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November 10, 2007

晩秋のちょい散歩

PhotoPhoto_2久しぶりの休み。朝から曇ったり、降ったりの天気だったが、散歩もかねて近場の雑木林へ。歩き出して早々に、ふとサクラの樹幹に目をやると、樹皮の一部が色濃く浮き出ているではないか!「うっ、あれは?」と目を凝らすと、やはり蛾であった。晩秋に出現するオオトビモンシャチホコ Phalerodonta manleyi manleyi (Leech, [1889]) の成虫。灯火に飛来した本種を見ることはよくある。しかし、自然に樹幹に静止する個体を見かけるのは嬉しい。夢中になって写真撮影。

ところが何枚か撮影した後、蛾の尾端に何やら黒い塊が固着していることに気付いた。不審に思って目を近づける。それは、なんとヨコヅナサシガメの幼虫であった。ヨコヅナサシガメ幼虫は、オオトビモンシャチホコの成虫の腹部に吸汁管を差し入れているようだった。しかし、まだ吸汁寸前だったようで、採集したオオトビモンシャチホコの成虫個体は普通に動き、腹部にもへこみなどは見られなかった。オオトビモンシャチホコの成虫は樹皮そっくりの模様をしており、樹皮に静止すると、まさしく隠蔽擬態そのもの。樹皮状の模様は鳥の目を逃れるのに有効的とされる。しかし、隠蔽擬態を最も効果的たらしめる背景の樹幹も実は危険がいっぱい。越冬サシガメ類にとっては格好の好餌となる。自分の体の何倍も大きいオオトビモンシャチホコをたった一頭で襲うヨコヅナサシガメ幼虫。いつも樹皮の割れ目の間で集団越冬するヨコヅナサシガメ幼虫を見る度に、一体何を摂食して生育するのか疑問に思っていた。冬季にカマキリ類の卵鞘を捕食したり、フユシャクやミツバチなどの小型昆虫を捕獲して餌とすることを見てきたが、自分の体長よりずっと大型の昆虫も襲撃しようとする現場を見たのは今日が初めて。あれだけの大所帯をどうやって養っているのか、これまで不思議であった。「大物狩り」の現場に立ち会って、ようやく納得がいった。

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November 06, 2007

晩秋の幼虫

Photo虫の姿が少なくなる晩秋から厳冬期、なぜか私は俄然元気になる。大半の虫屋がフィールドから足が遠のく冬季、私にとってはようやく待ちに待った出番となる。本格的な冬シーズンに備えて、昨日は近場のフィールドを回ってみた。まず出会ったのは、リンゴケンモン Triaena intermedia (Warren, 1909) の幼虫。赤く色づきはじめたサクラの葉を盛んに摂食している最中だった。見事な毛並みである。モンシロドクガの幼虫に一見似ているが、リンゴケンモンの方が背上の刺毛が長くて縮れているので、区別できる。既に体長40mm近いので、終令であろう。ケンモンの仲間は蛹化の際には木片を噛んで繭を造営するので、シャーレにはサクラの葉と共に早々と樹皮が入れてある。

Photo_2次に出会ったのはオオキノメイガ Botyodes principalis Leech, 1889 の幼虫だった。幼虫はヤナギの葉を袋状に巻いた中に潜んでいた。ちょっと見にはヤガ風に見える。成虫はノメイガとしては大きいので、幼虫の方も体長35mmと大きめである。蛹化も食餌植物の葉を巻いたケースの中で粗繭を作って行なわれる。食餌植物がヤナギ科植物ということもあってか河川敷に多産。昨年は成虫、幼虫共に矢作川の河畔林調査での常連さんでもあった。

L後はヒサカキの葉の新しい食痕を頼りにホタルガ越冬幼虫(1令)を見つけた。今の時期、ホタルガの幼虫は葉上にいることが多い。ヒサカキやサカキの葉に見られる白い点々とした古い食痕に混じって、黄緑色の新しい食痕があれば、すぐ近くにホタルガ Pidorus atratus Butler, 1877 の若令幼虫がいることが多い。但し、若令幼虫はまるで褐色のゴミみたいで、大きさも数ミリなので、見過ごしてしまいがちである。冬季は食樹の下の方で風を避け、葉を重ね合わせて潜んでいることが多くて一層見つけにくい。越冬中は汚い古葉を巧みに重ねた間に潜んでいることも多い。晴天なら、太陽にかざすと見えやすい。写真は1令幼虫で4mmに満たない。


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November 03, 2007

神神温泉で見た蛾(後編)

10月27日午後、折りしも台風の影響で大雨であったが、再度昼神温泉を訪れた。雨天なら蛾も飛来するのではないかと期待したが、土砂降りで誘蛾灯にも蛾の姿は無かった。おまけに、雨は夜半には止み、夜空には星が輝き、月は澄みきった光を投げ、空気は乾燥して気温は低くなってしまった。蛾採集には最悪のパターン。あきらめて、夜は喜久水の生貯蔵酒を飲みながらの宴会三昧。深夜、露天風呂にも入ってみたが、蛾の姿は何処にも見られなかった。

Photo翌朝、宿の自販機へウーロン茶を買いに行ったところ、網戸に蛾が止まっている。腹側からしか見えないので、種名はわからないが、ヤガであることに間違い無いようだ。戸を開けようとしたが、鍵が閉まっていて開けられない。すぐに部屋へ戻り、採集用具を持つと、表へ出てぐるっと大回りをして、やっと蛾の止まっている戸にたどり着いた。網戸に止まっていたのは、新鮮なケンモンミドリキリガだった。特に珍しい種ではない。しかし、美しい蛾なので、思わぬ儲け物であった。

Photo_2宿を出た後、十字屋という昼神温泉界隈にしては美味しいコーヒーが飲める喫茶店で、ぼんやりと時間を過ごした。すぐ帰っても良かったのだが、あまりにも良い天気だったので、国道153号を少し南へドライブした。紅葉はまだ緑色にほんの少し黄色や赤色が混じる程度の色づき始め。しかし、それもなかなか風情があり、しっくりした景色だった。途中、冠雪した南アルプスの峰が見えるところがあったので、そこで止まって遠景を楽しんだ。快晴ということもあって、車やバイクの数が多く、道路は混雑していた。

Photo_3午前11時過ぎに、蕎麦でも食べようということで、昼神温泉で有名な蕎麦処へ寄ろうとしたら、2店とも駐車スペースが無いほどの賑わいだった。やむなく、もう一軒の人気店に寄ると、そこはまだ満車ではなかった。しかし、ほどなくお客が次々と来店して、待ち組が並び始めるほどの盛況となった。蕎麦を待つうちに、小座敷の壁に大き目のシャクガが止まっていることに気付いた。早速、ケースに収める。オオネグロウスベニナミシャク Photoscotosia lucicolens (Butler, 1878)だ。これも珍しい種ではないが、阿智村産標本は持っていないので有難く頂戴する。この後、近くの月川温泉に寄ってから早めに家路へ。

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November 02, 2007

昼神温泉で見た蛾 (前編)

この秋、近場ということもあって、二度にわたって昼神温泉へ出かけた。単純硫黄温泉で、源泉からはツーンと硫黄の臭いがし、肌がツルツルになる湯であった。温泉にゆっくり浸かって疲れを癒すことが目的の旅だったので、昼神温泉界隈だけを少し周って、後は阿智川河畔を散策した。阿智川沿いの道にはサクラとハナモモが植栽されていて、夕食前に家族と一緒にのんびりと散策した。浴衣姿で連れ立って散歩する観光客の姿もあちこちで見かけ、いかにも温泉場らしい和やかな雰囲気であった。

Photo_4サクラの樹を見上げると、クスサンの姿が目に入った。恐らくメスであろう。産卵中らしく太目の腹端を樹皮にくっつけながらゆっくりと上へ登っていく。夕暮れで撮影しにくかったが、何とかカメラに収めた。次いで別のサクラに目を移すと、樹幹に黒っぽい蛾が止まっていることに気付いた。後翅は見えないが、前翅に青白い輪を描いたような模様がある。あいにくネットを宿に置いてきてしまい、採集用具が無かった。かなり敏感で、2度シャッターを押すと、もう危険を察知してパッと飛び去ってしまった。どうやら、ワモンキシタバ Catocala fulminea xarippe Butler, 1877だったようだ。鱗片も剥げてしまって、ワモンとはとても思えないほどみすぼらしいボロ個体だ。
(写真:ワモンキシタバ 2007年9月25日 長野県下伊那郡阿智村智里で撮影)

Photo_2Photo_3昼神温泉は、ハナモモの里といわれるほどハナモモが多く植栽されているが、そのハナモモの葉上には、白いシャクガが静止していた。クロミスジシロエダシャク Myrteta angelica Butler, 1881である。前翅に欠損があるのが惜しいが、観光に来て被写体の選り好みする贅沢は許されないと思って撮影した。既に夕闇が迫りかけていたが、何かいないかと思って探していると、道端に咲くコスモスの周りに何か飛んでいた。そっと近寄ると、キンウワバが盛んにコスモスで吸蜜していた。採集していないので、きちんとした同定は出来ないが、イチジクキンウワバChrysodeixis eriosoma (Doubleday, 1843) のような感じがする。
(写真:クロミスジシロエダシャクとインチジクキンウワバ? 2007年9月25日 阿智村智里で撮影)

夜になって宿の露天風呂に行くと、誘蛾灯に大型の蛾が飛来したが、高いところだったので、採集はできなかった。また、露天風呂の照明にも中型の蛾が止まっていたが、採集用具が無くて逃がしてしまった。翌朝早く、今度は採集用具を忍ばせて露天風呂に行ったところ、蛾は既に飛び去った後なのか、はたまた鳥に捕食された後だったのか、もはや影形も無かった。とはいえ、山際の露天風呂は、虫好きの私には蛾の気配が感じられる夢のある処で、すっかり気に入ってしまった。

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