飼育中の幼虫(ドクガ科・イラガ科)
しばらくブログの方をさぼっているうちに飼育中の蛾類幼虫の画像が増えてしまった。いずれも名古屋市内でも見られるような普通種だ。まずPhrixolepia sericea Butler, 1877 アカイラガ(イラガ科)であるが、これは10月9日愛知県瀬戸市定光寺町でイヌシデ(カバノキ科)の葉上より採集した終令幼虫である。多食性で、チャノキ(ツバキ科)、ウメ、モモ、サクラ、(以上バラ科)、クリ、クヌギ、コナラ(以上ブナ科)、カキノキ(以上カキノキ科)、コハウチハカエデ(カエデ科)、ネジキ(ツツジ科)、ダイコン(アブラナ科)、サツマイモ(ヒルガオ科)などが食餌植物である。成虫は保育社の幼虫図鑑の写真などを見ると、いかにも汚らしく見えるが、羽化したばかりの個体は白い模様が映えて意外にお洒落である。総じて展翅した蛾は実際に静止している姿よりもずっと写真映りが悪くて気の毒である。
Calliteara argentata (Butler, 1881) スギドクガ(ドクガ科)の幼虫は、同じく10月9日定光寺を散策中に上から糸を引いて目の前に落ちてきたものである。体長約10mmで脱皮直後だったようだ。現在は体色が黄緑色になってきている。早春に令数の進んだ幼虫を見かけるところから、名古屋周辺では恐らく幼虫越冬と思われる。スギ(スギ科)、サワラ、ヒノキ(以上ヒノキ科)が食餌植物として記録されている。自宅周辺のヒマラヤスギにも発生するが、マツカレハのように大発生をしたことは今のところ無い。
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Orgyia thyellina Butler, 1881 ヒメシロモンドクガ(ドクガ科)の幼虫は、9月30日に愛知県豊田市猿投山麓でフジ(マメ科)から採集したもの。採集時体長8mmぐらいだったが、その後2回の脱皮を経て先程終令幼虫になったばかりである。第1-第4腹節背上のブラシ状毛束には変異があるようだが、今回の飼育個体は亜終令までが黒色で、終令になって白色に変化した。多食性で、リンゴ、ソメイヨシノ、ウメ、スモモ、ナシ、ナガバモミジイチゴ(以上バラ科)、クリンソウ(サクラソウ科)、カキノキ(カキノキ科)、ハンノキ(カバノキ科)、イタドリ、オオイヌタデ(タデ科)などに寄生する。
なお、同属のOrgyia triangularis Nomura, 1938 ヤクシマドクガは照葉樹林帯の蛾で、幼虫はサカキ、ヒサカキ(以上ツバキ科)、ヤマモモ(ヤマモモ科)を摂食する。ヒメシロモンドクガに似るが、第1-4腹節背上の毛束が橙黄色で、第1-3腹節背上の地色は黒色、第4-8腹節背上の地色は暗灰色で、全体に渋い色彩である。写真の個体は『蛾類通信 171:375-376』(1992)に発表したものと同じだが、当時モノクロ印刷だったのでカラー写真をおまけに添付する。
写真:アカイラガ終令幼虫(愛知県瀬戸市定光寺町産) 2005年10月9日 撮影
スギドクガ中令幼虫(同上) 同上
ヒメシロモンドクガ亜終令、終令幼虫(豊田市猿投町産) 2005年10月13日撮影
ヤクシマドクガ終令幼虫(愛知県南設楽郡鳳来町産) 1992年6月上旬 岡田正哉氏撮影
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Comments
こんにちは。
私も幼虫は好きなのですが、ドクガ系はちょっと・・・。もともとは、庭に湧く幼虫がチョウになるのかガになるのか。毒があるのか無いのかが知りたくて、ちょっとだけ調べ始めたところです。オビカレハの繭を集めて糸紡ぎなんぞをしたこともありますが。
そんなころ、「幼虫図鑑」http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/youtyuu/
ができ、時々顔を出させてもらっているのですが、なにぶんにも自然観察好きの常連がそれぞれ手持ちの図鑑で幼虫の鑑定をしているので、不明幼虫がたくさん貯まってきています。もし、よろしければ、一度見ていただけないでしょうか。ずうずうしいとは思いますが、虫屋さんに見ていただけたら、心強いと思い思いきってお願いしたしだいです。
Posted by: ちたば | October 13, 2005 at 10:11 PM
ちたばさん、こんばんは。旅行に出ていまして、コメントへのお返事が遅くなり、失礼致しました。「幼虫図鑑」のサイトの件ですが、私の手には負えないと思います。実は以前そのサイトの写真に明らかな誤同定があり指摘したことがあったのですが、誤同定はそのまま放置されました。確かに、誰ともわからない素人から「誤同定ですよ」と指摘され、それだけで「はいはい、そうですか」と即納得できないですよね。私はその時「しかるべき誤同定の根拠を示さないと、相手を説得できない」ことを痛感しました。市販の図鑑や現在入手できる文献にも掲載されていないので、私自身の飼育記録や写真を提示せねば、相手を説得できないわけです。蛾の幼虫に関する既存の知見には不完全な部分が多く、市販の蛾類幼虫図鑑は一応の目安にはなっても、決してバイブルではありません。誤りや、不十分な情報も少なからず掲載されています。その誤りを正したり、不十分な情報を補足するには、それなりの証拠そろえ(過去の文献の洗い出しと新データの取り揃え)が必要ですが、私にはそれだけの時間的余裕が今ありません。それで、私は自分のブログで断片的ながら新知見を公表することにしたのです。まだまだ権威主義が蔓延っていて、図鑑に書かれていることを正すのは大変です。
Posted by: Phasmid | October 17, 2005 at 01:26 AM
ありがとうございます。
やはり、地道な飼育と観察、そして記録ですね。機会を捕らえて頑張ってみます。
Posted by: ちたば | October 17, 2005 at 08:24 PM