May 20, 2008
昼神温泉の楽しみといえば、硫黄の匂いのする湯と朝市。朝市は4-11月までは午前6時から開催され、新鮮な山菜、漬物、ジャム、味噌、蕎麦など、朝市に出されるものはいずれも品質が良く、値段も手頃だ。温泉に浸かった後、浴衣と丹前姿で気軽に行ける。阿智村、喬木村、高森町などの地元生産者からの出品が多く、売り方も決して押し付けがましさがなく、もの静かなところが良い。何度も行くうちに顔見知りの人もできてきた。いつも私は手に持てないほどたくさん買うが、どれも美味しいものばかりで、一度として後悔したことが無い。定番品はネット経由でも買えるが、山菜や期間限定の漬物などは朝市でしか入手できない。
昼神温泉に来た時には、たいてい飯田市と高森町へ立ち寄る。今回は母の希望で、元善光寺のすぐ近くにある竹田扇之助記念国際糸繰り人形館へ。人形館は麻績の舞台桜で有名な旧座光寺中学校の横に在った。麻績の桜は、先月私達が飯田の長姫桜を見に行った頃に満開だったらしい。樹形や幹が実に見事で、名木は葉桜になっても美しい、と思った。人形館は旧座光寺中学校の隣にあった。洒落た建物だったが、中に入って更に驚いた。花が活けられていて、それが室内空間によくマッチしていた。受付にいた初老の人品の良い方が、「今、小学生の生徒さん達がビデオを鑑賞中でして、それでもよろしかったら御入場下さい」と、もの静かな口調で言われる。「空いているうちに、先に人形の方を御覧頂いた方がよろしいかもしれません。」とのことで、展示室へ。展示室の小窓からは手入れの行き届いたお庭が見え、そのセンスの良さは心にくいばかりである。展示されている人形はいずれも素晴らしい糸繰り人形ばかり。頭が息を呑むほど美しく、気品が高い。これほど質の高い人形が展示されているとは思っても見なかったので、感嘆しきりだ。衣装の作りも丁寧で、色や柄は地味なのに艶やかだ。何よりも人形に合っている。特別展用に、たくさんの武者人形が飾られていたが、どれも素晴らしい。古典ものも、新作ものも顔が優しく美しい。
子供の頃、テレビで「西遊記」や「宇宙船シリカ」などの人形劇を楽しんだ思い出が一挙に蘇ってきた。
「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段」のお七の人形の表情は色恋が昇華し、崇高な観すら覚える。愛馬「あお」との別れの段、塩原太助の表情は慈しみに溢れ、主人を慕う馬の表情はもの哀しい。坂田の金時は元気漲り、一緒に相撲を取る熊は優しい表情をしている。余りにたくさん飾られていたので、かえって印象が薄れてしまったが、この人形達にまた会いたいと思った。家へ戻ってから、受付で貰った英文パンフレットに目を通すと、Don Kenny の平明な訳で、竹田人形座の歴史と活躍について記されていた。但し、その記述は1986年の公演で終わっている。竹田喜之助の不慮の死によって、一世を風靡した竹田人形座は休演を余儀なくされたからだとか。館内は恐らく撮影禁止だろうと思い、人形の写真は撮影しなかった。帰りがけに裏庭を散策すると、ハルジオンで吸蜜するダイミョウセセリを見つけたので、記念写真として添える。
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May 19, 2008
昨年来より、南信州がすっかり気に入ってしまった。4月上旬、飯田市美術博物館で満開の長姫桜を見てから、昼神温泉で一泊した。昼神のソメイヨシノは未だ咲き始めで少し早すぎた。当然のことながら、花桃の方は固い蕾。5月の連休ぐらいが丁度花桃の見ごろらしい。しかし、シーズン中は大混雑が予測されたので、連休直後に宿を予約しておいた。花桃の最盛期は過ぎていても、元来花期が長い植物だから、少しは咲き残っている木もあるだろうと、楽観的に考えていた。そして、5月のゴールデンウィークを必死に働き、待ちに待った5月8日。母を誘って、きままな花桃見物の旅に出た。

雨かと思っていた天気も曇りで、まずまずである。道も空いていて、目の覚めるような新緑の木々に絡まる藤の花や、たおやかな桐の花の薄紫色が美しい。途中のサービスエリアで早めの昼食を楽しみ、中央道「園原IC」に到着したのはお昼過ぎ。まず月川温泉の方へ向かったところ、月川温泉の花桃の花期は既に終わりかけだった。花は全体に薄墨色を帯びて、何やら物悲しい。盛りを過ぎた花桃に、人生の翳りを重ねあわせてみる。紫式部の時代に花桃があったなら、かの六条御息所は、この萎れかけた花桃の一枝に歌を添えて、つれない源氏の君に贈ったのかもしれない。そんな荒唐無稽なことを考えていると、車の前を白っぽいチョウが川沿いの道をのんびりと横切る。「あっ、ウスバシロだ」と、伴侶が車を道路脇に止める。ウスバシロチョウがたくさん飛んでいて、タンポポで吸蜜している。川岸の斜面には食草ムラサキケマンの花が咲いていた。よく見ると、ウスバシロチョウの他にツマキチョウも飛んでいる。普通種だが、両方とも大好きなチョウだ。この2種が見られるのは自然環境が良い証拠だ。
月川温泉の花桃が駄目でも、清内路街道の花桃は見頃かもしれないと思い、清内路の方へドライブを兼ねて走ってみる。標高が高いせいか、清内路にはまだ桜の花が残っていた。花桃は街道の所々に植栽されていた。花の色も濃く、木も月川温泉や昼神温泉に比べて大きい。「花桃発祥の地ー清内路」という触れ込みだが、期待を裏切らない。特に、清内路ふるさと自然村の花桃は色鮮やかで、大変美しかった。これで、お洒落なカフェの一つでもあれば、観光地として申し分ないところだが、残念ながらそうした店は一軒も無かった。
さて、清内路街道の途中で引き返し、昼神温泉へ来てみると、花桃はすっかり葉桃になっていた。少しぐらい花が残っているのでは、という淡い期待はものの見事に裏切られてしまった。よくよく考えて見るに、花期の遅い月川温泉でも遅かったのだから、それよりも低標高の昼神温泉の花桃が残っているはずはなかった。そもそも期待する方が間違いだったのだが、「桃源郷を母に見せたい」という思いが強すぎて、冷静な判断を欠いてしまっていたようだ。
夕方になって、近くを散歩。ミズキの葉を巻いた中に蛾の幼虫を見つける。Auzata superba (Butler) ヒトツメカギバだ。幼虫態で越冬し、春に摂食を再開する。特に珍しい蛾ではないが、幼虫を実際に採取するのは初めてだったので、ちょっと嬉しかった。
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March 22, 2008
昨日、仕事を終えて帰ろうとして、大急ぎで出口のドアを開けようとした途端、灰色のドアに薄汚れたゴミが目に飛び込んできた。来客や職員が頻繁に開閉するドアなので、ティッシュペーパーでゴミを拭き取ろうと思った。ところが、そのゴミは動き出したのだ。「あれ?」と思ってよく見ると、それはなんとゴマダラチョウの幼虫ではないか!昨日は殺人的忙しさで、疲弊しきっていたが、ゴマダラチョウの幼虫と気付いた瞬間、疲れは吹っ飛んで、すっかり浮かれた気分になった。数日前には、職場のロッカー室のブラインドにボロボロの越冬ルリタテハが止まっているのを見つけたり、中庭のアラカシにウラギンシジミが止まっているのを見つけた。虫をやっていて本当によかったと思う瞬間である。
ティッシュペーパーでそっと包んだゴマダラチョウは体長20mmほどの灰褐色の幼虫態だが、よく動くところを見ると、既に休眠から覚醒しているようだ。一体何処で越冬していたのかはわからない。少なくとも側にはエノキはない。かなり離れた処に何本かエノキがあるが、まだ芽吹き始めたばかりである。とりあえず、自宅へ持ち帰り、エノキの小枝を入れたケースの中で飼育することに。幼虫はエノキの枝には寄らず、ケースの縁に掴って静止したままである。新芽を摂食している形跡は今のところ無い。いつから摂食を開始するのだろう?楽しみだ。
【追記】
この幼虫は5月5日、無事羽化した。写真は、5月6日ベランダから飛び立つ寸前に撮影したものだ。

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December 16, 2007
昨日の昼頃、いつものフィールドへ虫散歩に出かけた。土曜日の午後ということもあって、自然観察を楽しむ人達でいっぱいだと思っていた。ところが、現地に着くと人の姿はごく僅か。寒い上に小雨がぱらつき始めたためらしい。こんな日はフユシャクの活動も不活発。薄暗いこともあって樹皮に張り付く♀の姿を見つけるのは至難の業である。まあ、必死に探しても、そう簡単には見つかるまい。いつもなら樹幹に目を寄せて樹皮の窪みという窪みを辿るのだが、悪天候の日は少し離れたところから樹木やその周辺全体を見ることにした。数少ないながら、枯葉の上をクロスジフユエダシャクの♂が飛ぶ姿を認める。きっと、これらの♂は土中から羽化したばかりの♀を待ち受けているのだろう。

その後、クロスジフユエダシャク♂成虫が低空飛行する姿は見られたが、♀の姿はさっぱり見つからない。無論、時期的には♀は出現しているはず。樹幹のどこかにいると思われるが、巧みに隠れているせいか探し出せない。♀の翅は退化していて飛翔できない。しかし、飛翔できない分、脚が発達。動きは極めてすばやい。接近する人の気配をいち早く察知して身を隠してしまうのだろう。
悪天候を口実に早めに引き上げることに。「今日は坊主かな」と思いながら帰る途中、とあるコナラの樹に目が行く。樹幹の下方に何か引っかかっている。どうせ枯葉なのだろうが、念のために確認したところ、それはクロスジフユエダシャクの♂。枯葉の間に潜んでいる方がずっと安全なはずの♂がわざわざ目立つ樹幹に静止する。と、いうことは・・・ じっと目を凝らすと、♂の翅の下方から♀の前翅が僅かに見えるではないか。またもや交尾中のクロスジフユエダシャクだ。一旦あきらめていただけに喜びも大きい。
写真:交尾中のPachyerannis obliquaria (Motschulsky, 1861) クロスジフユエダシャク 2007年12月15日 名古屋市守山区で撮影
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December 12, 2007

そろそろクロスジフユエダシャクの出現期ではないかと思い、先日いつものフィールドである名古屋市北部の雑木林を訪れた。ちょうど昼頃で晴天。午前11時頃から午後1時頃はクロスジフユエダシャクの飛翔帯である。現地へ着くと、♂成虫が枯葉の上を乱舞している。一歩枯葉に踏み入れると足元から飛び立ち、少し離れた枯葉の上に止まる。近づくと、枯葉の裏にそっと隠れる。隠れ方はかなり芸術的。触角は見えるが、体は枯葉の裏に潜めているので撮影しにくい。クロスジフユエダシャクの♂の変幻自在な葉隠れの術に騙されるのは愉しい。そして、偶然ではあるが、それを見破るのはもっと愉しい。
写真:クロスジフユエダシャク Pachyerannis obliquaria (Motschulsky, 1861). ♂ 2007年12月10日 名古屋市守山区で撮影
これだけの数の♂成虫が飛翔しているのだから、♀成虫も数少ないとはいえ、既に出現しているはずである。ぜひとも♀成虫を見つけたいと思い、食樹とされるコナラ、アベマキ、カシワ、クリの樹幹を探すが、なかなか見つからない。あきらめかけた頃、とあるコナラの樹幹の下の方で♂成虫を見つける。これまで、枯葉の表裏では多く見かけた♂であるが、樹幹で見るのは珍しい。デジカメで2-3回撮影するうちに、止まり方が何やらおかしいことに気付く。人が接近する気配に微動だりともしない。前翅の片側がまるで羽化不全個体でもあるかのようにへこんでいる。どうも変だと思い、目を寄せると、♂の翅の下には♀成虫が・・・・交尾中だったのだ。あわてて♂に合わせていたピントを♀に。興奮で震ながらシャッターを押すが、手振れしてうまく撮れない。♂がうまく撮れると、♀がボケ。♀がばっちりだと♂がピンボケ。そのうちに、♀が♂から離れ、ものすごい勢いで樹を登り始める。♀は翅が退化して飛翔できない代わりに、肢が発達していて動きが素早い。また、触れるとピョンと飛び跳ねる能力も極めて高い。人の気配を感知すると、樹皮裏や窪みに素早く隠れるので見つけにくい。人の目につくときは、よほど個体数が多い時か、寒くて身動きが取れない時なのだろう。
写真:交尾中のクロスジフユエダシャク 2007年12月10日 名古屋市守山区で撮影
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December 10, 2007
先日、ぶらっと家族で昼神温泉へ。天気予報では、この日は曇りのち雨ということだったが、朝から雨。今回の旅はゆっくり湯に浸かり骨休めをすることだったので、遅めに出発。昼神温泉には午後2時過ぎに到着。温泉の入口の神社脇で藁で編んだ素敵な「湯屋守様」が出迎えてくれた。昼神温泉はすっかり冬支度である。後で知ったことだが、どの旅館の玄関にもこの湯屋守様が飾られていた。私達は先ず十字屋コーヒー店へ。店へ入ろうとすると、目の前のサクラの樹幹に何か止まっている。晩秋の蛾として知られるナカオビアキナミシャクだ。小雨の中、デジカメを操作するが、水に濡れてうまく作動しない。あきらめてひとまず店内へ。
写真:湯屋守様 2007年12月3日 長野県阿智村で撮影
店は空いていて、窓際の席に座ることができる。ここのオーナーは野鳥好きなのだろうか。周りの樹木に餌台が置いてあるので、野鳥が頻繁に訪れる。温泉で点てたという「いで湯コーヒー」を飲みながら、愛らしい野鳥の姿を追ううちに雨が上がってきた。タオルに包んであった濡れデジカメも乾いてきて、やっとシャッターチャンス。周囲も少し明るくなり、なんとかナカオビアキナミシャクの姿をカメラに収めることに成功。やれやれ。
と
ころで本種はいわゆる「フユシャクガ」のグループには属さない。フユシャクガの定義について、中島(1998)は、次の4点を挙げている。1)年1回発生で成虫は晩秋から早春に出現する。2)冬期に生殖行動を行い産卵する。3)雌の翅は欠けるか縮小して飛翔できない。4)口吻は短縮して、食餌しない場合が多い。ナカオビアキナミシャクは1)と2)は満たしているが、3)、4)が当てはまらないので、チャエダシャクと同様にフユシャクガのグループからは外されている。食草はリョウブで、名古屋市やその周辺地域でも普通に見られる。今年は暖冬のせいか、南アルプスの冠雪も僅か。蛾の方もナカオビアキナミシャクが圧倒的に多く、本来のフユシャクガで採集できたのはシロオビフユシャク1頭だけ。昼神温泉はこのほど新しい源泉を掘り上げたせいか、湯量も豊富で湯温も高くて楽しかった。定例の朝市では味噌、漬物、りんご、ジャム、きのこ、米などを買った。品質が良く、また行きたいと思った。
写真:Nothoporinia mediolineata (Prout, 1914) ナカオビアキナミシャク成虫 2007年12月3日 長野県阿智村撮影
(画像はマウスを当てると拡大画像が見られます)
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November 10, 2007

久しぶりの休み。朝から曇ったり、降ったりの天気だったが、散歩もかねて近場の雑木林へ。歩き出して早々に、ふとサクラの樹幹に目をやると、樹皮の一部が色濃く浮き出ているではないか!「うっ、あれは?」と目を凝らすと、やはり蛾であった。晩秋に出現するオオトビモンシャチホコ Phalerodonta manleyi manleyi (Leech, [1889]) の成虫。灯火に飛来した本種を見ることはよくある。しかし、自然に樹幹に静止する個体を見かけるのは嬉しい。夢中になって写真撮影。
ところが何枚か撮影した後、蛾の尾端に何やら黒い塊が固着していることに気付いた。不審に思って目を近づける。それは、なんとヨコヅナサシガメの幼虫であった。ヨコヅナサシガメ幼虫は、オオトビモンシャチホコの成虫の腹部に吸汁管を差し入れているようだった。しかし、まだ吸汁寸前だったようで、採集したオオトビモンシャチホコの成虫個体は普通に動き、腹部にもへこみなどは見られなかった。オオトビモンシャチホコの成虫は樹皮そっくりの模様をしており、樹皮に静止すると、まさしく隠蔽擬態そのもの。樹皮状の模様は鳥の目を逃れるのに有効的とされる。しかし、隠蔽擬態を最も効果的たらしめる背景の樹幹も実は危険がいっぱい。越冬サシガメ類にとっては格好の好餌となる。自分の体の何倍も大きいオオトビモンシャチホコをたった一頭で襲うヨコヅナサシガメ幼虫。いつも樹皮の割れ目の間で集団越冬するヨコヅナサシガメ幼虫を見る度に、一体何を摂食して生育するのか疑問に思っていた。冬季にカマキリ類の卵鞘を捕食したり、フユシャクやミツバチなどの小型昆虫を捕獲して餌とすることを見てきたが、自分の体長よりずっと大型の昆虫も襲撃しようとする現場を見たのは今日が初めて。あれだけの大所帯をどうやって養っているのか、これまで不思議であった。「大物狩り」の現場に立ち会って、ようやく納得がいった。
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November 06, 2007
虫の姿が少なくなる晩秋から厳冬期、なぜか私は俄然元気になる。大半の虫屋がフィールドから足が遠のく冬季、私にとってはようやく待ちに待った出番となる。本格的な冬シーズンに備えて、昨日は近場のフィールドを回ってみた。まず出会ったのは、リンゴケンモン Triaena intermedia (Warren, 1909) の幼虫。赤く色づきはじめたサクラの葉を盛んに摂食している最中だった。見事な毛並みである。モンシロドクガの幼虫に一見似ているが、リンゴケンモンの方が背上の刺毛が長くて縮れているので、区別できる。既に体長40mm近いので、終令であろう。ケンモンの仲間は蛹化の際には木片を噛んで繭を造営するので、シャーレにはサクラの葉と共に早々と樹皮が入れてある。
次に出会ったのはオオキノメイガ Botyodes principalis Leech, 1889 の幼虫だった。幼虫はヤナギの葉を袋状に巻いた中に潜んでいた。ちょっと見にはヤガ風に見える。成虫はノメイガとしては大きいので、幼虫の方も体長35mmと大きめである。蛹化も食餌植物の葉を巻いたケースの中で粗繭を作って行なわれる。食餌植物がヤナギ科植物ということもあってか河川敷に多産。昨年は成虫、幼虫共に矢作川の河畔林調査での常連さんでもあった。
後はヒサカキの葉の新しい食痕を頼りにホタルガ越冬幼虫(1令)を見つけた。今の時期、ホタルガの幼虫は葉上にいることが多い。ヒサカキやサカキの葉に見られる白い点々とした古い食痕に混じって、黄緑色の新しい食痕があれば、すぐ近くにホタルガ Pidorus atratus Butler, 1877 の若令幼虫がいることが多い。但し、若令幼虫はまるで褐色のゴミみたいで、大きさも数ミリなので、見過ごしてしまいがちである。冬季は食樹の下の方で風を避け、葉を重ね合わせて潜んでいることが多くて一層見つけにくい。越冬中は汚い古葉を巧みに重ねた間に潜んでいることも多い。晴天なら、太陽にかざすと見えやすい。写真は1令幼虫で4mmに満たない。
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November 03, 2007
10月27日午後、折りしも台風の影響で大雨であったが、再度昼神温泉を訪れた。雨天なら蛾も飛来するのではないかと期待したが、土砂降りで誘蛾灯にも蛾の姿は無かった。おまけに、雨は夜半には止み、夜空には星が輝き、月は澄みきった光を投げ、空気は乾燥して気温は低くなってしまった。蛾採集には最悪のパターン。あきらめて、夜は喜久水の生貯蔵酒を飲みながらの宴会三昧。深夜、露天風呂にも入ってみたが、蛾の姿は何処にも見られなかった。
翌朝、宿の自販機へウーロン茶を買いに行ったところ、網戸に蛾が止まっている。腹側からしか見えないので、種名はわからないが、ヤガであることに間違い無いようだ。戸を開けようとしたが、鍵が閉まっていて開けられない。すぐに部屋へ戻り、採集用具を持つと、表へ出てぐるっと大回りをして、やっと蛾の止まっている戸にたどり着いた。網戸に止まっていたのは、新鮮なケンモンミドリキリガだった。特に珍しい種ではない。しかし、美しい蛾なので、思わぬ儲け物であった。
宿を出た後、十字屋という昼神温泉界隈にしては美味しいコーヒーが飲める喫茶店で、ぼんやりと時間を過ごした。すぐ帰っても良かったのだが、あまりにも良い天気だったので、国道153号を少し南へドライブした。紅葉はまだ緑色にほんの少し黄色や赤色が混じる程度の色づき始め。しかし、それもなかなか風情があり、しっくりした景色だった。途中、冠雪した南アルプスの峰が見えるところがあったので、そこで止まって遠景を楽しんだ。快晴ということもあって、車やバイクの数が多く、道路は混雑していた。
午前11時過ぎに、蕎麦でも食べようということで、昼神温泉で有名な蕎麦処へ寄ろうとしたら、2店とも駐車スペースが無いほどの賑わいだった。やむなく、もう一軒の人気店に寄ると、そこはまだ満車ではなかった。しかし、ほどなくお客が次々と来店して、待ち組が並び始めるほどの盛況となった。蕎麦を待つうちに、小座敷の壁に大き目のシャクガが止まっていることに気付いた。早速、ケースに収める。オオネグロウスベニナミシャク Photoscotosia lucicolens (Butler, 1878)だ。これも珍しい種ではないが、阿智村産標本は持っていないので有難く頂戴する。この後、近くの月川温泉に寄ってから早めに家路へ。
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November 02, 2007
この秋、近場ということもあって、二度にわたって昼神温泉へ出かけた。単純硫黄温泉で、源泉からはツーンと硫黄の臭いがし、肌がツルツルになる湯であった。温泉にゆっくり浸かって疲れを癒すことが目的の旅だったので、昼神温泉界隈だけを少し周って、後は阿智川河畔を散策した。阿智川沿いの道にはサクラとハナモモが植栽されていて、夕食前に家族と一緒にのんびりと散策した。浴衣姿で連れ立って散歩する観光客の姿もあちこちで見かけ、いかにも温泉場らしい和やかな雰囲気であった。
サクラの樹を見上げると、クスサンの姿が目に入った。恐らくメスであろう。産卵中らしく太目の腹端を樹皮にくっつけながらゆっくりと上へ登っていく。夕暮れで撮影しにくかったが、何とかカメラに収めた。次いで別のサクラに目を移すと、樹幹に黒っぽい蛾が止まっていることに気付いた。後翅は見えないが、前翅に青白い輪を描いたような模様がある。あいにくネットを宿に置いてきてしまい、採集用具が無かった。かなり敏感で、2度シャッターを押すと、もう危険を察知してパッと飛び去ってしまった。どうやら、ワモンキシタバ Catocala fulminea xarippe Butler, 1877だったようだ。鱗片も剥げてしまって、ワモンとはとても思えないほどみすぼらしいボロ個体だ。
(写真:ワモンキシタバ 2007年9月25日 長野県下伊那郡阿智村智里で撮影)

昼神温泉は、ハナモモの里といわれるほどハナモモが多く植栽されているが、そのハナモモの葉上には、白いシャクガが静止していた。クロミスジシロエダシャク Myrteta angelica Butler, 1881である。前翅に欠損があるのが惜しいが、観光に来て被写体の選り好みする贅沢は許されないと思って撮影した。既に夕闇が迫りかけていたが、何かいないかと思って探していると、道端に咲くコスモスの周りに何か飛んでいた。そっと近寄ると、キンウワバが盛んにコスモスで吸蜜していた。採集していないので、きちんとした同定は出来ないが、イチジクキンウワバChrysodeixis eriosoma (Doubleday, 1843) のような感じがする。
(写真:クロミスジシロエダシャクとインチジクキンウワバ? 2007年9月25日 阿智村智里で撮影)
夜になって宿の露天風呂に行くと、誘蛾灯に大型の蛾が飛来したが、高いところだったので、採集はできなかった。また、露天風呂の照明にも中型の蛾が止まっていたが、採集用具が無くて逃がしてしまった。翌朝早く、今度は採集用具を忍ばせて露天風呂に行ったところ、蛾は既に飛び去った後なのか、はたまた鳥に捕食された後だったのか、もはや影形も無かった。とはいえ、山際の露天風呂は、虫好きの私には蛾の気配が感じられる夢のある処で、すっかり気に入ってしまった。
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July 10, 2007
飼育中のタケウチエダシャク幼虫の様子がどうもおかしい。新鮮なヤマモモの葉を与えても、少ししか食べない。そういえば、糞も心なしか乾燥気味。なにしろ、湿気やカビに極めて弱い幼虫である。中山・竹束(1993)では、袋掛け飼育で終令幼虫に至っている。清水・竹束(げんせい 74:43-45, 1999)では、容器内飼育の幼虫が、約4ヶ月で体長60mmの段階で死亡。袋掛け飼育品だけが羽化に成功している。4ヶ月も育てて死なれたのでは目も当てられない。
というわけで、容器内飼育の死亡率は高い。にもかかわらず、容器内飼育を継続したのは、袋掛けでは正確な脱皮回数を観察することがむつかしいためだ。毎日、飼育容器を開け、うちわで扇いで風を通してやったり、容器の底に敷いたキッチンペーパーを取り替えたり・・・自分としては小まめに世話をしたつもりだったが、その甲斐も無く幼虫はグッタリして元気が無い。食草に寄らずに、キッチンパーパーにしがみついて静止している。卵を送って下さったSさんの顔が浮かぶ。このまま死なせては、Sさんが勤務する南アルプスの見える博物館へも気軽に遊びに行けなくなるかもしれない。生来楽天的な私もさすがに心配になってきている。
写真:タケウチエダシャク幼虫
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June 28, 2007
このところ真夏のような暑さ。この炎暑で、シロシタホタルガの卵が一斉に孵化した。3頭の母蛾から採卵したものだが、なんと全部孵化してしまい、幼虫の数はざっと見ても1000頭余。またたく間に、食草の葉には無数の食痕ができ、葉は透け透けになってしまった。手に余る数の幼虫に、嬉しいを通り越して、困惑してしまった。食草の調達も大変であるし、これから一年間の長丁場の飼育を考えると、気が重くなる。
今月中旬の夕方、いつもの雑木林を散策した。小雨混じりの天候であったが、蛾採集にはかえって好都合。そろそろ、シロシタホタルガの♀成虫が出現する頃である。食樹のクロミノニシゴリを見上げると、数頭の成虫の姿が目に入った。どうやら、羽化して間もないようである。木の周りをゆっくりと飛翔する♂の姿も見える。絶好のタイミングに来た、と確信する。きっと、♀成虫が食樹の周りにいるに違いないと思い、下草を探すと、すぐに新鮮な1♀が見つかった。近くで、さらに新鮮な2♀を加え、計3頭を持ち帰った。♀達は翅音も騒がしく、淡黄色の卵を連日産卵した。鮮度が良いので未交尾である恐れもあるが、そのうち1頭ぐらいは交尾済みだろうと読んだ。全卵孵化したところを見ると、3頭とも既に交尾済みであった。野外で採集する♀は、交尾済みであることが多い。しかし、シロシタホタルガは飼育下では容易に交尾しない。これまで何度も大きめの飼育箱に、羽化したばかりのシロシタホタルガの♂♀を放ってみたが、交尾行動を観察できたことは一度も無い。♀は産卵するが、卵は孵化しない。総じてホタルガ亜科の蛾類は飼育下で簡単に交尾するのに、シロシタホタルガはその例外で、飼育屋泣かせの気難しさんである。
ところで、シロシタホタルガの越冬態についてよく質問を受けるが、シロシタホタルガは幼虫越冬である。実は私も数年前までは、日本産蛾類生態図鑑(1987、講談社)の記述を鵜呑みにして、卵越冬だと思い込んでいた。しかし、春先に見る幼虫が大き過ぎ、かつ令数にばらつきがあることに疑問を持ち、昨年一年間、飼育と野外の両方から生態観察をしてみた。すると、若令幼虫で越年することがわかった。既に幼虫越冬であることを報じた文献があるのではないかと思って探してみたら、一つだけ見つかった。ただ、発行部数の少ない地方誌に掲載されたもので、ほとんど知られていない。図鑑の影響力は大きく、誤謬が流布してしまうので、ここで訂正しておきたい。なお、詳しい生活史は紙媒体にも投稿準備中である。
写真:シロシタホタルガ Neochalcosia remota (Walker, 1854) ♀
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June 24, 2007
タケウチエダシャクは4月に出現するシャクガだが、全国的にも産地が限定されている珍しい種だ。幼生期は長らく未知であったが、1993年にようやく中山紘一、竹束正両氏によって解明された(げんせい 63/64:31-35)。飼育下の幼虫の食草はヤマモモであった。終令幼虫は体長75mmにも達し、一見トビモンオオエダシャクに似るが、頭頂部の1対の角状突起の切れ込みがタケウチエダシャクよりも長い。幼虫屋なら、一度は我が手で飼育したくなるような姿である。
この4月のことだが、飯田市のSさんからメールを頂いた。「タケウチエダシャクの卵があるけど、飼育してみませんか?」と。願っても無いチャンスと喜び、私は浮かれ気分で即承諾メールを返信した。しかし、その後すぐに私はひとつ重要なことを失念していたことに気づき、自分の軽率さを後悔したのである。蛾類の幼虫期間は、幼虫越冬をするものを除けば通常1-2ヶ月だ。ところが、タケウチエダシャクの幼虫期間はなんと5ヶ月余もあるのだ。しかも、タケウチエダシャクの幼虫は湿度管理や給餌がむつかしい。私は泣きたい思いであった。
ほどなくタケウチエダシャクの黄緑色の卵が送られて来た。数百卵はあったかと思う。私は孵化した幼虫に様々な植物を与えて大胆な食草実験を行なった。幼虫の喰いつきは異常なほど悪く、大半の幼虫が1令の段階で斃死してしまった。いくらなんでもおかしい、と思っていたら、問題は飼育容器の方にあった。一年間マダラガ幼虫を飼育して、青酸配糖体が充満した容器を間違えて使用してしまったのだ。孵化幼虫がバタバタ死ぬはずである。
生き残ったのは数頭だけ。早速、Sさんには正直に報告して、自分の不注意をお詫びした。賢明なSさんは、他にも飼育の達人達に卵を託しておられた。きっと、その方々が無事飼育羽化にこぎつけてくれることだろう。これでタケウチエダシャク幼虫の飼育から解放されると思うと、内心安堵の気持ちが強かった。ところが、親切なSさんは、御自分がクヌギで飼育していた幼虫をクール宅急便で恵送して下さったのである。
結局、数を減らしたタケウチエダシャクの幼虫は既知の食草であるヤマモモで飼育するという無様な羽目に。ヤマモモの分布や、幼虫の食いつき方が良くないことから見ても、少なくとも長野県や愛知県の個体群の自然状態の食草がヤマモモである可能性は低いと思うが、2ヶ月近く幼虫飼育して、ヤマモモが飼育に適した食草であることを感じた。葉の持ちが良く、頻繁に食草を取り替える必要が無いからである。ただし、幼虫は湿度に弱いので、飼育容器の蓋を朝な夕なと開けて、容器の底に敷いたキッチンペーパーを小まめに代える必要がある。
この先、どのくらい幼虫が生きるのかわからないので、この辺で4令幼虫の写真を公開し、Sさんの御厚意に深謝したい。
写真:Biston takeuchii Matsumura, 1931 タケウチエダシャク4令幼虫(体長約45mm)
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June 15, 2007
まだ蝶を知り染めし頃、ウスバシロチョウは憧れの蝶であった。その姿を図鑑で見た時、白と黒のデザインの斬新さに息を呑む思いであった。是非とも、この蝶を眼前に見てみたいという思いに駆られた。その上、食草のムラサキケマンは当時の私にとって未知の植物であった。このことが、私の想像力を一層膨らませた。岐阜県の平地では5月上旬に多産するとの情報を得て、伊自良村(現 山県市)へ出かけて見た。すると、村中何処にでもウスバシロチョウは溢れかえっていた。網を振っても一向に逃げる様子も無く、ただ悠然と浮遊するがごとく飛翔していたのである。余りの多さにあきれ返ると共に、この蝶に抱いていた幻想も忽ちのうちに消え失せてしまった。
あれから早20年余。各地でウスバシロチョウに慣れ親しんだせいか、胸が鼓動するような興奮を覚えることはもはや無い。しかし、今はこの蝶の味わい深さに改めて感じ入る。透き通るような白い翅、鮮明な黒い翅脈、その対照はまさに自然の妙。たおやかな飛翔の姿も、またよろしい。4月下旬に畑の葱坊主に寄るもの、5ー6月の山麓で遊ぶものやら、はては山頂に吹きあげられるものまで、生態もまさに多様で面白い。写真は、今年6月12日、伊吹山の山頂付近で、イブキガラシで吸蜜しているところを撮影したもの。当日はほぼ晴天で、ウグイスの声が朗々と響き渡った。山道沿いには、ヒメウツギ、ヤマボウシ、エゴノキの白い花が咲き、タニウツギの桃色花も色鮮やかであった。山頂付近には、グンナイフウロ(写真)、イブキハタザオ、イブキガラシ、ヒメレンゲ、ウマノアシガタ、クサタチバナの花々が咲いていた。
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April 24, 2007
春の蝶のなかで私が一番好きな蝶といえば、それはギフチョウでもなければ、ヒメギフチョウでもない。ツマキチョウである。ギフチョウもかっては春の野を歩いていると、ごく自然に見かける蝶だったのだろう。しかし、今や土地開発によって生息環境が狭められ、局所的な産地でしか出会えない蝶となってしまった。ところが、ツマキチョウは小粋で可憐な姿の蝶でありながら、街中でも気軽に出会える卑近な蝶だ。近所でツマキチョウが飛ぶ姿を見ると、自分が春の只中にあることを実感する。ツマキチョウは私にとって春の象徴とも云える蝶である。
さて、今年は4月12日にツマキチョウが飛んでいるところを見た。この日は天気が良すぎて、ツマキチョウは止まってくれずに、その姿を撮影することはできなかった。それ以降は、休みの日には天候が崩れてしまい、見る機会がなかった。今年はもう無理かな、とあきらめかけていた。今日は久方ぶりのお休み。風邪気味だったが、午前11時ごろ散歩に出た。アメリカハナミズキが咲き始め、白色や薄紅色の花が眩しい。コデマリの花も満開だ。花でも撮影しようと、デジカメを構えたとたん、白い蝶が風に流されるように飛んできたかと思うと、すぐ近くのケヤキの幹に止まったのだ。地味な♀だが、裏面の模様は渋く、かえって趣がある。今にも消え入らんばかりの、かそけき風情が心打つ。ちょうど曇りだったせいか、動きが悪くて、おかげで様々なアングルから写真を撮ることができた。これで、ようやく春気分。
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April 18, 2007
平地のサクラが散り果て、目も鮮やかな若葉が開き始める頃、長い越冬から目覚めた虫たちの活動も始まる。そろそろ幼虫の姿が見られるのではなかいと期待に胸を膨らませながら、いつものフィールドへ寄ってみた。すると、チャバネフユエダシャクやウスバフユシャク、ニトベエダシャク、チャエダシャクなどの常連幼虫さんが早くも体長15~20mmにまで成長していた。昨年よりも多少成長が早いような気がする。今日は天気が曇りだったので、チョウはほとんど飛んでいなかったが、代わりにゴマダラチョウの幼虫に出会った。寄主はやや薄暗い場所に生える樹高2メートルほどのエノキ。この時期のゴマダラチョウ幼虫は桃色や黒色の模様が出ていて、展葉したばかりのエノキの艶やかな葉にそっくりで実に美しい。
ゴマダラチョウの幼虫を見つけて上機嫌の私は、芽吹いたばかりのクロミノニシゴリでシロシタホタルガの若令幼虫(推定令数 2令)を見つけた。日当りの良い場所では、幼虫はさらに成長しており、3令幼虫の姿も見られた。まだ個体数はそれほど多くないが、これから追って数を増すものと思われる。シロシタホタルガの若令幼虫はクロミノニシゴリやサワフタギの花蕾に似た模様をしているために、少し離れるとほとんど目立たない。幼虫はほんの僅か開き始めた芽の間に潜んでいるが、吐糸で芽を封じるような手の込んだ隠れ方はせず、「見つけてちょうだい」と言わんばかりのお座なりな隠れ方をしている。体内に青酸配糖体を蓄蔵して、天敵を威嚇する防御手段を持っているための「余裕」なのだろうか?しかし、こうした防御手段も寄生性天敵には余り効果が無いようだ。野外で採集した本種幼虫から寄生蜂やヤドリバエが羽化することは珍しくないからだ。
満足して帰ろうとすると、途中でサクラの葉裏に静止するヒメヤママユの若令幼虫(推定令数 2令)を見つけた。ヤママユガ科の幼虫は孵化したばかりの初令幼虫は真っ黒なことが多い。ヒメヤママユの場合は2令になると、第2-3胸背に鮮やかな赤色斑が出る。令数が高くなるにつれ、幼虫の色彩や形状が変化するので、飼育の楽しい幼虫のひとつである。ところで、今年の冬には卵が産付されたウスタビガの繭を見つけた。孵化幼虫の飼育を楽しみにしていたのだが、時期になっても孵化しない。おかしいと思っていたところ、コバチが羽化してしまったのだ。今度はウスタビガの幼虫も見つけたいと思っている。
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November 25, 2006
今年はいつまでも青々とした葉が繁っているように見えたが、いつの間にか木々が赤や黄色に染まり、落葉が舞う季節になっていた。今朝、色とりどりの落葉を踏みながら職場への道を急いでいた。S運輸会社の前まで来た時、トラックヤードに設置されたフェンスが目に留まった。敷地内にあった社宅の取り壊し工事用らしい。かなり年季ものの社宅だったので、さすがに建替えか、と思って通りすぎようとすると、フェンスに止まる黄色と黒色のだんだら模様の大きなチョウの姿が私の目に飛び込んできたのだ。
フェンスのギフチョウはグリーンの小さなバケツを手に持ってレンゲの花で蜜集めしている。大胆にデフォルメされているが、愛嬌のある顔をしている。鮮度の方は相当古びた擦れ個体だが、これもなかなか味がある。工事用フェンスの絵がギフチョウとは、創業者がトラック1台から事業を始め、以来ずっと岐阜県に本拠を置くS運輸らしい。思いがけず「ギフチョウ」に出会えて、すっかり足取りが軽くなってしまった。
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November 24, 2006
November 14, 2006

秋が深まり、木の葉が色づいてくると、急に虫の姿が少なくなる。たいていの虫屋はそろそろフィールド活動をお休みにする時期だ。しかし、私はこの時期から真冬にかけて、一年で最も精力的に虫探しをする。思わぬ拾いものをすることもあり、楽しみなシーズンでもある。昨日も近くの雑木林を散策中、クヌギとコナラの葉上で、ヤマトカギバの幼虫を見つけた。カギバ科の幼虫はいずれも体を曲げて止まっていることが多く、色や形は鳥の糞や枯葉にそっくりである。ヤマトカギバ Nordstromia japonica (Moore, 1877) は平地や山地で普通に見られる蛾で、幼虫もブナ科植物の葉上でよく見る。しかし、いつ見ても、この幼虫の姿は面白い。ごきげんで帰る途中、樹幹に止まるセスジナミシャク Evecliptopera illitata illitata (Wileman, 1911)を見つける。翅の模様がお洒落である。付近には幼虫の食餌であるアケビやミツバアケビ、ゴヨウアケビが多いので、来年は幼虫を見つけたい。
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November 13, 2006
November 08, 2006

11月はミノウスバの季節。ミノウスバは、虫の姿が少なくなった晩秋に登場する昼蛾だ。翅は薄くて脆弱な感じだが、体躯はふさふさとした黄色の毛で覆われ、いかにも暖かそうだ。例年自宅の近くで見られる常連さんで、晩秋マサキの周りを飛ぶ姿は愛らしい。しかし、実のところ今年は果たしてミノウスバを見られるかどうか心配だった。というのも、このブログでも書いたように、幼虫が群生していた近くのマサキに大量の殺虫剤がかけられてしまったからだ。悶えながら地面に落下してゆく夥しい数の幼虫の姿は今も目に焼きついている。殺虫剤の影響で、今秋の成虫の発生は極端に少ないのではないかと予想していた。
ところが、今日くだんのマサキを調べて見ると、ミノウスバは既に発生していたのだ。オスばかりか、産卵中のメスの姿もあった。どうやら、たくましく生きながらえた幼虫達が蛹化し、無事羽化にこぎつけたようだ。個体数の増減は詳しく調べないとわからないが、ざっと見たところでは昨年並みという印象であった。殺虫剤によって幼虫個体数が減少して、限られた幼虫間での資源配分が順当に行われたせいなのか、それとも、幼虫と共にマサキに寄生するサシガメや寄生性天敵の個体数も減少したせいなのか?
写真:Pryeria sinica Moore, 1877 ミノウスバ ♂(アンテナ 両櫛毛状) ♀(アンテナ 棒状)
ミノウスバ御難
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October 24, 2006
今日は仕事がお休み。昨夜はついつい夜更かし、今朝は早く目が覚めてしまい、朝食もそこそこに飛び出す。当ても無く歩いていると、ヤマトシジミが道端に咲く淡紫色のクコの花で吸蜜中だった。クコは晩秋になると真っ赤な実を一杯つけるが、花の方は小さくて控え目である。夏の頃に比べて花が少なくなってきているせいか、花ともいえないような花でも重要な吸蜜源なのであろう。チョウは吸蜜に夢中で、デジカメを近づけても逃げようともしなかった。道端の所々には食草のカタバミがあり、ヤマトシジミの飛び交う姿が愛らしかった。よく見かけるチョウだが、朝陽に照らされた淡いブルーの翅は繊細で美しかった。
ヤマトシジミの姿を追いながら歩んでいると、道端の草の上に淡茶色の枯葉のようなものが落ちていた。しかし、枯葉にしては様子がおかしいと思いつつ目を凝らすと、それは交尾中のチャバネセセリのカップルであった。下草の上にいると、淡茶色の姿は本当に目立たない。恐らく急いでいたら、チャバネセセリと気づかずに通り過ぎていたことだろう。本種の地味な色彩は、隠蔽戦略としては効果的なようだ。
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October 23, 2006
今朝出勤途中にツツジの植え込みの前を通り過ぎようとしたら、緑色の葉の上に白っぽい蛾
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