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June 30, 2005

マメコガネ

japonica今日オオマチヨイグサの葉上でPopillia japonica Newmanマメコガネを見つけた。体長10mmほどの小さなコガネムシで自宅周辺では5月から9月ごろまで普通に見られる。本種は1916年頃日本の苗木とともに米国ニュージャージー州に移入され、農作物の大害虫として北米全土に広がった。北米でJapanese beetleと呼ばれるのは本種のことで、防除のためにライフサイクルなど詳しく研究されている。

参考文献:
Daniel A. Potter & David W.Held(2002) Annual Review of Entomology 2002. 47:175-205

写真:マメコガネ 2005年6月30日 名古屋市で撮影

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June 28, 2005

ヤブカラシに訪花するヒメハラナガツチバチ

annulataこのところヤブカラシの花をよく見かける。花自体は小さいが、花弁の黄緑色と花盤の朱色がとても美しい。野草にしておくのはもったいないほどである。つる性で生垣や樹木に巻きつき随分高くまで伸びる。天気の良い日に、身長の何倍もの高いところに咲くヤブカラシの花を見上げると、なぜか爽やかな気分になる。

ヤブカラシに魅せられるのは私だけかと思ったら、嬉しいことに昆虫達も同じらしい。アオスジアゲハはヤブカラシが大好きで、頻繁に訪花して吸蜜する。カラスアゲハやクロアゲハ、キマダラセセリなどのチョウもやはりヤブカラシ・ファンらしい。ハチ類にも常連さんがいる。セグロアシナガバチやヒメハラナガツチバチである。

Campsomeris annulata Fabriciusヒメハラナガツチバチはごく普通に見られるツチバチ科昆虫である。ツチバチ類はコガネムシ類の外部寄生蜂として知られる。ツチバチ類の♀は土中のコガネムシ類を探して毒針で刺し、神経を麻痺させてからその周りに室を作り、コガネムシ幼虫の体表面に卵を産みつけて室を閉じる。孵化したツチバチ類幼虫はコガメムシ類幼虫を食べて生育する。ヒメハラナガツチバチ幼虫の寄主はマメコガネやヒメコガネ属の一種とのことだ。ツチバチ類の生態についてはC.P.Clausen(1940) Entomophagous Insectsに詳しく紹介されているらしい。私はこの古典的大著を入手したいと思ってきたが、古書店でいつも誰かに先を越され、買いそびれている。それだけ人気が高い本というわけだ。添付画像は画素数を落してあるので見にくいが、ヒメハラナガツチバチ成虫はヤブカラシの花盤に口吻を刺し入れており、どうやら吸蜜しているらしい。

参考文献:古川晴男・長谷川仁・奥谷禎一編『原色昆虫百科図鑑』(1965) 集英社

写真:ヒメハラナガツチバチ 2005年6月26日 名古屋市で撮影

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カナブンの群れ

kanabun夕方、仕事帰りに近くの公園へ寄ってみた。雑木林に入ると、頭上をブンブンという音をたてながらカナブンが飛んでいる。おかしいなあと思い、周囲を見回して見ると、一本のアベマキの幹にカナブンが数十頭群がっている。樹液が出ているらしく、滲出部に争うように折り重なって潜り込み、近づいても逃げようともしない。他にも樹液が出ているクヌギがあり、そこにも多数のカナブンが集まっていた。名古屋市の中心部でこれだけ多くのカナブンを見たのは久しぶりで、すっかり童心にかえってしまった。子供の頃、窓からいっぱいカナブンやコガネムシが入ってきて部屋中飛び回るので、兄弟でわいわい大騒ぎしたことを思い出す。カナブンは「金蚊」(「文の下に虫」 の漢字が変換できない)と書く。ブンブンと翅音を出すことから、そう呼ばれるらしい。カナブンって、とても楽しい虫だ。私はご機嫌で家路へ向かった。

写真:2005年6月28日 撮影 樹液に群がるRhombrrhina unicolor Motschulskyカナブン

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June 27, 2005

オオコフキコガネ

frater一昨日と昨日、自宅裏の河川敷でMelolontha frater Arrow オオコフキコガネ(コガネムシ科)を見た。オオコフキコガネは河川敷や海岸近くに生息する体長30mm内外の大型コガネムシである。コフキコガネの仲間はいずれも粉をふいたような毛で被われている。自宅周辺では6月から9月まで普通に見られる昆虫だ。灯火に飛来し、玄関先に止まっていることもある。成虫がニセアカシアやクリの葉を後食しているところをよく見かける。

写真:ニセアカシアの枝に静止するオオコフキコガネ  2005年6月26日 名古屋市で撮影

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June 26, 2005

地面に落ちていたタマムシ

tamamushi今朝自宅のすぐ近くの地面(徒歩2分の距離)でタマムシを見つけた。Chrysochroa fulgidissima(Schoenherr)タマムシはヤマトタマムシ、フタスジアヲタマムシとも呼ばれ、Buprestidaeタマムシ科昆虫の代名詞とも思しき存在である。残念ながらタマムシは既に死んでいたが、鞘翅はまばゆいばかりの輝きを放っていた。背面のみならず腹面も青や赤、緑色に光っていた。付近にはタマムシの寄生植物であるエノキ、ケヤキ、ムクノキ(ケヤキ科)、サクラ(バラ科)の大木があるので、恐らくそこから羽化した個体であろうと思われる。成虫はエノキやサクラの葉を後食することが知られている。

タマムシの鞘翅は色素に加えて構造色を持っていて、断面は多層膜構造を為し、表面は無数の穴(点刻)と多角形の鱗模様が見られるそうである。多層膜干渉によって強い光を反射させ、さらに表面の多角形構造により光を拡散させるため、どの角度からもきらきらと輝いて見えるとのことである。本種の構造色については浜松医科大学の針山研究室のHPと、木下修一氏の構造色のHPを御覧いただきたい。

参考文献
針山孝彦ほか(2001)「構造色をつくる甲虫の翅」 Structural Color 2: 22-28
木下修一(2005)『モルフォチョウの蒼い輝き』化学同人

写真:タマムシ成虫 2005年6月26日 名古屋市で撮影

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自転車置場にゴマダラカミキリ

gomadara昨夕買物に行こうとしたら、自転車置場の壁にAnoplophora malasiaca Thomsonゴマダラカミキリが1頭止まっていた。黒色に白色の斑紋が散らばる大きめのカミキリムシで、普通種ながら見つけると子供のように嬉しい。ゴマダラカミキリは「ほしかみきり(星天牛)」ともいわれ、古くから柑橘類の害虫として知られているが、他にクワ、イチジク、ヤナギ類、センダン、ナシ、スズカケ、リンゴ、バラ(*1)、オオバヤシャブシ、ヒメヤシャブシ、ミヤマハンノキ(*2)などの各種樹木に寄生する。自宅周辺では6月から9月にかけて、植栽のシラカバ、プラタナス、カエデの樹上で見ることが多い。成虫はサニーオレンジやみかんを半分に切って与えると、かなり長く生きる。私自身は試したことが無いが、市販のカブト・クワガタ用のゼリーでも飼育できると思う。一緒に朽木を入れておくと簡単に産卵する。

野外では年数の経過した樹木の樹幹部下方に口器で傷をつけ産卵。孵化幼虫は表皮下に食入、2令になると維管束部に、3令で木質部に食入。寄生性天敵として卵寄生蜂のTetrastichus sp.(=Prostocetus sp.)やOoencyrtus sp.が知られているとのことである(*3)。 

参考文献
*1. 高橋雄一(1948)『実験防除 農業害虫篇』養賢堂
*2・ 奥野孝夫・田中寛・木村裕(1977)『原色樹木病害虫図鑑』(保育社)
*3. 『植物防疫講座第3版 害虫・有害動物編』(1998) 日本植物防疫協会

写真:ゴマダラカミキリ成虫  2005年6月25日 名古屋市で撮影

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June 25, 2005

アベリアに寄るツマグロヒョウモン

tsuma6今日は真夏のように気温が高い。少し歩くと汗が出てきて、クーラーのきいた喫茶店で涼みたくなる。こんな日は昆虫も人間と同じだ。直射日光を受けて飛び回るよりも涼しい処で一休みしたいだろう。そう思い、歩いて数分の観察ポントへ行ってみた。そこはアラカシ、マテバシイ、センダンやケヤキの大木の陰になっていて、風通しが良い上にアベリアやヤブカラシの花がいっぱい咲いている。辺りは花の香りでむせかえるほどである。訪花性の昆虫達にとってはまさにオアシスである。気候や時間帯によっては、こうした昆虫の休憩処でじっと待っている方が多くの昆虫に出会えることがある。

待つこと2分。カラスアゲハとアオスジアゲハの登場である。しかし、警戒したのか3-4回旋回すると、姿を消してしまった。次いで一昨日見たばかりのキマダラセセリが現れた。今日は敏捷でカメラを向けるとさっと飛ぶ。数回試みて、ようやく遠くからスナップ写真を撮ることに成功した。クマバチとキチョウもアベリアの花に来たが、逃げ足が速い。そこへツマグロヒョウモンの♂が吸蜜に訪れた。このチョウは飛び方が比較的ゆるやかで、午前11時半という時間帯にもかかわらず、アベリアで吸蜜しているところを撮影できた。今朝もこのチョウを見たのだが、その時はうっかりデジカメをマクロモードにするのを忘れ、全部ピンボケに。リベンジとまでいかないが、かろうじて雪辱を果たした。

ツマグロヒョウモンは今でこそ日本全国ほとんど何処にでもいるチョウになってしまったが、今から20年ぐらい前まではわざわざ三重県尾鷲市まで行かなければ見られないチョウだった。勿論それ以前にも名古屋市内では目撃採集記録はあるにはあった。しかし、名古屋市で繁殖を継続できず、あくまで遇産種扱いであった。ところが、1990年代初めから少しづつ見られるようになり、幼虫越冬が市内でも確認されるようになったのである。
本種の幼虫や蛹は他のヒョウモン類(特にミドリヒョウモンやクモガタヒョウモン)に似ているが、幼虫の背線がやや幅広く赤色が鮮明であること、蛹は背部の5対の突起が鋭く尖り、銀白色の輝きが強いことで識別できる。

tsumatsumap

写真:ツマグロヒョウモン  2005年6月25日 名古屋市で撮影
    同種終令幼虫・蛹   2001年10月9日 同上

参考文献:白水隆・原章(1962)『原色日本蝶類幼虫大図鑑 II』(保育社)

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June 24, 2005

ルリタテハ

kaniska仕事の帰りにチョウトンボの姿が見たくて、池へ寄ってみた。午後6時過ぎという時間帯のせいなのか、それとも繁殖期初期で警戒が強いためなのか、チョウトンボは先日と同じく池の辺の枯木に止まったままだ。少し待ってみたが、飛ぶ様子が無いので、あきらめて帰ろうとしたところ、目の前の手すりにルリタテハが止まった。デジカメを向けるとさっと飛び去るが、すぐに戻ってきて同じ場所に止まる。もう一度カメラを近づけるとまた逃げられる。そんなことを何度も繰り返すうちに、うまくルリタテハを捉えることができた。40回ぐらいシャッターを切ったのだが、その間もじっと静止して動かなかった。昼間の気温の高い時間帯では、ちょっと考えられないことである。

Kanisha canace (Linnaeus, 1763)ルリタテハ(タテハチョウ科)は普通種で自宅周辺では毎年見かけるチョウだが、個体数は比較的少ない。池の周辺にはルリタテハの食餌植物であるサルトリイバラやシオデ(ユリ科)がある。成虫越冬なので晩秋や春先にも成虫を見かけるが、今日見た個体は新鮮なので、恐らく今年出現した成虫だと思う。黒地に水色の帯が爽やかでなかなか素敵なチョウだと思う。

写真:ルリタテハ 2005年6月24日 名古屋市で撮影

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ホルトノキに寄るアメリカシロヒトリ

horuto昨日ホルトノキの側を通ったところ、白い毛足の長い幼虫が目についた。Hyphantria cunea (Drury, 1773)アメリカシロヒトリ中令幼虫である。多食性として知られるアメリカシロヒトリではあるが、ホルトノキまで摂食するとは少々意外であった。ホルトノキ(ホルトノキ科)は暖帯・亜熱帯に分布し公園樹として親しまれている高木である。Dactylioglypha tonica (Meyrick, 1909)スジオビヒメハマキやHerculia pelasgalis (Walker, 1859) アカシマメイガなどの食餌植物ではあるが、概ね虫害の少ない樹木である。今回のアメリカシロヒトリも、今のところ部分的に食害されているだけである。恐らく近くのサクラで発生した幼虫が中令以降分散し、その一部個体がホルトノキを食害しているものと思われる。

horuto2 写真:(上)アメリカシロヒトリ中令幼虫 2005年6月23日 名古屋市で撮影
    (下) ホルトノキの花        2000年7月18日 名古屋市で撮影

桑の木
アメリカシロヒトリの幼虫

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June 23, 2005

キマダラセセリの吸蜜

flavus2flavus3昨日自宅裏の河川敷で、Potanthus flavus flavus(Murray, 1875)キマダラセセリ(セセリチョウ科)がシロツメクサで吸蜜するところを見た。本種は自宅周辺では毎年見かけるセセリチョウだが、ヒメキマダラセセリと同様に個体数は極めて少ない。いつもは敏捷で撮影できなかったが、この日は雨上がりで動きが鈍くどうにか撮影できた。幼虫はイネ科各種植物に寄生する。

写真:キマダラセセリ 2005年6月22日 名古屋市で撮影

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キマダラコヤガ

kimadara5日本の直翅目昆虫は、そのデザインの面白さゆえに根付や刀の鍔、各種工芸品のモチーフにもなり、古くから愛玩されて来た。しかしながら、造形美はともかく、こと色彩美という点では艶やかさに欠け、模様も変化に乏しい。そこをいくと、蛾の色彩美は直翅目の比では無く、変幻自在という点では蝶すら凌駕するほどである。神保一義氏の次の一節は蛾の魅力を余すところなく語っている。

「多数の蛾をひとつひとつよくみると実に翅の色や斑紋が美しく、翅の形が変化に富み、蝶とは別の味わいがあり、加えて種類数が圧倒的に多く、蝶よりも蛾のほうがおもしろいかも知れないとおもった」(神保一義『高山蛾ー高嶺を舞う蛾たち』1989 築地書館)

さて、今日は面白い蛾を自宅裏の河川敷で見た。Emmelia trabealis (Scopoli, 1763) キマダラコヤガ(ヤガ科)である。ヒメドコロ(ヤマノイモ科)の葉に止まっていた。画像で見ると黒っぽく見えるが、前翅長(前翅の付け根から翅頂までの長さ)が10mmほどの小さな蛾で、実際には黄色の方が目立つ。模様も複雑でスカーフにして結びたいような柄である。幼虫の食餌植物はヒルガオ属で、成虫の止まっていた場所近くにはコヒルガオがあった。愛知県では矢作川河川敷での記録があるが、恐らく名古屋市内では珍しいと思う。あいにくネットを持っていなかったので採集していないが、生息を確認できただけで嬉しい。昆虫観察をしていると、いつも自分にとっての新しい発見がある。それが楽しくて昆虫を止められないでいる。


写真:2005年6月23日 名古屋市で撮影 キマダラコヤガ

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ウスイロササキリ

usuiro自宅裏の河川敷にはかなり多くの直翅目昆虫(バッタ、コオロギ、キリギリスなど)が生息している。草叢で最近よく鳴き声を聞くのがConocephalus chinensis (Redtenbacher) ウスイロササキリ(キリギリス科)である。先日からウスイロササキリの写真を撮影したいと思っていたが、近付くとすぐ隠れてしまい、その姿をカメラに収めることができなかった。早朝や夕方遅くだと、比較的動きが弱いのでシャッターチャンスがあるが、そんな時間帯に観察に出ることはむずかしい。そこで今日は雨が小降りになった頃を見計らって河川敷へ下りてみた。変温動物の昆虫は、雨が降ると体温が低下して動きが緩慢だ。気温が上昇すると、瞬く間に敏捷に飛び跳ねるので、その直前を狙う算段である。幸い目論みどおりウスイロササキリはススキの葉上に静止していたので、やっとその姿を捉えることができた。

写真:2005年6月23日 名古屋市で撮影  ウスイロササキリ♀成虫

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June 22, 2005

オオスカシバ初令幼虫

hylas1lアベリアの植え込みの前を夕方通ったら、 Cephonodes hylas hylas (Linnaeus, 1771)オオスカシバ(スズメガ科)を目にした。アベリアの花に吸蜜に来たらしいが、人の気配を察知して飛び去ってしまった。オオスカシバの成虫を見かけるようになってから2週間余り経つ。そろそろ幼虫が出現しているはずだと思い、クチナシ(アカネ科)が植えられている遊歩道へ行ってみた。クチナシのほかに園芸品種のヤエクチナシやコクチナシが植栽されている。オオスカシバの幼虫はクチナシ属ならどれもよく摂食する。食痕を目安に幼虫を探したところ、体長8mmほどのオオスカシバ初令幼虫が葉柄近くの主脈上に静止していた。脱皮直前らしくクチクラが浮いている。初令幼虫は他のスズメガ科幼虫とよく似ていて、肉眼で見る限り特徴が無い。

Gardeniaクチナシといえば、すぐ連想するのがイワカワシジミである。奄美大島以南に生息し、幼虫は果実に入り内側から果肉を摂食する。尾状突起が長く、裏面の深緑色の地色に白と黒の斑紋が洒落ている。シジミチョウとしては大型の方だ。クチナシの乾燥果実は正月のきんとんを美しい黄色に仕上げたい時使う。乾燥したクチナシの実を見るたびに、イワカワシジミを思い出し「これほど見事なクチナシの実なら幼虫がうまく育つのに」と、口惜しく思うのである。

写真:2005年6月22日 名古屋市で撮影
    オオスカシバ初令幼虫(令数は推定) / ヤエクチナシの花

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イタドリを後食するヒメコガネ

kogane今朝散歩中にイタドリの葉を後食するAnomala rufocuprea Motschulsky ヒメコガネ(コガネムシ科)を見つけた。体長約12mmで光沢を帯びた鞘翅が美しい。本種成虫・幼虫はサツマイモ、ラッカセイ、ダイズなどの野菜、畑作物のほかに芝や各種落葉植物を加害することが知られている。自宅周辺ではイタドリ、クズでよく見かけ、葉が穴だらけになるほど加害されることもある。

文献:『植物防疫講座 第3版 害虫・有害動編』 (財)日本植物防疫協会(1998)

写真:イタドリを後食するヒメコガネ 2005年6月22日 名古屋市で撮影

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セグロアシナガバチ

seguro雨上がりの朝、自宅裏の堤防を歩いていると、ヤブカラシの花上でPolistes jadwigae Dalla Torreセグロアシナガチを見た。花蜜を舐めているのはセグロアシナガバチの働きバチらしい。セグロアシナガバチ(スズメバチ科)は、鱗翅目や直翅目昆虫の幼虫を狩り、花蜜や熟した果樹を舐めることが知られている(松浦 1995)。営巣場所は生垣や建物の隙間、下草の間など人里周辺である。

参考文献:松浦誠(1995)『図説 社会性カリバチの生態と進化』(北海道大学図書刊行会)

2005年6月22日 名古屋市で撮影

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June 20, 2005

ナガメの恋

nugosanugosa2夕方いつものように裏の河川敷を散歩したら、Lepidium virginicum L. マメグンバイナズナ(アブラナ科)が目に付いた。ひょっとして?と思い、手で葉をかき分けると、黒地に粋な模様のカメムシが数頭。Eurydema nugosa Motschulsky ナガメ(カメムシ科)である。敏感で撮影しようとすると、さっと飛んで他の植物に止まってしまう。ところがメイティング中のカップルはマメグンバイナズナの茎を昇ったり降りたりして隠れようとする。ナガメ(菜椿象)は大根、白菜の害虫で、アブラナ科各種に寄生する。自宅周辺ではこの時期マメグンバイナズナで見ることが多い。年3化で成虫越冬する。

写真:メイティング中のナガメ 2005年6月20日名古屋市で撮影

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June 19, 2005

ルリチュウレンジ

rurichururichul5-6月は私の好きなクロバ亜科(マダラガ科)の蛾類が出現する時期だが、丁度同じ頃にクロバ亜科蛾類のそっくりさんが登場する。Arge similis (Vollenhoven)ルリチュウレンジ(ミフシハバチ科)である。その名のごとく瑠璃色に光るハバチである。ゆっくりと飛ぶ様はマダラガそっくりだが、マダラガよりもやや直線的な飛び方をするので区別できる。出現期には幅があり、今は成虫も幼虫も見られる。幼虫はツツジやサツキの害虫として古くから知られていて、松村正年(1933)『原色千種昆虫図譜』にも幼虫がツツジを摂食、年3化であることが記されている。

写真: ルリチュウレンジ成虫 2005年5月14日
     同種幼虫         2005年6月16日名古屋市で撮影

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June 17, 2005

白い壁に止まるフサヤガ

fusa3帰宅して鍵を開けようとしたら、ドアの上の白い壁にこげ茶色の蛾が尾端を上げて止まっていた。こんな止まり方をするのはフサヤガかコフサヤガに違いない。早速デジカメを取り出したが、背が届かない位置に静止しているため、うまく撮影できない。前翅長20mm弱ぐらいで、Euteria clarirena Sugi フサヤガらしい。本種は年多化性の蛾で成虫越冬するため、ほぼ一年中見られる普通種である。幼虫はヌルデ、ヤマハゼ、ヤマウルシなどを摂食することが知られている。近似種Eutelia adulatricoides (Mell, 1943) コフサヤガの幼虫はウルシ科以外にもクヌギ科、マンサク科植物を摂食する。自宅付近ではコフサヤガの幼虫は9月にウバメガシで見られることが多い。
fusal5

写真:フサヤガ成虫 2005年6月17日名古屋市で撮影
    ヤマウルシに寄るフサヤガ終令幼虫 2005年5月21日 愛知県鳳来町で撮影

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June 16, 2005

アメリカシロヒトリの幼虫

amehito夕方舗道を歩いていると、街路樹のアメリカフウの葉がひどく食害されているのに気付いた。葉をめくって見ると、体長30mmほどの白い毛虫がいた。アメリカシロヒトリの幼虫だ。本種は戦後北米から日本に侵入し定着した蛾である。北米では年3回発生とのことだが、日本では1970年代半ばぐらいまでは年2回発生であったらしい。

ところが、1991年私が名古屋市港区で本種の存在に気付いた時点では、5月、7月、9月に成虫が出現する年3化性であった。越冬態は蛹である。以来毎年名古屋市で発生を確認しているが、ほぼ年3化性である。年2化性から3化性にいつ頃変化したのかはよくわからない。名古屋市ではプラタナス、アメリカフウ、サクラ、クワを食餌植物にしていることが多いが、終令になると、ネズミモチやシャリンバイのような常緑樹の葉も摂食する。

桑の木

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エルタテハが羽化した!

Ltateha2寝る前にふとエルタテハの蛹のことが気になって、蛹の入っている空き瓶を手に取った。蛹が濡れている。見ると、瓶の底にエルタテハの成虫がいるではないか!この暑さで早々と羽化したのだ。それから大騒ぎ。エルタテハは元気で翅をばたばたさせる。写真を撮りたいが、なかなか撮らせてくれない。瓶越しに撮るので、ガラスが邪魔で結局うまく撮影できなかったが、生きている姿は力動感があって素晴らしい。外は雨で蛾採集にも行けないが、思わぬチョウの羽化で高揚した気分になる。夢見が良さそうだ。

写真:2005年6月15日撮影 飼育羽化したエルタテハ 

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June 15, 2005

チョウトンボの木

chotonbチョウトンボが優雅に舞うのを見たいと思い、夕方チョウトンボのいる池へ寄ってみた。ところが、チョウトンボは全く飛んでいなかった。まだ発生初期で移動分散するには早すぎる。何処に止まっているのだろうかと思って必死に探すうちに、池の辺のリョウブの枯木に目が留まる。枯木の枝先にチョウトンボが数頭止まっていて、あたかも枯木の一部であるかのように見えるではないか!ネットのロッドで木を叩くと、チョウトンボは枝から離れ緩やかに飛ぶが、すぐまた元の枝に戻る。枝上のチョウトンボはゆっくりと黒い翅を開閉する。その度に翅は妖しげな青色の輝きを放つ。時間の経つのも忘れて、チョウトンボに私は見惚れてしまった。デジカメ撮影したチョウトンボの木は私の好きな影絵風。

2005年6月15日 名古屋市で撮影

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June 14, 2005

チョウトンボ発生

chotonbo9今日近くの公園へ散歩に行ったら、池にチョウトンボが少数ながら発生していた。発生初期で警戒して池の辺へは飛んで来ないので、写真は撮れなかった。かわりに池の辺にはコシアキトンボが多数ホバリング飛行をしていたが、これも動きが早すぎて撮影できなかった。池は車がひっきりなしに走る道路沿いにある。発生期後半になると、池を離れてかなり遠くまで飛ぶので、自宅のすぐ側でも見ることができる。仕事帰りの夕方に思いがけずチョウトンボのお出迎えを受けると、思わず現実感を失って棒立ちになり、夕闇に消えるチョウトンボの優雅な姿をいつまでも追ってしまう。
良い写真が撮れるまで、以前撮影したチョウトンボの標本写真を添付する。

写真:チョウトンボ 2000年6月24日名古屋市で撮影 

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エルタテハの蛹

LP2エルタテハの幼虫(山梨県北杜市長坂町産)はこのほど無事に順次蛹化した。蛹の背胸部第3節から背腹部第2節にかけて、銀白色に輝く2対の窓状突起が見られる。銀白色の部分は多層膜を利用した生物反射鏡らしく、蛹化直後よりも2-3日経過してからの方が輝きが増すようである。飼育下ではシラカバの葉や飼育ケースの上部を覆ったティッシュペーパーを足場にして垂蛹となり蛹化したが、自然下では食樹の下の方の枝先で蛹化する。これまでの私自身の観察では、キベリタテハに比べ蛹化場所を求めて遠くまで分散することが少ないように思う。エルタテハの幼虫や前蛹は、標高1300-1500Mの山地では7月上旬まで見られる。

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仕事帰りに見た蛾と蝶

monkuro仕事を終えて自宅近くまで戻ってきたら、既に午後6時半だった。しかし、今日は気温が高い。太陽もまだ沈んでいなかった。何か虫がいるかもしれないと思って、裏の堤防へ向かおうとしたところ、ソメイヨシノの樹幹に前翅長10mmほどの赤っぽい蛾が止まっているではないか。Stigmatophora rhodophila (Walker, 1865) モンクロベニコケガ(ヒトリガ科コケガ亜科)だった。デジカメのシャッターを3回ほど押すと、さっと飛んで近くのプラタナスの樹幹に止まる。急いでプラタナスへ移動し、シャッターを押すとまた近くの別の木へと飛ぶ。そんなことを何度も繰り返しながら、なんとか撮影に成功した。

コケガ亜科蛾類幼虫は苔や地衣類を摂食するとされているが、なかには食葉性のコケガもいる。ヒメホシキコケガ、スカシコケガは食葉性だし、ウスバフタホシコケガも食葉性らしい(Phasmid 未発表)。他にも食苔性でない「コケガ」はいるものと思われる。これら食葉性の種はコケガ亜科からはずすべきだと私は考える。

beni7気を良くした私が堤防へ下りると、チョウが飛んでいる。ベニシジミとヤマトシジミだ。時間は午後6時45分。ベニシジミを撮影しようと近寄ると、機敏に飛ぶ。時間が遅くても気温が高ければチョウは飛ぶ。何度かシャッターチャンスを逃しながらも、下草に止まったところをやっと撮影する。ベニシジミは普通種ながら愛らしいチョウだ。真っ赤な太陽が地平線に沈まんとする中、私は満ち足りた気持ちで家へ戻った。

写真:モンクロベニコケガとベニシジミ 2005年6月13日名古屋市で撮影

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June 12, 2005

自然界の明暗

flykiashi4夜眠る前に私は幼虫と蛹の世話をするのが日課だ。今夜キアシドクガの蛹(北杜市白州町産)が入っている容器を開けたとたん、蛹の横に乳白色のぶよぶよしたものが動いている。なんとヤドリバエの幼虫が蛹から脱出している。あわててデジカメを取り出し撮影。ヤドリバエ幼虫は蛹化場所を求めてシャーレの中を動き回っている。自然状態では寄主から脱出したヤドリバエ老熟幼虫は土中へ潜って囲蛹になる。今のところ脱出したヤドリバエは1個体だけだが、まだ後1-2個体ほど脱出するのかもしれない。寄生性昆虫が寄主から脱出する様は凄まじく衝撃的だ。幼虫屋ならしばしば目の当たりにする自然界の過酷さである。ショックを受けつつ、もう一つの長坂町産の蛹が気になり飼育容器を見たところ、驚いたことに早々と羽化しているではないか!まだ翅が伸びきっていない♀成虫だ。

そういえば、ヨコヅナサシガメが初めて愛知県で発見された頃、ミドリシジミの幼虫を与えてヨコヅナサシガメ幼虫を飼育したチョウ屋がいた。「ミドリシジミを餌にするなんて、もったいない」と私が責めると、「美麗種が普通種に殺られるなんて自然界の常」と一蹴。当時私はふんだんに入手できたオオミノガ幼虫を与えてヨコヅナサシガメ越冬幼虫を飼育した。ところが、皮肉なことに昨今オオミノガはオオミノガヤドリバエの寄生により激減している。どうやら私の方が「もったいないことをした」と叱られそうである。

写真:205年6月12日撮影   キアシドクガ蛹(北杜市白州町産)から脱出したヤドリバエ幼虫
                  羽化したての北杜市長坂町産キアシドクガ♀
   

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June 11, 2005

雨の日に見た蛾

kinokawa今朝から小雨。それでも私はデジカメを持って雨の中を飛び出した。雨に濡れて木々の緑色が鮮やかだ。数メートル歩くか歩かないうちに、ソメイヨシノの樹幹に灰緑色の蛾が止まっていることに気づいた。丁度私の目の高さの位置にBlenina senex (Butler, 1878)キノカワガがいた。この蛾はその和名のごとく木の皮そっくりで、隠蔽擬態の代表格として知られる。写真の個体は♂でやや白っぽいが、もっと緑茶色が濃くて苔そっくりの色彩の個体もいる。キノカワガは成虫で越冬するので、冬季にも見ることがある。幼虫の食草としてはカキノキ、マメガキ、トキワガキ(以上 カキノキ科)、シンジュ(ニガキ科)、サクラ(バラ科)が記録されている(宮田彬, 1983 『蛾類生態便覧』 昭和堂印刷出版)。自宅周辺にはシンジュが多く、幼虫はシンジュを摂食している。

写真:キノカワガ 2005年6月11日 名古屋市で撮影

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世界のホソガのカタログ

prinsベルギー在住のウィリー・ド・プラン&ユラーテ・ド・プラン御夫妻がこのほど世界のホソガ科蛾類総目録をApollo Booksから上梓した。書名は "World Catalogue of Insects Volume 6 Gracillariidae (Lepidoptera)"。World Catalogue of Insects シリーズは、Vol.1:Hydraenidae. (Coleoptera.)ダルマガムシ科(鞘翅目)、Vol.3: Dytiscidae. (Coleoptera) ガムシ上科(鞘翅目)、 Vol.4: Pterophoroidea & Alucitidae. (Lepidoptera)トリバガ上科・ニジュウシトリバガ科(鱗翅目)、Vol.5 Tortricidae. (Lepidoptera) ハマキガ科(鱗翅目)が出ており、今回のGracillariidae (Lepidoptera)ホソガ科で第5冊目。マイナーな昆虫の方が先に出るところが面白い。

御夫妻は世界中のホソガ科蛾類の記載論文に目を通し、現在の分類体系に基き整理し、ホソガ科蛾類98属1809種及びシノニム517種をリストアップしている。学名、タイプ・ローカリテイ、タイプ標本保管先、寄主植物、分布、生態などの基礎情報が種毎にコンパクトにまとめられている。分類変更のあった種リスト、文献リスト、寄生性天敵の索引、学名索引(有効名は太字になっている)も付けらている。ただ図版が全く無いのが残念である。もっとも、カラー図版を付ければ、価格の方は倍以上に跳ね上がると思うが.....

ホソガ科蛾類は開張20mmに満たない小蛾のグループで、体翅が細長く、後翅に長い縁毛があるのが特徴である。幼虫は大半が潜葉性であるため、種名が寄主植物に因む命名になっていることが多く、寄主植物がわかれば、種名が特定されやすい。日本では久万田敏夫先生が167種のホソガ科蛾類を記載しておられる。これはかのMeyrickに次ぐ記載数の多さである。その昔名城大学の有田豊研究室でホソガ科蛾類のコレクションを久万田敏夫先生とご一緒に見たことがある。見事に展翅されたホソガの標本の繊細な美しさは今もなお忘れることができない。

【題名】World Catalogue of Insects Vol.6:Gracillariidae. (Lepidoptera)
【著者】Willy de Prins & Jurate de Prins
【出版】Apollo Books
  http://www.apollobooks.com/
【発行】2005年5月23日
【ISBN】87-88757-64-1
【判型】25x17cm、741頁 ハードカバー
【価格】DKK 960.00(日本円にして約17000円)

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ブドウスカシクロバの幼虫

budonobudo私は落葉ツル性植物が好きで、青々した葉やツルを見ると元気になる。特にブドウ科植物は大のお気に入りだ。裏の堤防にはノブドウとエビヅルが生えている。先日ぼんやりとノブドウを見ていたら、葉がひどく食害されている。何気なく葉をめくってみたら、体長10mmほどの黄色の幼虫がいた。ブドウスカシクロバ(マダラガ科)の幼虫である。本種幼虫はブドウ、ノブドウ、エビヅルなどブドウ科植物を摂食する。成虫は年1化で、平地では5月に出現。黒くハエのように見えるが、ハエよりもゆっくり飛ぶのでわかる。黒い翅は青緑色に輝き、小型ながらシックな蛾である。幼虫は6月に出現し、7月上旬までに営繭する。

写真:ブドウスカシクロバ幼虫と食害されたノブドウ 2005年6月8日 名古屋市で撮影

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June 09, 2005

ヒメジオンで吸蜜するキタテハ

kitateha2昨日裏の堤防を散歩中、茶色のタテハチョウがヒメジオンの花に止まっているのを見つけた。遠目にはツマグロヒョウモン♂のように見えたが、近寄ってよく見るとキタテハであった。キタテハは成虫で越冬し、冬季や春先にも見られるが、私が見たのは新鮮な個体で、明らかに今年羽化した新成虫だった。昔は自宅付近でよく見かけるタテハチョウだったが、最近はめっきり少なくなってきている。食草のカナムグラは堤防に普通に生えているし、採集圧も考えられないので、個体数減少の理由はどうもよくわからない。

不思議なもので、キタテハが少なくなると、最近はツマグロヒョウモンよりもキタテハが飛んでいるところを見る方が嬉しくなる。希少性への憧れは人間の根源的欲求であろう。稀少価値は、かってカール・マルクスの商品価値論でも論議を呼んだ。希少性の追及にはそれだけの時間と労力を要すると考えれば、広い意味での「労働価値説」とそれほど相矛盾するわけではないと思う。

写真:キタテハ  2005年6月8日 名古屋市で撮影

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June 08, 2005

キアシドクガの幼虫と蛹

kiashibkiashifkiashi甲斐路の旅で採集したキアシドクガ終令幼虫が今朝蛹化した。その昔この幼虫を長野県の木曽駒高原で初めて見た時、ケンモン亜科の幼虫だと思い込み、食草と一緒に幼虫を持ち帰った。ところが、幼虫は意外に大食漢で、たちまち食草が切れてしまった。そのころは植物の知識も無かったので、食草クマノミズキをクリだとばかり思い、クリの葉を与えた。幼虫はクリの葉を摂食せず、蛹化することなく斃死してしまった。1987年5月31日のことだった。

同年6月にかねてより待ち望んでいた『日本産蛾類生態図鑑』が講談社から刊行された。同書の図版によって、ケンモンの仲間と思い込んでいた幼虫が実はドクガ科に属するキアシドクガであることを知った。本種の蛹(前掲書と同一個体?)の写真は、中村正直(1987)『蝶や蛾の蛹の形態』(ニューサイエンス社)の表紙を飾っている。どんなに派手で美しい幼虫でも、蛹になるとジミで平凡な形になることが多い。キアシドクガの蛹は黄色と黒色の模様が面白く、幼虫時代の面影を残している珍しい例といえよう。

写真: キアシドクガ蛹  2005年6月8日
    キアシドクガ幼虫 2005年6月5日 山梨県北杜市白州町尾白川渓谷で撮影 
    

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June 07, 2005

白樺林を飛ぶウスバシロチョウ

清春芸術村でエルタテハ幼虫を堪能した後、小淵沢方面へ引き返し、北杜市大泉町の八ヶ岳泉郷のコテージで一泊した。随分長い間来たことが無かったので、その間にすっかり様子が変わってしまっていた。レストランも以前はもっと多くあったが、現在は閉店になり、フロントのある建物に和洋一つづつあるだけだった。和食レストラン四季亭で夕食。料理は悪くなかった。夕食後、売店で翌日の朝食材料を調達する。八ヶ岳高原牛乳やパンも以前と同じように安かった。コテージには、調理器具、調理用具、食器、ナイフ、フォークは全部そろっていて、自炊できるようになっている。昔は食器もブランドものだったが、さすが最近は普通の製品である。コテージは老朽化した狭いタイプもあるので、割高だがなるべく新しいタイプを頼む方が無難である。造りもかなりバラエティがあるので、予約時に具体的に「ロフトがあるタイプ」とか、「○○区がいい」という風に指定した方がいいと思う。また、区画によって植えられている樹木も異なるようだ。

glacialisコテージの周りはシラカバ林だったが、シラカバが多すぎてかえって幼虫は簡単に見つからなかった。そのかわりといっては何だが、コテージの周りにはウスバシロチョウがゆるやかに飛んでいた。まだ新鮮な個体だった。ボロだがダイミョウセセリも飛んでいた。小淵沢界隈ではこの時期ウスバシロチョウがあちこちで見られる。シラカバ林を飛ぶウスバシロチョウというのも何とも粋なものだ。

写真:タンポポに寄るウスバシロチョウ 2005年6月5日撮影

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ルオーの丘とエルタテハ

先週末甲斐駒ケ岳が見える山梨県へ旅に出た。こんな天候不順な時期にわざわざ山を見に行くとは酔狂だと思われるかもしれないが、これにはちょっとした経緯があって・・・・80歳になる母は甲斐駒ケ岳に格別の思いを抱いている。それは母の兄が「甲斐駒ケ岳ぎりぎりに田水張る」という俳句を残したからである。ところが、母はこの年になるまで甲斐駒ケ岳と木曽駒ケ岳を同じ山だと思っていたらしい。駒ケ岳なる山があって、木曽側、甲斐側で呼称が異なると思っていたそうな。こんな天然ボケの母には地図で説明するより、甲斐駒ケ岳を実際に見てもらおう、そう思って計画した旅である。この俳句に詠まれているように甲斐駒が見える場所があるのかどうか悩ましいところであったが、ニフティの「山の展望と地図のフォーラム」で質問したところ、EOSさんから絶景ポイントをお教え頂いた。EOSさんに感謝!

名古屋を朝早く発った私達は中央道をゆっくり走り諏訪湖SAで昼食を楽しんだ後、諏訪大社本宮を訪れて甲斐駒がよく見えるようにご神体のお山を参拝。それからオオムラサキの里として有名な北杜市長坂町へ。穏やかな田園地帯と美しく聳え立つ甲斐駒ケ岳の眺望が得られるはずであったが、あいにく山嶺は雲で覆われてうっすらと甲斐駒と鳳凰三山のシルエットが見えるだけであった。

atelierやむなく甲斐駒展望をあきらめ、同町にある清春芸術村に立ち寄った。武者小路実篤、滋賀直哉、梅原龍三郎らの白樺派の作家達が夢見た美術館を清春尋常小学校跡地に建設したもので、敷地内にはアトリエ「ラ・リューシュ」、清春白樺美術館、ルオー礼拝堂、梅原龍三郎のアトリエ、レストラン「パレット」、庭には洒落た彫刻が幾つか置いてある。小さなルオー礼拝堂はパイプオルガンの荘厳な音色が響き、壁面にはルオーのモノクロリトグラフ、明かり窓にはルオー製作のステンドグラスが嵌め込まれていた。美術館に展示されているセザンヌ、ロダン、ピカソ、ルオー、武者小路実篤、梅原龍三郎の作品はいずれもセンスの良いものばかり。特にジュルジュ・ルオーの作品は充実していた。また、同人誌「白樺」のバックナンバーがショーケースに展示されていた。作品数はそれほど多くないが、白樺派のイメージを確かな目で膨らませたコレクションであった。

l敷地内にはシラカバが多く植えられ、赤いレンガ張りと調和してとてもお洒落だった。青々としたシラカバの葉をぼんやりと眺めていると、なんとエルタテハ終令幼虫が葉上に台座を作っているではないか!思いがけない発見ですっかり眠っていた虫屋魂が突如甦り、私は別人のように嬉々としてエルタテハ幼虫探し。おかげで幾頭か見つけることができた。エルタテハ幼虫はシラカバの垂れ下がる雄花にそっくりだった。ついでに水路にキアシドクガ終令幼虫が落ちていたので、拾いあげた。これまでにも木曽駒高原や御岳高原のシラカバやバッコヤナギでエルタテハの幼虫を観察したことがあるが、ルオーの絵画を見ながらの幼虫観察は最高だった。

写真:清春芸術村のラ・ルーシュとエルタテハ終令幼虫 2005年6月4日撮影

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June 02, 2005

雨の日の虫屋はブルー

remotapruni今日は雨降り。こんな日には虫屋は虫の観察ができずに鬱々とした気分になる。雨の降り始めには、モンシロチョウやスジグロシロチョウは飛ぶ。ヒカゲチョウの仲間は少々の雨でも飛ぶし、蛾も灯火に飛来する。しかし、今日のようによく降ると、蛾の飛来は期待できない。幼虫観察なら出来ないこともないが、葉裏に上手に隠れられたり、薄暗いためデジカメのピントも合いにくく、成果はいまひとつ。雨に濡れたデジカメの手入れも大変だ。

ふかーい溜息をつきながら、夕方ふと部屋の片隅に置いた飼育箱を眺めると、何やら動くものが見えるではないか!その瞬間、ふつふつと喜びが湧きあがり、体中が熱くなる。シロシタホタルガNeochalcosia remota(Walker, 1854)が羽化したのだ。オス二頭がしきりに触角を動かしている。野外個体より一回り小さいが、居ながらにして美しい成虫の姿が見られるのだから、この際贅沢は言えない。羽化したばかりらしく、ほとんど動かない。早速デジカメで撮影したが、嬉しさで手が震えピントが甘くなってしまった。

シロシタホタルガはホタルガとよく似ている。発生期も両種が重なることがあり、野外で飛んでいると、見分けがつきにくい。シロシタホタルガの背腹部や背胸部はホタルガよりも青緑色が顕著で、飛んでいる時はホタルガよりも幾分青っぽく見える。実際に採集して後翅を調べれば、白いので識別は明瞭だ。裏面の写真を撮影することができれば相違が一目瞭然だが、メスが羽化したら交配させるつもりなので、残念ながらできない。

ところで、ここ数年蛾界ではちょっとした「幼虫ブーム」が起きている。ブームには良質のデジカメの普及で写真撮影が容易になったこととも相まって、深刻な不況の影響が案外大きいのではないかと私は考える。確かに成虫屋には標本を作製、同定の上、未記載種なら記載する喜びもあるし、未記録種や稀種なら記録発表も出来る。美麗種であれば、標本箱へ並べて一人悦にいったり、蛾友に自慢したり、ホームページやブログで公開する楽しみ方もある。しかし、そうそう未記載種や未記録種がころがっている訳ではないから、それを可能にするためには、かなりの回数採集する必要がある。昨今では成虫で新しい発見を見出す確率は低い。

ところが幼虫屋の場合には、新しい発見が多い。未発見の蛾類幼虫、カラーで図示されていない幼虫はたくさんある。食草の知見もチョウに比べたら、不明の部分が多い。一度の採集で得られた幼虫は、1)食草を突き止める、2)ペットを飼うように世話をする、3)生育の様子を観察、撮影、記録考察する、4)無事蛹化にこぎつける達成感、5)羽化を待つ期待感、6)羽化の感動を享受、7)羽化成虫の同定、8)発見幼虫の発表。不幸にして寄生性天敵が羽化した時には、9)寄生種の同定、10)寄生性天敵の発表、などなど、文字通り10倍もの楽しみ方ができるではないか。恐らく不況の影響で遠出の採集ができにくいこともあって、経済効率の良い幼虫研究が盛んになっているのではないかと私は見ている。

追記:
今見たら、リンゴハマキクロバ♂も飼育羽化していた。マダラガの羽化ラッシュ。

写真:2005年6月2日撮影
羽化したばかりのシロシタホタルガ♂と繭 
飼育箱の壁面に止まるリンゴハマキクロバ♂

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