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December 27, 2010

クロウスタビガ初令幼虫全滅

昨年、北海道の友人Nさんは、Rhodinia jankowskii hokkaidoensis Inoue, 1965 クロウスタビガ北海道亜種の採卵飼育に成功し、飼育羽化にこぎつけた。友人によると、新田信悟氏の「蛾類レポーツ」の飼育記録のような飼育苦労は少なく、「クロウスタビガの幼虫は飼育しやすかった」とのこと。昆虫飼育の達人である友人ならではのことと思う。飼育下手の私には参考にならない。これまで、私自身も長野県奈川村へ何度も行き、クロウスタビガ本州亜種の母蛾を採集し採卵を試みた。しかし、少数卵しか採卵できす、とうとう孵化しなかった。

友人は今年も母蛾から採卵し、卵の一部を11月中旬に送ってくれた。友人のアドバイスどおり、私は軒の下に卵を置き、来春の卵の孵化を心待ちにしていた。クロウスタビガの幼虫飼育は私の長年の夢である。それなのに、このところ忙しさにかまけて、クロウスタビガの卵のことなどすっかり忘れていた。

ところが、今日Nさんからモモブトスカシバの虫エイが届き、クロウスタビガの卵のことが急に気になった。様子を見に行ったところ、なんと黒い幼虫が孵化し、カラカラに干からびていたのである。しかも9頭も孵化している。こういう時に限って孵化率がいいんだから。そういえば、北海道では雪が降っているというのに、名古屋は12月とは思えないほど暖かい日が続いていた。12月に孵化してしまっても、少しも不思議ではない。卵を冷蔵庫に入れて保存すべきだったのかもしれないが、以前冷蔵庫で保存した九州産キイロトゲエダシャクの卵が、胚子が成長しながらも、遂に孵化しなかった苦い体験があったために、冷蔵庫保存に躊躇があった。
いずれにせよ、せっかく卵を送ってくれた友人には申し訳なく、泣きたい気分である。来年はキハダにつく野外の幼虫を見つけるしかないなあ。

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モモブトスカシバの虫エイ

今日、少し遅いクリスマスプレゼントが北海道から届いた。サンタさんは虫屋のNさん。北海道に住むNさんは Macroscelesia japona (Hampson, 1919)モモブトスカシバの虫エイを今年多数採集したらしく、その一部を送って下さったのだ。モモブトスカシバは小型のスカシバガ。孵化した幼虫はアマチャヅル(ウリ科)の茎に潜入して虫エイを造り生育する。虫エイの内部で終令幼虫のまま越冬し、翌年6-8月に羽化する。Nさんのお見通しのとおり、虫エイを容器に入れておけば、後は何もしなくても成虫が得られるーまさに、なまけ者の私にはピッタリの贈り物だ。

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キノカワガのだまし絵

快晴に誘われ、平和公園へ立ち寄った。今日は長居が出来ないため、いつもの御神木へ直行した。先ずソメイヨシノの樹幹を遠景から眺めると、蛾の姿は見えない。
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そこで、今度は樹木に近づき、樹皮に目を寄せるようにして探す。すると、規則的な樹皮模様の間に、こげ茶色の不自然な盛り上がりがあるではないか!Blenina senex (Butler, 1878) キノカワガだ。それにしても、樹皮の窪みそっくりで実に上手く隠れたものだ。
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December 22, 2010

チャバネフユエダシャク

今日は冬至とは思えぬほど暖かい日だった。こんな日はフユシャクが羽化しているかもしれない。仕事を終えると、期待に胸を膨らませながら、すぐ平和公園へ赴いた。ところが、いざ平和公園へ着いてみると、意外に風が強く、空気は乾燥している。ううん、まずい。からりと晴れ、きれいな月が昇るような日は、人間には心地良くとも、蛾には喜ばれない。これは駄目かなと、不安が過ぎったとたんに、「あっ、居た」と、連れが街路樹のサクラを指差す。それはErannis golda Djakonov, 1929 チャバネフユエダシャクだった。すぐ横を車が猛スピードで次々と走りぬける。車が通過する度に風圧で今にも吹き飛ばされそうになる。急いで写真撮影をして、個体を採集する。今年の春、チャバネフユエダシャクの幼虫を多く見ているとはいえ、こうして成虫を確認する喜びは一入である。オスがいたのだから、今度はメスも期待できそうだ。

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December 19, 2010

今年初のシロオビフユシャク

今日は12月とは思えないほど暖かく風の無い日だった。こんな日にはフユシャクがいるかもしれないと思い、仕事が終わるとすぐに平和公園へ行った。既に日が傾きかけていたので、くだんのサクラの古木の許へ・・・ 樹幹を見上げるが、蛾の姿は見当たらない。「絶好の日なのに、どうして居ないのだろう?」と、不思議に思っていると、樹幹の窪みに枯葉のようなものが引っ掛かっている。よく見ると、枯葉そっくりだが、それは紛れも無く蛾であった。Oraesia excavata (Butler, 1878) アカエグリバ である。すぐ側には幼虫の食草であるアオツヅラフジがあり、まだ緑色の葉を残していた。恐らく付近で羽化した個体であろう。

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一つ成果があったので喜んでいると、今度はサクラの根元近くに小さな三角形のシルエットが目に入った。近寄ると、Alsophila japonensis (Warren, 1894) シロオビフユシャクのようだ。今年は未だシロオビフユシャクを見ていなかったので、とても嬉しい。羽化したての個体らしく、暗緑色に見える。デジカメで撮影しようとすると、背景の苔や樹皮にピントが合ってしまい、肝心の蛾の方がボケてしまう。シロオビフユシャクは、カメラが騙されるほど背景色に同化しているということだろう。採集した個体を家で調べたところ、前翅は灰色で、野外で見えたはずの暗緑色は失われていた。野外の光の下、見る角度により前翅の色彩が暗緑色や灰色などに変化する構造色なのだろうか。

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December 18, 2010

アキカバナミシャク

今日は午前中は曇り。風も強く、肌寒い。昼頃に平和公園に立ち寄った。いつも蛾が止まっているサクラの木があるので、そこへ直行すると、樹幹に前翅長9mmほどの小さなシャクガがペタリと張り付くように止まっていた。カバナミシャクの仲間のようだ。寒さで手ぶれして、うまく写真撮影できなかったが、Eupithecia subfumosa Inoue, 1965 アキカバナミシャク らしい。Eupithecia カバナミシャクの仲間はよく似ているので、同定には自信が無い。

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ヒメクロオビフユナミシャクか

今週火曜日から風邪を引いて、2日間寝込んでしまった。木曜日の午後になって、ようやく体調が戻りかけたので、早速平和公園へ。いつものように、サクラの樹幹を見て周ったのだが、虫の姿は無かった。寒くて長く居られないので、すぐ引き上げることにする。「今日は何のお土産もないのかな」と、諦めかけていたところ、足元近くで薄い紙切れのようなものがかすかに動く。フユシャクだ。そっとカメラを近づける。こんな地面すれすれのところに隠れているとは!どおりで、見つからないはずだ。私は木の上の方ばかり見上げて探していたからだ。
当初、クロオビフユナミシャクとばかり思っていたが、家へ戻って、写真と標本を試す返す見たところ、内横線がR1で直角に曲がっていたり、触角の櫛毛が長いので、かすれて斑紋がみにくいが、どうやら Operophtera crispifascia Inoue, 1982 ヒメクロオビフユナミシャクらしい。

蛾類の種分類は、成虫及び幼虫の外部形態、交尾器、食性、最近ではDNA配列情報を分類基準にして行なわれる。しかし、いわゆる近似種の場合、種間の相違は必ずしも明確ではない。交尾器の相違が「生殖隔離機構」の存在根拠とされているが、野外での生殖隔離成立を即保証するものではない。野外の個体の中には極めて紛らわしいものもいる。種分類は人間が生物を恣意的に分けたものである以上、自然界に種記載の枠組みに収まらない個体が居ても少しも不思議ではないと思う。

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December 13, 2010

雨の日の虫散歩

今日は午前10時ごろから雨がパラパラと降り出した。しかし、虫大好き人間は、こんな日も傘を片手にいそいそとフィールドへ。行き先は通い慣れたる平和公園。少々の雨なら、人気も少ないし、ゆっくり虫探しが楽しめる。まず最初に向かったのは、いつも蛾が止まっているサクラの古木。苔生した樹幹を見上げると、チャエダシャクがしがみ付いていた。付近の木を見て廻ると、今度はコカマキリのメスが目に入った。前脚腿節内側の黒色紋がはっきり見える。腹部がまだ膨らんでいるので、産卵場所でも探しているのだろうか。

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雨足が次第に激しくなって来る。虫は逃げないが、カメラが濡れると困るので、引き上げることにする。サクラの木を見ながら戻る途中、樹幹に静止するカブラヤガ(写真)を見つける。多食性の代表的農業害虫で、さすがの私も成虫、幼虫ともに見つけても喜べない類の「超」普通種。チャエダシャクの方も3頭追加する。チャエダシャクは発生期たけなわのようだ。

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December 12, 2010

クロオビフユナミシャク隠れの術

先週の金曜日、フユシャクでも見ようと、平和公園へ立ち寄った。ところが、晴天にもかかわらず、時間帯が悪いのか、虫の姿はさっぱり見られない。枯葉の上を飛ぶキタキチョウがいるぐらい。あきらめて帰りかけたところ、石畳の上を小さな枯葉状のものが微かに動いているような気がした。「あっ、フユシャクだ」と、目を凝らすと、黒と白の石畳の上に一頭のシャクガが止まっていた。斑紋は擦れかかって不鮮明だが、Operophtera relegata Prout, 1908 クロオビフユナミシャクだった。それにしても、背景色に巧みに溶け込み、身を隠す術はいつもながらお見事である。写真は2,010年12月10日 名古屋市平和公園で撮影

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December 06, 2010

冬の蛾達

普通、昆虫は春から秋に出現するものが多い。しかし、蛾の中には寒くなると出現する変わりものがいる。その最たるものがフユシャクである。多くの虫が姿を消すこの時期、フユシャクの出現は蛾屋にとって、まさに冬の贈り物である。なかでも、クロスジフユエダシャクは出現期が比較的長く、昼行性であることから目に留り易い。
12月5日、名古屋市の平和公園へ行ったところ、Pachyerannis obliquaria (Motschulsky, 1861)クロスジフユエダシャクを目にした。成虫は枯葉の間に潜み、林内に太陽光が差し込むと、ひらひらを飛び出す。飛び方はゆっくりだが、飛翔を開始するとほとんど止まらないので、好天気の日はかえってシャッターチャンスが少ない。

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活発なクロスジフユエダシャクと好対照なのが、Megabiston plumosaria (Leech, 1891)チャエダシャクである。
この蛾も晩秋から冬に出現するが、たいてい樹幹や葉上に翅を拡げてピッタリと張り付くように静止している。普通種であるが、蛾の少ない時期には大きめだけに存在感がある。写真ではよく見えないが、両櫛毛状の触角が見事な♂個体である。

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December 01, 2010

今年初めてのフユシャク

今日は暖かい日だったので、フユシャクでも探そうと思い、午後から平和公園を散策した。
といっても、もともと虫がたくさんいる場所では無いので、何か見つかれば儲けものといった感じである。先日、アオバハガタヨトウがいたソメイヨシノの古木では、これまでシロオビフユシャクやナカオビアキナミシャクを見つけたことがある。何故か、その木には蛾が止まっていることが多いので、毎回その辺りは必ず見ることにしている。

今日も、よもや「柳の下に鰌はいないだろう」とは思いながらも、通過儀礼として寄ってみた。すると、ソメイヨシノの樹幹にはチャエダシャクが止まっていた。何もいないよりはましだと思い、写真撮影する。その後、近くの木に目を移すと、小さな三角形のシルエットが浮き出ている。「あっ、フユシャクだ」と思い、そっと近づき写真撮影後、採集する。帰宅して種名を確認すると、Operophtera relegata Prout, 1908 クロオビフユナミシャクの雄個体であった。今年初めて見るフユシャクで、嬉しい収穫である。

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写真:Operophtera relegata Prout, 1908 クロオビフユナミシャク♂ 2,010年12月1日 名古屋市平和公園

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市街地のアオバハガタヨトウ

先週の朝のことだが、名古屋市の平和公園をこれといった目的も無く、のんびりと散策した。
枯葉を踏みながら歩いていると、コマユミの赤い実が目に留まった。実の写真を撮ろうと近づいたところ、葉上に艶やかな虫が止まっているではないか!オレンジ色と黒色のコントラストが目を惹く。Pryeria sinica Moore, 1877 ミノウスバ雄のコーリングだ。尾端を思い切り反り上げ、性フェロモンを放出し雌を誘引しているところだった。

写真を撮る為に木の枝を引き下げ、葉を揺らしても、相変わらずコーリング行動を続けている。まだ新しい個体らしく、前翅の構造色が朝日を浴びて黒紫色に輝く。派手なオレンジ色と黒色の姿も、少し離れたところから見ると、コマユミの赤い実に紛れてそれほど目立たない。まさに自然の妙である。

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写真:Pryeria sinica Moore, 1877 ミノウスバ♂ 2010年11月25日 名古屋市千種区 平和公園


思いがけずミノウスバのコーリングを目撃し、上機嫌で帰ることにする。
帰る道すがら、ソメイヨシノの古木を何気なく見たところ、苔むした樹幹に渋いヤガが止まっている。嬉しくて手が震え、デジカメの焦点がなかなか定まらない。気配を察知して今にも飛び立つのではないかと、気が気ではない。やっとカメラに収め、ビニール袋で個体を採集する。見覚えのあるヤガだが、このところ蛾から離れていたので、咄嗟に種名が浮かばない。

家へ戻ってから、日本産蛾類大図鑑で種名を確認する。Antivaleria viridimacula (Graeser, 1889) アオバハガタヨトウの雄で新鮮な個体である。愛知県でも瀬戸市や豊田市なら別に珍しくは無いが、名古屋市の平和公園、それも往来の激しい車道近くで採集したのだから、ちょっとした収穫である。平和公園は昆虫相の薄いところで、幼虫はともかく、成虫の個体数は概して少ない。特に目視採集によって複数個体を得ることは難しい。たとえ1個体でも、平和公園の蛾の生息確認種数が増えることは嬉しい。

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写真:Antivaleria viridimacula (Graeser, 1889) アオバハガタヨトウ♂ 2010年11月25日 名古屋市 平和公園

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