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May 12, 2005

木曽路(2)

ontake3田の原自然公園からの御嶽山の姿を存分に楽しんだ後、林道脇に雪が残る御岳林道のカーブをゆっくり下る。中腹まで来ると、日当たりの良い車寄せスポットがあったので、小休止する。ここからも御嶽山がよく見えた(写真上)。ダイミョウセセリ、ヤマトシジミ、コツバメが飛んでいたが、動きが早くて撮影できない。ウグイスがすぐ近くで鳴き、タカネザクラ(ミネザクラ)の蕾が膨らみ、まさに早春の気配である。タカネザクラは花が小さく繊細で、色も淡く、葉先が細長く尖り、私の好きなサクラである。一枝を持ち帰ったところ、蕾や葉の間に蛾の幼虫3種(シャクガ科2種、メイガ科1種)が入っていた。とりわけ面白いのは、タカネザクラの花を摂食するシャクガ科幼虫である(写真中)。花の中に潜み、体色もタカネザクラの花弁そっくりである。種名は不明である。

takane再び19号線へ戻ると、妻籠から国道265号線を通り、大平街道(おおだいらかいどう)へ入る。姥神峠と権兵衛街道が不通になっている現在、大平街道は木曽谷と伊那谷を結ぶ唯一の一般道路である。清内路街道(国道256号)も伊那谷へ出られるが、阿智村へ出るので、飯田へ行くには遠回りである。さて、途中大平峠(木曽峠)で休憩する。標高1,358m。数年前キベリタテハ観察のために来た時には、木曽見茶屋が開店していたので、ここで五平餅を食べたが、この日(5月7日)着いた時間が午後4時を過ぎていたこともあって、茶屋は閉まっていた。峠には歌碑が立てられていて、斉藤茂吉の短歌一首「麓にはあららぎといふ村ありて吾にかなしき名をぞとどむる」が刻まれていた。南木曽町の蘭(あららぎ)という地名と短歌雑誌「アララギ」とを掛けたのであろう。アララギとはイチイのことである。歌碑の横の由来書には次のように記されていた。

「近代短歌の最高峰といわれる斎藤茂吉先生が 木曽福島 王滝の旅を終えて 三留野 山田屋旅館に一泊し飯田におけるアララギ歌会に出席するため 秋深まるこの峠を越えたのは 昭和十一年十月十八日でした このとき紅葉する大自然の壮大な美に衝たれてつくった十七首の歌が「大平峠」と題して歌集「暁紅」に収められています

 大平の峠に立てば天遠く穂高のすそに雲しづまりぬ
 目のまへを聳ゆる山に紅のかたまりいくつ清けくなりつ
 ここにして黄にとほりたるもみち斑の檜山を見れば言絶えにけり

碑の歌もその中の一首で この地に立ってあららぎの里を望み その地名に茂吉が編集発行者として精魂を傾けた歌誌「アララギ」の名を重ねた深い思いが詠われています」 と。

oodaira斉藤茂吉とその一行は、妻籠から飯田まで歩いて峠越えをしたのであろうか?もし、そうだとしたら、大変な忍耐と健脚である。車で大平街道を飯田まで下るのでさえ、楽ではない。延々と続く単調なヘアピンを2時間近くドライブし、今は無人になっている旧大平宿で小休止し(摺古木山でベニヒケゲ観察をする時にはここから登る)、松川湖が近づくと安堵し、南アルプスの山々が見え始めると、木曽谷から伊那谷へようやく出たという開放感で一気に気分が明るくなるほどだから。

飯田の市街地から市外の中央道飯田インターへ入る道筋は複雑で、いつも道に迷っているうちに地元の味処に行き着くので、市内をぐるぐる廻り、目に着いた粋な店で夕食を取る算段だった。ところがこの日に限って、勘が冴え渡り、標識一つ無い地元の細い道を一度も道を間違えることも無く、飯田インターに入ってしまった。中央道から見える恵那山の谷筋にはところどころ雪が残っていた。飯田で店に寄り損ねたので、やむなく恵那SAでファミレス風の定食を取る羽目に。家人からは、ナビゲーションの「想定外の正確さ」を逆にとがめられる始末であった。
夕闇の中央道を家路へと向かい、2日間の木曽路の旅もおひらきである。

【味どころ&土産メモ】

私は虫屋なので、いつもは食事処や土産、観光スポットには目もくれず、ひたすら虫を求めて昼夜問わず走る。しかし、今回は家族観光旅行だったので、「道の駅」にも立ち寄り、店にも入った。長野県木曽郡上松町寝覚ノ床入り口前(国道19号線沿い)には、創業1624年の蕎麦屋「越前屋」がある。喜多川歌麿や十返舎一九も立ち寄ったことがあるという老舗で、以前は木曽路へ行くとき必ずここで蕎麦を食べた。今回久しぶりに越前屋に寄ってみた。厨房の様子を伺うと、一瞬不安がよぎった。以前あった緊張感というか、活気が無いのである。案の定、名物「寿命そば」は悪く無いが、わざわざ車を止めて食べるほどの味ではなかった。蕎麦の打ち加減と汁とのバランスが今ひとつ。いつの間にか味が変わってしまっていた。

木曽路の土産屋に必ず置いてあるのは蕎麦だが、生蕎麦と一緒に乾麺「元祖乱れづくり 木曽路御岳そば」が並んでいる。乾麺にしては出来が良いので、私はいつもこれを茹でている。開田村の霧しな製造(一袋220g入り)の品だが、店によって値段はまちまち。一番安い店で210円、高い店で260円。定価は250円だが、全く同じ製品で賞味期限も長いものが近所のスーパーではいつも158円で売られている。わざわざ交通費を使って高いものを買わされてはかなわない。そう思ったら、とうとう土産屋では何も買えずに帰ってきてしまったのである。

写真 (上) 御岳林道中腹より望む御嶽山
    (中) 御岳林道で採集したシャクガ科幼虫
    (下) 大平峠より見下ろす木曽谷

追記:2005年6月9日

akahara2御岳林道で採集したシャクガ科幼虫はその後無事蛹化、2005年5月31日にアカハラウスアオナミシャクが羽化した(みんなで作る日本産蛾類図鑑掲示板 蛾LOVEさん同定)。

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