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February 26, 2006

早春の蛾オカモトトゲエダシャク

okamoto022606bokamoto051001a名古屋は今朝から雨だった。連日のようにフユシャク観察で雑木林を歩きまわっていた私だが、この雨には内心ほっとした。きっと天がお与え下された休息なのだろう。今日は虫のことは何もしないで過ごそうと思った。午後になって雨の中を近くのコンビニまで買物に出た。その帰りがけに、とあるマンションの白い壁を何気なく見たところ、十字状の細い枯れ枝のようなものが目に止まった。「Apochimaだあ」、その瞬間、喜びと興奮が全身に走った。よく見ると、それはクワトゲエダシャクでもキイロトゲエダシャクでも無く、普通のApochima juglansiaria (Graeser, 1889) オカモトトゲエダシャクのオス成虫だった。しかし、自宅近くの自然度が極めて低い環境下で、しかも交通量の多い道路沿いで本種が見られるとは思っても見なかった。「これは拾いものをした。早速デジカメで写真を撮ろう」と思ったのだが、休息日のつもりだったので、デジカメは家へ置いてきてしまった。取りに帰っている間に蛾が逃げてしまわないか心配しながら家へ走って戻って来ると、丁度蛾のすぐ前を車が通過した。もう駄目かと思ったが、雨が幸いして静止したままであった。何とか手ぶれせずに撮影することができた。

日本に生息するApochima属はオカモトトゲエダシャク、キイロトゲエダシャク、クワトゲエダシャクの三種で、共に早春に出現する年1化のシャクガである。オカモトトゲエダシャクは多食性として知られるが、私はサクラ、ハギ、クヌギ、エノキで幼虫を採集している。クワトゲエダシャクは明治中期から昭和初期にかけて時に大発生し、桑に深刻な被害を与える害虫とされたが、日本の養蚕が衰退し、桑畑が減少する昨今では稀種とされている。私はキイロトゲエダシャク幼虫を飼育した折に、クワトゲエダシャク幼虫の文献を集めてみたが、そこに図示されているクワトゲエダシャクの幼虫はキイロトゲエダシャク幼虫と形態的によく似ている。佐藤(2003)にも述べられているように、Apochima3種の「○○トゲエダシャク」という和名は幼虫背上の突起に由来するのではないかと思われるほど3種の幼虫には類似性があることは大変興味深い。もっとも、キイロトゲエダシャクの和名は、幼虫が未知の段階で既に付与されていたのだから、成虫形態から幼虫形態を推測する優れた予見性があったといわざるをえない。

写真:オカモトトゲエダシャク ♂  2006年2月26日 名古屋市で撮影
    同種幼虫           2001年5月10日 瀬戸市定光町で撮影

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February 18, 2006

トビモンオオエダシャクの出現

tobimonトビモンオオエダシャクは早春に見られる大型シャクガで、腹面はふさふさとした暖かそうな毛で覆われている。これまで何度も3月中旬頃に本種を見ているが、今日たまたま名古屋市北部の雑木林へ行ったところ、コナラの樹幹に羽化したばかりと思われる本種のメスが止まっていることに気づいた。その個体は大変惜しいことに羽化失敗個体で、左右の翅が十分伸びきらずに変形していた。それにしても気の早いメスである。オスもまだ近くで出現していないらしく、未交尾のようだ。本種の幼虫は多食性で頭部に大きな一対の角があるシャクトリムシである。肥後熊本藩主細川重賢の「昆虫胥化図」にも本種幼虫が図示されている。

写真:Biston robustus robustus Butler, 1879 トビモンオオエダシャク 2006年2月18日 名古屋市で撮影

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February 17, 2006

小雨の中のフユシャク観察

shirofu021606bshirofu021606c昨日は朝から雨だった。しかし、少々の雨ならかえって蛾観察には好都合とばかり、いつもの雑木林へ足を運んでしまった。乾燥していた樹木の木肌は雨粒で黒々と輝き、苔や地衣類は潤いを取り戻し、木は空高く伸び息づいているようだった。濡れた枯葉を踏みしめながら林内を歩いていると、近くの樹幹からひらひらとシロフフユエダシャクが飛び立った。雨天とはいえ、気温が比較的高いせいか、かなり遠くまで飛翔する。晴天の日には食樹であるクヌギ、コナラ、アベマキの樹幹にシロフフユエダシャクのオスは止まっていることが多い。しかし、雨の日は食樹にこだわらずに、各種樹木の幹の雨が直接かかりくい場所に止まっていた。斜めに傾いた木の裏側には3-4個体かたまって見られることもあった。同じ木の幹でも雨で濡れていない側面には必ずといってよいほど2-3個体のシロフフユエダシャクが樹皮に寄り添うようにして止まっていた。おかげで晴天時よりも容易にオスを30個体ほど見つけることができた。ただし、周囲が薄暗いので、メスの方は見つからなかった。メス観察には晴天の方が良いようだ。

写真:シャシャンボとコナラ樹幹に静止するシロフフユエダシャク オス 2006年2月16日 名古屋市で撮影

シロフフユエダシャク

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February 14, 2006

クロテンフユシャク

kuroten021406ckuroten021406d昨年12月以来、冬期に出現するフユシャクに魅せられ、夢中でフユシャクを求めて雑木林を駆け回ってしまった。ふと気づくと、いつの間にか「春の前触れ」とも思しきシモフリトゲエダシャクが出現していた。昨年から今年にかけて、クロスジフユエダシャク、ウスバフユシャク、コナミフユナミシャク、チャバネフユエダシャク、シロフフユエダシャク、シモフリトゲエダシャクの6種のフユシャクガを名古屋市内の雑木林で観察した。しかし、クロテンフユシャク、シロオビフユシャク、シロトゲエダシャクなどの種を今年未だ見ていなかった。これらのフユシャクも市内に生息しているはずである。どうして成虫が見られないのか気になっていた。探し方に何か問題があるのではないかと思ったりもした。灯火採集や糖蜜採集では、たとえ成虫が得られても、自然状態の生態観察ができないので、今ひとつ面白味に欠ける。やはり生態観察派としては、自分の足で歩いて自分の眼で探し出したいところだ。

今日は16℃を上回る暖かさで、午前中は晴れ、午後から曇り後雨という蛾観察には最適の天候であった。蝶観察にはカラリと晴れた気温の高い日が良いが、蛾観察は湿気のある今にも雨が降りそうな天候や小雨まじりが一番良い。蝶屋なら泣きたくなるような天候は蛾屋にとっては最高の天候になる。私は蝶も蛾も好きなので、どちらでも構わないが、冬期は蝶が少ないので自ずから蛾観察がメインになる。昼頃いつもの雑木林を散策していると、多数のフユシャクが空高く飛ぶ姿が目についた。種名を確認したいと思って後を追うが、気温が高いせいか飛翔速度が早く、すぐ姿を見失ってしまった。そのうちに、ふとソメイヨシノの大木に目を向けると、翅を閉じた白いフユシャクが寝際に止まっていた。それは土中から羽化したばかりのInurois membranaria (Christoph, 1881) クロテンフユシャクだった。生息しているに違いないと思っていた種をこの目で確認できたことが嬉しかった。

写真:羽化したばかりのクロテンフユシャク♂ 2006年2月14日 名古屋市で撮影

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February 12, 2006

シモフリトゲエダシャク

shimofuri021206b今日は朝から晴天だった。風は昨日より強く気温もやや低めであったが、フユシャク日和であることに変わりない。午前10時頃名古屋市北部の雑木林へフユシャク観察に出かけた。雑木林へ着くと、思ったよりも暖かく、今にもフユシャクが飛び出しそうな気配がした。昨日はシロフフユエダシャクが飛んでいたので、今日はシモフリトゲエダシャクが飛ぶかもしれない。そう思うと、わくわくした気分になった。枯葉の溜まった斜面を少し歩くと、小さなフユシャクがひらひらと飛ぶのが見えた。シロフフユエダシャクだ。コナラやクヌギの樹幹のあちこちにも止まっている。個体数は昨日よりもずっと多く、オスの出現最盛期らしい。不思議なもので余りに数が多すぎると、感動もしだいに薄れてくる。他の種を見つけたいと思っていると、コナラとヤマザクラの樹幹でPhigalia sinuosaria Leech, 1897 シモフリトゲエダシャクが見つかる。前翅長28-29mmほどの大きさで、フユシャクとしては大型である。中島(1998)によると、シモフリトゲエダシャクはかって早春の蛾(2月下旬-3月上旬)とされていたが、近年は暖冬のためか関東の平地から低山地では12月下旬から3月上旬まで出現期が長くなったとのことである。しかし、名古屋市では概ね2-3月に出現するようである。

文献:中島秀雄(1998)「日本産フユシャクガ類(鱗翅目,シャクガ科)の分類学的, 生態学的研究」(Tinea Vol.15 Supplement 2)

写真:コナラの樹幹に止まるシモフリトゲエダシャク♂ 2006年2月12日 名古屋市で撮影

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February 11, 2006

ハイイロフユハマキ

shirifu021106shirofu021106bhaiirofuyu今日は晴天だったので、名古屋市北部の雑木林へ昆虫観察に出かけた。丁度午前11時頃から12時頃、明るい斜面の疎林の間をシロフフユエダシャクのオス成虫達がヒラヒラと飛翔するところを見ることができた。シロフフユエダシャクは大変敏感で、人の気配を察知すると、樹幹から飛んで地面や枯葉の間へ逃げる。一度地面に止まると、波状の斑紋が背景に溶け込み、すぐ目の前に居ても見つけ出すのに大変苦労する。枯葉を騒がしても、蛾は動かずにじっとしているので、目を凝らしてよほど執拗に探しまわらない限り見つからない。何度も騙されながらも根気よく探すうちに、シロフフユエダシャクの姿がやっと枯葉の上に浮き上がって見えるようになった。茶褐色型や、白茶型などかなり多様な型の個体が見られたが、どれも同種であった。

他の蛾も見たいと思っていると、コナラの樹幹に前翅長15mmほどの白灰色の蛾が止まっているのが目に入った。前翅は薄くて細長く、艶があり、白い縁毛を持つ。Kawabeia razowskii (Kawabe, 1963) ハイイロフユハマキだ。かってはフユシャクモドキとも呼ばれた2-3月に出現するハマキガである。どうやら春も近いようである。

【追記】2006年2月12日
採集したハイイロフユハマキはシロフフユエダシャクと一緒にタッパー容器に入れ、昨夜遅く冷凍庫へ入れた。今朝取り出して室内に置いていたところ、シロフフユエダシャクは全部死んでいたが、ハイイロフユハマキは約6時間冷凍したにもかかわらず、まだ生きていた。どうやらハイイロフユハマキはフユシャクに劣らぬ耐寒性を持っているらしい。

写真:2006年2月11日 名古屋市で撮影
    枯葉の上のシロフフユエダシャク、 地表のシロフフユエダシャク、コナラ樹幹のハイイロフユハマキ

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February 09, 2006

風が苦手なシロフフユエダシャク

shirofu020906今日は晴天だったが、風が強く寒い一日だった。昼過ぎに近くの雑木林へ行ってみたが、フユシャクが飛ぶ姿は見られなかった。冬期に出現するフユシャクもどうやら強風は苦手らしい。きっと樹皮の裏や隙間などに隠れて表には出て来ないのだろう。とはいえ、1頭も見つからないのも変だと思っていたところ、コナラの樹幹にピタリと張り付くようにして止まっているシロフフユエダシャクのオス成虫(前翅長約17mm)を見つけた。幹が二股になっていて、そこだけ風が直接当たりにくい場所だった。本種の斑紋や色彩にはかなり変異があるが、今日見た個体は波状の外横線に消えかかった内横線が接近する個体だった。この時期には近似種ヒロバフユエダシャクも出現するが、ヒロバフユエダシャクの方は前翅が丸みを帯び、外横線が角ばり、概ねシロフフユエダシャクよりも一回り大きいこと、前翅の脈相が異なることで識別できる場合が多い。無論、外形上極めて紛らわしい個体もいて同定に困ることもある。

写真:シロフフユエダシャク♂ 2006年2月9日 名古屋市で撮影

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February 07, 2006

シロフフユエダシャク

shirofu1shirofu2shirofu朝のうち雨が降っていたが、昼頃止んだので近くの雑木林を散策した。久しぶりの虫探しに心が躍る。林の入り口付近でソメイヨシノの樹幹に止まるシロフフユエダシャクのオス成虫を2頭見つける。Agriopis dira (Butler, 1879) シロフフユエダシャクは1月から3月上旬に出現する平地性のフユシャクだが、今日が見始めである。これは幸先が良いと思っていると、今度はクヌギの樹幹に止まる個体が目に入った。雨で樹幹が濡れて黒ずんでいるために、シロフフユエダシャクが白く引き立ち、いつもよりもずっと見つけやすい。かなり遠くからでも目に付き、「あっ、あそこにもいる」と、思わず喜びの余り大声を上げたとたんに、シロフフユエダシャクは危険を察知してか、樹幹から枯葉の間に舞い降りた。しかし、陽が射し込まないせいか、遠くまで飛ぶことは無かった。続々と見つかるので気を良くしていると、コナラの樹幹でメスを見つける。背丈よりもずっと高い位置にいたので、残念ながらメスの鮮明な生態写真は撮れなかった。メスの前翅は短く約2mm、体長約7mmである。オスの前翅の色彩には変異があり、一瞬別種であるかのように感じるが、よく見ると斑紋パターンはほぼ同じである。今日見たオス達は前翅長17mmほどだった。

写真:シロフフユエダシャク♂個体、♂別個体、♀個体 2006年2月7日 名古屋市で撮影

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February 06, 2006

ホソヒラタアブ

hosohirata040202hosohirata020206我家は飼育中の越冬幼虫のために暖房を一切入れていない。ところが職場は暖房完備で半袖姿も見られるほどの暑さである。寒いところと暑いところを往復する毎日で、すっかり体調を崩し、先週末から風邪でフィールドへ出られなくなってしまった。ちなみに夏は我家も山地性幼虫のために冷房を入れるので、職場が冷房完備でも問題はない。というわけで、今日登場するのは先日名古屋市北部の雑木林で撮影したホソヒラタアブである。Episyrpus balteatus (De Geer, 1776) ホソヒラタアブはハナアブ科に属する双翅目昆虫で、各地に分布する普通種である。成虫越冬し、冬季も飛ぶところが見られる。幼虫はアブラムシを吸汁する。写真のホソヒラタアブ成虫はどうやら♀のようだ。

写真:ホソヒラタアブ幼虫(コデマリの葉上) 2002年4月2日  名古屋市で撮影
    ホソヒラタアブ成虫 2006年2月2日 同上

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February 02, 2006

地衣を纏うシラホシコヤガ幼虫

koyaga020206koyaga今日は朝から晴天だったので、午前10時ごろ名古屋市北部の雑木林へ昆虫観察に出かけた。フユシャクが狙いだったが、時間が無かったこともあってコナラの樹幹でウスバフユシャクのすれた♂個体を見ただけだった。そのかわりにソメイヨシノの樹幹でEnispa bimaculata (Staudinger, 1892)シラホシコヤガ(ヤガ科)の越冬幼虫を見つけた。この幼虫は頭部、体躯ともに淡白色だが、地衣で作られた抹茶色の被覆物で体全体を覆っている。体長約10mm。写真の向かって左側が頭側になるが、頭部と胸部をピョコピョコと揚げ、変幻自在に体を動かす曲芸師。じっと静止していれば地衣そのものにも見える忍びの名手でもある。

本種幼虫については、保育社の蛾類幼虫図鑑にも記載があるが、生態については「日本昆虫記 III」に収録されている杉 繁郎(1984)「コヤガの幼虫とキノカワガのさなぎ」(全集 日本動物誌26 講談社)に詳しい。それによると、繭は樹幹などに柄で垂下されるが、新たに造繭されるのではなく、幼虫時代に被っていた地衣の被覆物を吐糸で袋状に改造して使う「倹約家」であるという。幼虫は地衣類を食し、5月に営繭、成虫は6月ごろから出現する。

シラホシコヤガ越冬幼虫 2006年2月2日 名古屋市で撮影 
 

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