« 桑の木 | Main | ルオーの丘とエルタテハ »

June 02, 2005

雨の日の虫屋はブルー

remotapruni今日は雨降り。こんな日には虫屋は虫の観察ができずに鬱々とした気分になる。雨の降り始めには、モンシロチョウやスジグロシロチョウは飛ぶ。ヒカゲチョウの仲間は少々の雨でも飛ぶし、蛾も灯火に飛来する。しかし、今日のようによく降ると、蛾の飛来は期待できない。幼虫観察なら出来ないこともないが、葉裏に上手に隠れられたり、薄暗いためデジカメのピントも合いにくく、成果はいまひとつ。雨に濡れたデジカメの手入れも大変だ。

ふかーい溜息をつきながら、夕方ふと部屋の片隅に置いた飼育箱を眺めると、何やら動くものが見えるではないか!その瞬間、ふつふつと喜びが湧きあがり、体中が熱くなる。シロシタホタルガNeochalcosia remota(Walker, 1854)が羽化したのだ。オス二頭がしきりに触角を動かしている。野外個体より一回り小さいが、居ながらにして美しい成虫の姿が見られるのだから、この際贅沢は言えない。羽化したばかりらしく、ほとんど動かない。早速デジカメで撮影したが、嬉しさで手が震えピントが甘くなってしまった。

シロシタホタルガはホタルガとよく似ている。発生期も両種が重なることがあり、野外で飛んでいると、見分けがつきにくい。シロシタホタルガの背腹部や背胸部はホタルガよりも青緑色が顕著で、飛んでいる時はホタルガよりも幾分青っぽく見える。実際に採集して後翅を調べれば、白いので識別は明瞭だ。裏面の写真を撮影することができれば相違が一目瞭然だが、メスが羽化したら交配させるつもりなので、残念ながらできない。

ところで、ここ数年蛾界ではちょっとした「幼虫ブーム」が起きている。ブームには良質のデジカメの普及で写真撮影が容易になったこととも相まって、深刻な不況の影響が案外大きいのではないかと私は考える。確かに成虫屋には標本を作製、同定の上、未記載種なら記載する喜びもあるし、未記録種や稀種なら記録発表も出来る。美麗種であれば、標本箱へ並べて一人悦にいったり、蛾友に自慢したり、ホームページやブログで公開する楽しみ方もある。しかし、そうそう未記載種や未記録種がころがっている訳ではないから、それを可能にするためには、かなりの回数採集する必要がある。昨今では成虫で新しい発見を見出す確率は低い。

ところが幼虫屋の場合には、新しい発見が多い。未発見の蛾類幼虫、カラーで図示されていない幼虫はたくさんある。食草の知見もチョウに比べたら、不明の部分が多い。一度の採集で得られた幼虫は、1)食草を突き止める、2)ペットを飼うように世話をする、3)生育の様子を観察、撮影、記録考察する、4)無事蛹化にこぎつける達成感、5)羽化を待つ期待感、6)羽化の感動を享受、7)羽化成虫の同定、8)発見幼虫の発表。不幸にして寄生性天敵が羽化した時には、9)寄生種の同定、10)寄生性天敵の発表、などなど、文字通り10倍もの楽しみ方ができるではないか。恐らく不況の影響で遠出の採集ができにくいこともあって、経済効率の良い幼虫研究が盛んになっているのではないかと私は見ている。

追記:
今見たら、リンゴハマキクロバ♂も飼育羽化していた。マダラガの羽化ラッシュ。

写真:2005年6月2日撮影
羽化したばかりのシロシタホタルガ♂と繭 
飼育箱の壁面に止まるリンゴハマキクロバ♂

|

« 桑の木 | Main | ルオーの丘とエルタテハ »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 雨の日の虫屋はブルー:

« 桑の木 | Main | ルオーの丘とエルタテハ »