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December 12, 2004

速水御舟の炎舞

先月、東京出張のおりに、山種美術館を訪れ、速水御舟の絵を見てきました。ホテルからタクシーで美術館まで行ったのですが、三番町KSビルというのがわかりにくく、近くまで行っても大きな看板が出ている訳では無く、あやうく通り過ぎるところでした。10時開館に合わせて行ったのですが、平日なのに続々と来館者が来て、狭い展示室はたちまち一杯になりました。

私のお目当ては、「炎舞」と「昆虫二題」(「粧蛾舞戯」と「葉陰魔手」)。「炎舞」はもっと大作だと思っていたのですが、意外にもこじんまりとしていて、それがかえって瀟洒な感じがしました。何でも号数が大きければ良いというものではなく、120.3x53.8cmという絵の大きさは御舟の美意識の現れだと感じました。美術全集で見るよりもはるかに色彩も素晴らしく、飛来する蛾の繊細な美しさ、臨場感がよく出ていました。

「炎舞」の向かって右に展示された「昆虫二題」、これまた見事な作品で、息を呑むような美しさでした。ヤママユ、シロヒトリ、ベニシタバ、ベニスズメ、ヨツメアオシャク、遠景に小さく見えるのは、ベニモンコノハ?。これらの蛾が光に吸い込まれるように舞う姿はこの上なくあでやかでした。ただ、ベニモンコノハは沖縄方面に生息する蛾。御舟は軽井沢の別荘に飛来する蛾をスケッチしたと言われますが、この蛾は軽井沢のような寒地には生息しません。恐らく軽井沢の蛾以外にも標本商から蛾の標本を買い求め、それを描いたものと推測します。

同様のことは、「炎舞」の中に描かれている蛾についても言えると思います。シロヒトリ、ヒメシロモンドクガ、マエキエダシャク、オオシロオビアオシャクなどが炎の上を舞っていますが、問題は向かって左から2番目に配された蛾ですが、これはどうもキベリゴマフエダシャクのようです。このような南方系の種は軽井沢にはいないはずです。御舟は軽井沢で忠実に蛾をスケッチし、写実的に描いているようですが、自らの美的世界をより芸術的にするために、そこに存在しなかった蛾も加えたようです。

「葉陰魔手」には、クモの巣を張るジョロウグモの姿が描かれていますが、これまた妖艶な作品。ジョウロウグモの黒と黄色の縞模様とクモの白い絹糸、ヤツデの緑色とのコントラストが絶妙です。このほか、いずれ劣らぬ名品ばかりが展示されていて、御舟の世界を堪能しました。売店では絵葉書を売っていましたが、いずれも印刷がいまいちで、細部がぼけて、色合いも悪く、到底原画の趣きを伝える代物ではなく、大変残念でした。

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