残念ながら、絹以外の糸ではうまく染まらないのが悩み。ミニ敷物のほかに、スカーフなどの製品も、伊丹市昆虫館では頒布されているという。

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December 20, 2004

お茶の水界隈

xmas昨日、昆虫関係の集まりがあって、東京へ出かけた。午後4時に仕事が終わると、着替えもそこそに職場を飛び出し、「のぞみ」に乗車。東京へ着いたのが午後6時46分。友人達が待つ会場へ着いたのは午後7時半。初めての場所ですっかり道に迷ってしまったのだ。久しぶりに会う皆の顔に思わず顔がほころび、疲れも吹っ飛ぶ。午後9時すぎ、皆と別れ、お茶の水の山の上ホテルへ。ここ数年東京出張の際には、このホテルを利用している。こじんまりとしたホテルでサービスが良く、ここへ来ると本当にほっとする。ホテル内の飲食店の味も気にいっている。料金は安く無いが、新宿界隈のホテルに比べれば、値打ちだと思う。大安吉日の土曜日は結婚披露や各種パーテーで夜間遅い時間まで歌声や歓声で騒がしいことがある。この日は大安にもかかわらず、チエックインが遅かったせいか、とても静かだった。写真は別館ロビーに飾られたクリスマスデコレーション。

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December 14, 2004

双翅目学会国際大会

congress昨日、双翅目談話会から、第6回双翅目学会国際大会の案内が来た。2006年9月23日から28日まで、福岡で開催されるとの案内だ。双翅目とは、ハエやアブのように、翅が一対の昆虫のグループのこと。ハエは汚いもののように思われているが、よく見ると、翅は繊細で、頭部や背中の毛は輝くばかりの黒青緑色をしていて、なかなか美しい昆虫。ハナアブは今の季節でも飛んでいるが、これまた腹部の縞模様が粋な昆虫だ。まだ1年半先のことで、それまで生きていられるかもわからないが、ちょっと楽しみだ。

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台湾賞蝉図鑑

semi2semi台湾の友人が本を送ってくれた。台湾のセミの図鑑で、出たばかりらしい。日本にも保育社から「検索入門ーセミ・バッタ」という便利な図鑑があるが、台湾の図鑑は写真が大きく、大変見やすい。印刷もきれい。翅が黒色で、腹部と足が赤いセミ Scieroptera formosana Schmitdや、翅が黒く背中に赤い斑紋があり、腹部が赤いHuechys sanguinea(De Geer)などの写真も大きいので、見栄えがする。著者は陳振祥という人で、カメラマンのようだ。CDも付いていて、鳴き声が聞けるようになっている。まだ聞いていないが、冬にセミの声が聞けるなんて嬉しい。出版社は、大樹文化事業股分有限公司

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December 12, 2004

DNA昆虫研究会

insectdna

先日、私のところに往復葉書が舞いこみました。第2回昆虫DNA研究会の案内です。そこらのスーパーマーケットにも五万といるような私にも案内状が届きました。これは伝統的にアマチュア研究者が強かった虫屋の「健全」さかも。

第2回昆虫DNA研究会の案内は下記のとおりです。

            「第二回昆虫DNA研究会例会」

【日時】 2005年1月22日 (土) 13:00~18:00
  1月23日(日) 9:00~正午(予定)
 
【会場】 広島大学東千田キャンパス(旧キャンパス)  広島市中区東千田1丁目1-89

【交通】 JR広島駅から市内電車で約20分、「日赤病院前」下車 徒歩約3分

【参加費】1000円

【懇親会】23日(土)研究会終了後(会場と会費は未定)

【申込み】所定の参加申込み葉書に記入し、2004年12月24日までに投函。

詳しくは主催側に連絡をお願いしたいのですが、個人情報保護法がらみで明示できません。
会員外の方で、ぜひとも参加したいという方はご連絡ください。


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モルフォチョウの翅の構造色

先週土曜日、日本鱗翅学会東海支部の総会兼例会に参加しました。ちなみに「鱗翅学会」は「りんしがっかい」と読みます。数年前、千葉県立博物館で鱗翅学会大会が開かれた時のこと。看板をためすがえす眺めていた二人連れから 「あのー、これは何と読んだらいいのでしょうか?」と聞かれたことがあります。また、その日の夜、千葉市内の居酒屋で開かれた二次会の帰りがけに、店員の方から、「ところで今日はどのようなお集まりだったのでございましょう?」と尋ねられました。「ええ、蝶の集まりだったのですよ」と答えると、即座に「ああ、お医者様のお集まりだったのですか!」と。 蝶は、「腸」と勘違いされたようです。恐らく、「鱗翅」は「臨死」と解釈されることの方が多いのではないかと思います。いっそ、「蝶蛾学会」と改名した方がわかりやすいのでは、と思う昨今です。

前置きが長くなりましたが、この日の特別講演は、木下修一さんの「チョウの構造色の仕組みーモルフォチョウと国内産のチョウー」。モルフォチョウの発色機構については、かなり古くから研究されているようです。近年は日産自動車の田畑洋氏研究グループの優れた論文も出ていて、今更何を追加することがあるのか?という疑問もあるようです。しかし、田畑氏グループの研究の主目的は、基本的には水質汚染が著しい染色に代わりうる代替技術の模索であったと思います。生物としてのモルフォチョウの構造色の本質に切迫したいという問題意識を持つのは、イギリスのVukusicさんであり、木下さん他であろうかと思います。木下さんは「構造色研究会」の主宰者でもあります。

モルフォチョウの発色の手がかりとなるのは、多層膜干渉と言われてます。田端氏らの研究も基本的にはこの考えに基づき、これを定式化したことに功績があります。しかし、なぜか日本光学会会誌に掲載された彼らの論文(Tabata et al., 1996)は、欧米の生物物理研究者からは不当に無視され、引用されていません。田畑氏らも帝人との共同開発で当初大変苦労したように、単なる多層膜干渉ではモルフォチョウのような広範囲角度での輝きは得られないようです。モルフォチョウの翅はほとんど平行でも輝くほど、強い光の拡散を実現しています。この発色の構造は、実はかなり複雑で、光学の基礎知識の無い私には数式の多用などでわかりかねます。ただ、こんな私でもおぼろげながらわかることは、どうやらモルフォチョウの鱗粉には恐るべき精緻なしかけがなされているということです。木下氏によれば、モルフォチョウの反射光が最も強くなるのは垂直に入射した場合で、480nmの波長だとのことです。しかしながら、これだけでは反射角度が限定され、モルフォチョウのように平面に近い角度まで青紫色が見えるということは無いそうです。広範囲角度まで光が拡散するには、多層膜の構造が一見規則的に見えながら、その実、光の「干渉」と同時に「非干渉」を共存させる絶妙な不規則構造を保持しているからだそうです。裏返せば、多層膜の構造はランダムでありながら、そこに一定の微妙な法則性があることが特徴で、それ故にモルフォチョウの翅はあのように青く輝くとのことでした。

なお、帰りの雑談では、人間の目に見えるコバルトブルーはさておき、チョウの目にはいったいどう見えるのかが話題になりました。480nmという波長信号は認知されても、人の目に映る色のように認知されていないのかもしれないとか、喧々諤々でした。果たして、どうなんでしょうか。

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速水御舟の炎舞

先月、東京出張のおりに、山種美術館を訪れ、速水御舟の絵を見てきました。ホテルからタクシーで美術館まで行ったのですが、三番町KSビルというのがわかりにくく、近くまで行っても大きな看板が出ている訳では無く、あやうく通り過ぎるところでした。10時開館に合わせて行ったのですが、平日なのに続々と来館者が来て、狭い展示室はたちまち一杯になりました。

私のお目当ては、「炎舞」と「昆虫二題」(「粧蛾舞戯」と「葉陰魔手」)。「炎舞」はもっと大作だと思っていたのですが、意外にもこじんまりとしていて、それがかえって瀟洒な感じがしました。何でも号数が大きければ良いというものではなく、120.3x53.8cmという絵の大きさは御舟の美意識の現れだと感じました。美術全集で見るよりもはるかに色彩も素晴らしく、飛来する蛾の繊細な美しさ、臨場感がよく出ていました。

「炎舞」の向かって右に展示された「昆虫二題」、これまた見事な作品で、息を呑むような美しさでした。ヤママユ、シロヒトリ、ベニシタバ、ベニスズメ、ヨツメアオシャク、遠景に小さく見えるのは、ベニモンコノハ?。これらの蛾が光に吸い込まれるように舞う姿はこの上なくあでやかでした。ただ、ベニモンコノハは沖縄方面に生息する蛾。御舟は軽井沢の別荘に飛来する蛾をスケッチしたと言われますが、この蛾は軽井沢のような寒地には生息しません。恐らく軽井沢の蛾以外にも標本商から蛾の標本を買い求め、それを描いたものと推測します。

同様のことは、「炎舞」の中に描かれている蛾についても言えると思います。シロヒトリ、ヒメシロモンドクガ、マエキエダシャク、オオシロオビアオシャクなどが炎の上を舞っていますが、問題は向かって左から2番目に配された蛾ですが、これはどうもキベリゴマフエダシャクのようです。このような南方系の種は軽井沢にはいないはずです。御舟は軽井沢で忠実に蛾をスケッチし、写実的に描いているようですが、自らの美的世界をより芸術的にするために、そこに存在しなかった蛾も加えたようです。

「葉陰魔手」には、クモの巣を張るジョロウグモの姿が描かれていますが、これまた妖艶な作品。ジョウロウグモの黒と黄色の縞模様とクモの白い絹糸、ヤツデの緑色とのコントラストが絶妙です。このほか、いずれ劣らぬ名品ばかりが展示されていて、御舟の世界を堪能しました。売店では絵葉書を売っていましたが、いずれも印刷がいまいちで、細部がぼけて、色合いも悪く、到底原画の趣きを伝える代物ではなく、大変残念でした。

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河野和男さんの新著

kawanoキャッサバの育種家であり、甲虫コレクター、研究者でもある河野和男さんが、このほど新思索社から「カブトムシと進化論ー博物学の復権」(税込み 2835円)を出版しました。随所にカブト、クワガタの事例が引き合いに出され、虫屋にとってたまらない本です。まだ読んでいる途中ですが、ともかく面白い。歯に衣着せぬ表現も痛快だし、ひねった鋭い見方に苦笑したり...... ポイントは、生物進化。果たして微小な変異が気の遠くなるほど長い年月の間に徐々に蓄積されて種分化を引き起こし、現在のような生物の多様性に至ったのか、それとも断絶平衡理論のように、カンブリア紀の500万年から1000万年の間に生物進化の重要な出来事は起ってしまい、いまや先細り状態であるのかどうか?河野さんはどちらかというと後者の理論の信奉者ですが、お得意の語学力を生かし、スペイン文学や英文学からの引用もふんだんで、文字どおり博引傍証ぶりを発揮。この本を読んでいると博学になります。

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ウスタビガの羽化

usutabi12月に入ってからも概ね暖かい日が続いていますが、先日(12月5日)ウスタビガ(ヤママユガ科)のメスが2頭羽化しました。ウスタビガは、秋に出現する大型のガで、山地では9月下旬、低地では10-11月に成虫が見られます。野外と違い、室内飼育では、羽化のずれが生じることがありますが、だいたい9月下旬から11月までに飼育羽化することが多いようなので、12月に入ってからの羽化は珍しいことだと思います。2頭ともメスなので、羽化翌日から未受精卵を産下しています。野外ではメスは不活発で、特に出現したばかりの頃には羽化した繭の近くでじっとしていることが多いようです。野外で繭に産付された卵は黒い粘着物質で覆われていますが、狭い飼育箱の中では、バラバラと落下方式で産卵が行なわれています。こうした落下方式は、灯火の周りに寄るクスサンなどでも行なわれるようです。

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